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第202話 色々あった

二つ投稿します!

遅くなってすいません。まだお読みになってない方は前の話からどうぞ。です。

 ミィトに症状は出ていないと報告された数時間後。ライラは帰り、変わりに別の人が訪問してきたのだ。


 そう、俺の部屋にはミィトが来ていた。


「こんなに早く出ていいものなのか?」


 俺は苦笑いしながら言う。


「取り調べとか、付与に詳しい人にも聞いたけど、私の体に異常はないみたいだから大丈夫だって」

「それでいいのか? 再発でもしたら大変だろ」

「えへへ……僕もよく分からないんだ」


 ん?


 今、人格が変わらなかったか?


 夜も……明けてないな。


 これは憶測だが、感情付与で何かを止めていたリミッターが外れてしまったのかもしれない。


「あんた、あんなことやってタダで済むと思ってるの? マスターが死にかけたのよ? どう償うつもり?」


 容赦なく飛ぶプリンの言葉。


「そのことも含めて、サトルに言いたいことがある」


 唐突にミィトは膝を折り、床に頭をこすりつけた。いわゆる土下座というものだ。


 勿論こんなことをやられた俺は口をだらしなく開けたまま硬直してしまう。


「ちょ、何やってんだ!?」

「ごめん……ッ! 謝っても許されることじゃないって分かってるけど、こうしなきゃ私の気が済まないんだ……。それから、助けてくれてありがとう…………ッ」

「ミィト……」


 彼女は涙を流していた。


 いつも強気で、みんなを引っ張っていくリーダー的存在が泣いていることに驚き、余計固まってしまう。


「あんたねえ……」


 プリンがさらに突っかかろうとしていたので、手で制した。


「顔を上げてくれ」

「上げるわけにはいかないよ……。私は、やってはいけないことを犯してしまった。逆に、許さないでよ……っ。これしきで許されちゃったら、私、罪悪感で死んじゃうよ……!」


 こ、困ったな……。


「馬鹿馬鹿しいですね」


 思わぬところから声が聞こえ、俺たちは視線を向けた。


 パタンと呼んでいた本を閉じ、シーファが座ったまま体をこちらに向けた。


「本来の仲間というのは恨みっこなしで結ばれていることを言います。ミィトさん、貴方はいちいち魔法を外したところで仲間に謝りますか? それだけで仲間は怒りますか?」


 ミィトの震えが止まる。


「人には寄ると思いますが、ここにいる人たちは少なくとも、貴方を仲間と思っているはずです。ミィトさんがサトルを殺していたのなら、流石に私は貴方のことを憎んでいたでしょう。いえ、実際憎んでいます。サトルを危険に目に合わせて……」

「ならーー」

「ですが、今回の一件はミィトさんのせいではありませんよ」


 シーファの浮かべる優しい笑みに、ミィトは言葉を詰まらせた。


「ミィトさんを操っていた者がいます。先ほど、貴方がサトルを殺していたら私は憎むと言いましたが、それは操られていない前提の話。そして、今私が恨む相手は違います」

「…………」

「術者。貴方を操った人です」


 シーファの表情は一転しており、憎悪に包まれていた。その顔が俺の方を向く。


「サトルはどう思うのですか? 第三者の私が何かを言っても、結局はサトルが言わないと意味がありません」

「まあ……そうだよな」


 ずっと話を聞いていた俺はシーファに唆され、その口を開いた。


「まずは、そろそろ顔をあげようか」

「で、でも……」

「そのままだと話しにくいんだよなぁ……。逆に困るっていうか」

「そう……?」


 ミィトは漸く顔を上げてくれた。


「俺から話……と言っても、シーファが殆ど持ち台詞をかっさらっていったからな。あまり言うことはないぞ?」


 保険をかけておく。


「二人にさせてくれないか?」


 振り返らず、背中越しに伝えた。


「別にいいけど……いい!? 私は貴方のことを絶対に許さないから!」


 プリンはそう吐き捨て、部屋を出て行く。


「上手くやってくださいね」


 シーファは俺にしか聞こえない声で囁き。


 ーー最近出て行くこと多くない? 面倒臭いよー。


 ミィトに氷漬けにされるぞ。オラ。いないけ……いるやん!


 あ、よかった。聞こえてないみたいだった。


 全員が出たことを確認する。


「……俺はお前のこと、十分仲間と思ってるよ。これ以上ないぐらいに頼もしくて、強い」


 本心だった。


「それに、俺のこと助けてくれただろ?」


 ミィトは表情を変えない。


 二人になりたかった理由はこれだ。


「俺が呪われた力で龍に変化した時、ミィトは命をかけて俺を助けてくれた。ほら、これで貸借りゼロだな」


 シーファたちは俺が龍に変化し、仲間を襲ったことを知らない。ミィトに頼んで秘密にさせてもらったのだ。その方が彼女たちにとって不安感を与えない。


 だから二人になりたかった。


「貸借りゼロ……」


 ミィトは俺の一語一句を噛みしめるように聞いていた。


「俺からも言いたいことがある」


 ミィトが俺の目を真っ直ぐ見つめてきた。


「あの時、助けてくれてありがとう。そして、迷惑かけてごめんな」

「……っ」


 音も無くミィトは涙を流す。


「プリンはあんなことを言ってたが、単にぶつかりたいだけで全くミィトを怒ってないんだ。あいつだって分かってるさ。怒るべき相手が違うことを、な」

「……あ、ありがとう……ッ!」


 ミィトはゆっくりと立ち上がった。


「でも、俺はお前を許さない。感情という者は自分の意思で止められる。それがいくら付与されたものだとしてもな。だから、止められた」


 俺は薄く笑みを浮かべる。


「その代わり、俺を許さないでほしい」


 小首を傾げるミィト。


「龍に変化して、もし無関係な人間に危害を加えた時……俺を許さないでほしい」


 沈黙がありミィトは小さく、けれども確かに頷いてみせた。


 よし。もう言うことはないな。


「はい、終わり! 入っていいぞ!」


 魔法陣が光り、シーファ御一行が姿を現す。


 随分と早かったものだから皆さんなんとも言えない顔してる。


「このことは忘れよう」


 全員に言い聞かせる。


「お前も一般市民に頭を下げた事がばれたくないだろ?」

「う、うん。何かと言われるのも怖いし……」


 ミィトは思った。


 サトルってもう一般市民じゃないよね……?


 ……この件は闇に葬ることにした。

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