第204話 神の戦い・第二ラウンド
「第二ラウンドの開始といきましょうか」
空を自由自在に駆け、死神は私を翻弄しようと動く。
「無駄です」
それは私の戦闘スタイル。動き方のシュミレーションは1秒とかからず終えることができた。
「全て見切っていますよ。貴方の攻撃はーー」
頭上から接近してきた死神を一蹴するため、接近戦に使える魔法を同時発動していく。
「耐物理結界。神刃。放電」
散らばっていく放電の電力を集め、神刃に纏わせる。結界のように表面に広く電気を纏った神刃。言葉通り表面積が広くなっているため、当たりやすさが上がる。
死神は鎌についたどす黒い邪気を振り払う。邪気は神刃を包み込んだが意味はなかった。
宙を蹴り、後退しながら魔法を撃つ死神。それらは神刃と相殺し、黒煙を作り上げた。
即座に風魔法で煙を晴らす。死神は遠くにいた。今の一瞬で距離をとったらしい。
死神はまた宙を走り、私を翻弄しようと動く。
「無駄と言っています」
高速で近づいてきた死神に神球を叩き込む。
「ガハッ……」
やけくそに鎌を振ったが、私にはかすりもしない。虚しく邪気が空気に溶けて消えていった。
吹っ飛ばされ、体勢を整えて突っ込んでくる。
「無策です。無謀です。無能です」
死神が鎌を振り向く直前に転移をし、その背後についた。雷を操り、剣を作る。
「くっ……!」
首を後ろに回すが、体がついていかない。そんな死神に優しい笑みを向け、剣で突いた。
「ぐああぁぁぁっ!!」
心臓を貫通し、死神は悶え苦しむ。大雑把に凶器を振るが、それもまた当たらない。
例え生きていたとしても麻痺で動けないはず。まあ、こんなことで死ぬ者ではないから何故ここに来たのかを聞き出すとしよう。
「バインド」
蔓が今度こそ死神に絡みつく。
雷の剣は刺したままだ。この方が痛みを味わせることができて、情報を聞き出すのが楽になるだろう。死神には効かないと思うが、一応だ。
「吐いてもらいましょうか」
血反吐を吐き、大きくむせかえる死神。
心臓を壊したとはいえ、もう再生が終わっている。数十分で完全回復するほどの自然治癒能力を持っているのだ。
「なにを……」
「分かっていますよね? わざわざ結界を破ってここまで来た理由ですよ。貴方なら容易く割れる結界だとは思っていましたが、タイミングが早すぎません? もう少し力を取り戻してから私に勝負を挑んだ方が得策だったのでは?」
「ふっ……、ただの戦闘衝動よ。誰だって無性にあれこれしたいと思うことぐらいあるだろう?」
死神は吐き捨てる。私の感知が嘘を見破った。
「くくく……。嘘は通じないか」
私の表情を読んで、死神が笑った。
「其方、信じた者に裏切られる気分はどうだ?」
唐突だった。
「手を貸した者から一方的に拒否される気持ちはどうだ?」
「…………」
「其方にとっては最高の屈辱だろうな。あいつーー」
「黙ってください」
反応を見せなかった私はそこで初めて殺気がこもった言葉を飛ばした。
「アイツと一緒にしないでください。虫唾が走ります」
私は片手を上げた。エネルギーが収束し、光の渦を巻く。
「興が削がれました。死んでもらいますね」
特大の青白い雷が落ち、死神はちりとなって消えた。
……逃げたか。きっと転移だ。
心が落ち着いていく。
「…………」
悟は……許せない。
私をあんなやつと勘違いするなんて。悪者扱いするなんて。
邪神め。
私は、私はーー。
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「死神がアイツの元へ?」
正直言って、あの名前は聞きたくない。この報告も半分上の空で聞いていたが、情報を耳にした途端現実に引き戻された。
「私の世界から抜け出した? ううむ。おかしいですね……結界が張ってあったはずなのに」
側近は一礼し、離れていく。光渦巻くこの空間には私一人となった。
「私が見ていない間に一体何が……」
でもあの結界は壊される前提で張ったものだ。それにしても、早すぎる。
なんのつもりなのだろうか?
よりにもよって、何故アイツの方へ?
……考えても仕方がない。
ムカムカしてきたので思考を止めた。
気分転換にと魔方陣を構築し、下界の様子を覗く。少しだけ時間を遡り、過去を見ることにした。
「……? これは……」
アイツと死神が戦ったせいか、下界ではその影響が広がりつつあった。
人間も魔王も気がついていないが、微かな魔力のバグがある。これは誰かが魔力を使うたびに肥大化し、場合が悪ければ天変地異の現象を引き起こす。
それに……。
「誰かが戦っていますね」
白い龍と、これはサソリか?
怪物三体が好き放題暴れ回り、奥では魔王が不気味な笑顔を浮かべている。
見ればわかる。攻められているのだ。人間国が、魔王に。
白龍はブレスを吐いた。もちろんこれも魔法だ。魔力のぶれが大きくなる。
「今日は災害級の雷が降りそうですね」
その時。
《天変地異・ファースト》
…………。
白龍が慌て始める。魔王の顔が変わった。化け物たちが泡を吹いて倒れていく。
その中でもいち早く冷静さを取り戻したのは白龍だった。
「この龍……」
しかし、私が見ていたのは違う面だった。
《天変地異・セカンド》
物事は進み、悟と魔王が対峙しているなか。
雷が降り、ロット国周辺を消しとばしていく。
そして、魔王が去る。悟は澄ました顔でそこに立っていた。まるで何事もなかったかのように。
その後、彼は死神に指摘されて鑑定スキルをオフにした。
私は一通りを見終わり、感情が怒りに染まっていることに気がつく。あまりにも激怒した結果、自分でも気がつかなかったらしい。
悟は……許せない。
私をあんなやつと勘違いするなんて。悪者扱いするなんて。
邪神め。
私は、私はーー。
互いのことを邪神と呼び合う二人の心は一致した。
『『私はーーその間違いを正す。アイツみたいな邪神ではない。絶対に世界を変える神となる』』
『そして、アイツを殺す』
死神が雑魚キャラになっていってるのは気のせいでしょうか……?
うん! 気のせいですよね! きっと!




