第205話 チノ大草原へ行ってみよう
「ひーまーだー」
今日もベッドでゴロゴロ。地球にいたころを思い出す。休日なんて食事とトイレ以外立ち上がることなんてなかったぜ。
ミィトは休日を貰い、一週間ほど休んだ上で仕事に戻るようだ。俺だったらなんだかんだ理由をつけて一ヶ月は休むんだけどな……。そこらへんが違う。
「ひぃまぁだぁ」
その日もベッドでゴロゴロ。このままじゃ体が鈍っちゃうなあ。
「HI・MA・DA」
次の日もベッドでゴロゴロ。つまらない日常だ。
「ひ! ま! だ!」
「そんなに暇ならギルドで依頼でも受ければどうですか?」
さらに翌日、見かねたシーファが呆れ顔で俺に言ってくる。
「成る程! その手があったか! よし、シーファ、シロ、行くぞ!」
「私は遠慮しておきます」
「え……」
「今日は紅茶を楽しみたいので、遠慮しておきます」
「飲み終わるまで待つよ?」
「そのあとは市場で買い物をするつもりです。残念ながら予定が詰まっているのですよ」
そこまでか? 明日でいいと思うんだけど。
「とにかく、私はお断りです」
「えー」
じゃぁあとは……。
錆びついた機械のように、俺の首がゆっくりとシロのほうを向いた。今にもギギギと聞こえてきそうだ。
ーーしょうがない。サトルがぼっちで悲しいなら、シロがついていってあげる。
予想以外の返答に一瞬固まった。
「嘘……だろ?」
シロ……お前……!
「ついに俺が好きになったのk」
ーー違う。
ぐふっ。
このことはシーファも意外だったらしい。目を少しだけ見開いた。
「珍しいですね」
ーー珍しいも何も、シロはお散歩したいの!
あ、そっか。こいつ元は犬だからな。
ーー今も犬!
雷獣。獣だぞ? おい。
ーーむむむ……! 悟嫌い!
嫌われた。
なんでだろうな? どうしてこんなに飼い主に懐かないんだろう。原因が全く分からない。
ーー余計嫌いになった!
なんでー?
ということがあり、一階のギルドボードの前へと集まった俺とシロ。ミィトを助け出した功績からSランク冒険者となった。Aをすっ飛ばしているが、当たり前だとミィトから言われることになった。
「エ、Sランク!? 一体何があったんですか!? 魔王でも倒しました!?」
受付嬢からはかなり驚かれていた。
「倒したんじゃなくて、退けた。勝手に話盛るなよー」
「た、確かに……! そんな話、聞きました! 流石はサトルさんです!」
と、賞賛された。魔王を退けた話は広まっているらしい。
「で、今日はSランク級のどでかい依頼を探しているんだが……ボードにはそうそうなくてな」
「ふむふむ……。どでかい依頼ですね。分かりました! 少々時間を取らせますがよろしいですか?」
「ああ」
「恐れ入ります」
受付嬢は奥へ引っ込んでいった。
椅子に座り待つこと数分。一枚の依頼紙を持った受付嬢が姿を現す。
「先に言っておきますが、これはかな〜りキツイですよ? 報酬は高いのですが、誰も達成したことのない依頼です。昔お蔵入りになったとですが……やりますか? 後戻りはできませんよ?」
「……それって魔物の依頼か?」
「いいえ。……よく分かりましたね」
「S級冒険者がどれだけ頑張っても倒せない魔物がいるとすると、それはもう魔王級だろ」
受付嬢は口に手を当て、おしとやかに笑う。
「で、その依頼ってのは結局なんなんだ?」
「……大陸と大陸の移動手段を考えることです」
そうきたか……。
地球には船とか飛行機とか便利な移動手段があったけど、ここではそう簡単には行かないからなあ。
シーファの羽変化で船を作ったとしても、まず船員がいないし、操縦士だっていない。俺でも船は乗ったことはあるものの操縦したことがないから教えようもない。飛行機も同じだ。
つーかシーファの負担多くね? 却下だ!
「辞退させていただきーー」
「後戻りはできませんよ?」
にっこりスマイルで手首を掴まれた。
「いやだってこんなの無理じゃん!? どうせ政治的な奴らが話し合って決められなかったから冒険者頼みにしたんだろ? 無理じゃん! 俺より頭切れるやつらでも無理なら俺も無理じゃん!」
無理無理無理無理無理無理無理無理無理ぃ!
そんな言葉が日本にあった気がする。まさにこの状況だ。
あれ? なんか違うような……まあ、いいや。
「じゃぁ、発注しますね! 違約金の準備でもしててくださ〜い」
この女……はめやがったな!
ーーぷっ。
言っておくが、違約金はシロのご飯代からも出るからな?
ーーそれは困る! 悟意地悪!
嘘だよ。腐る程金持ってるし、今更違約金にビビることはない。
ーー悟超意地悪! 大嫌い!
また嫌われた。なんでー?
「発注完了です。期限は一ヶ月。案を出してくれるだけで依頼達成です。割と簡単ですね」
「どこがだよ」
結局受けてしまった。
「他の依頼もあるか? 出来れば魔物関係で」
「自信あるんですか? 普通これを受けた人は部屋に篭りますけど」
それ昨日までの俺な。
受付嬢は近くの引き出しから依頼紙を取り出す。
「チノ大草原の結界を壊そうとしている魔獣がいるようです」
ほう。魔獣か。聞くのは初めてだけど、知ってるぞ。
魔物が長い年月をかけ進化を遂げたのが、魔獣。魔獣といっても獣ではなく、人型だったりする。イノシシが一番多い例で、ただの突進だけで数万人をひき殺したという伝説だってあるくらいだ。その魔獣は大陸一つを滅ぼし、勇者によって絶たれたらしい。
この世界には勇者もいるようだけど、この大陸にはいない。ザズ大陸だっけ? そこに勇者が召喚されたという噂を聞いた。あくまでも噂なので、そこまで信じちゃいないが。
「ん? それかなりやばくない?」
「やばいです。ものすごくやばいです」
冒険者ギルド内にはそんな話流れていないし、俺だって聞いたことがなかった。
「機密情報?」
「はい」
それ俺に言ってよかったの? 一般市民だよ?
ーー悟って一般市民じゃなくない? 指名依頼かもよ。
シロが言うと、受付嬢が頷いた。
シロが喋ることは大体の人が知っている。受付嬢もそうだ。
「ミィト様からの指名依頼です」
「先にそれを出せよ……」
完全に遊ばれた。くそう。
「魔獣ってどんなタイプだ? 近接系とか魔法系とか、小型とか大型とか」
「あまり確かな情報ではありませんが……小型だったと聞いています。容姿は黒色で、尾が生えていて、翼があったと」
小型のドラゴンかな?
「分かった。ちょっと行ってくるよ」
ーーなんかどっちも面倒くさそう。
そんなこと言うなよ。
「依頼紙を見せればチノ大草原に入れると思います。……くれぐれもお気をつけて」
「おう」
じゃ、行くか。
夜にもう1話投稿するかもしれないかもしれないかも……です。




