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第201話 二人組

二つ投稿します!

 ……。


 …………。


 …………ううっ。


 体が重い? 私は……いや、僕だっけ? 俺かもしれない。


 鉛のように体が重く、指先すら動かせない。かろうじて動かせるのはーー。


 瞼を開け、状況を確認する。


「ここは……?」


 ーー目と口。


「なぜ僕はここに?」


 暗闇だった。それでも光が奥の方で灯っているらしく、少しだけ周りの景色が見える。


 一本の棒が均等に並べられていて、それはまるで牢屋のようだった。


 ……牢屋?


 確かに、ここは牢屋だ。自分は何の罪を犯したのだろう。


 ズキリ、と頭が痛む。まるで思い出すことを拒否しているみたいだ。


「目を覚ましたようですね」


 気がつくと、牢屋の前にはフードを深く被った誰かが現れた。


 ポケットに手を入れ、顔は口元だけしか見えない。それでも声からして女性だということが分かった。


「お前は……?」

「王に仕える者、という設定でしたね」

「せ、設定?」


 フードからは長い髪の毛が覗いている。闇のせいで色までは分からない。


「あ、口が滑りました。忘れてください」


 ぽわんと優しい光が脳内を彷徨い、すぐに消えた。


「う、うん? 今、私は何を考えて……」

「能力の乱用はやめてください。今ぐらいの、誤魔化せばいいでしょうが」


 そこに男が現れる。どちらも気配を察知できなかった。


 俺よりも上の存在?


「一応ですよ、一応」


 それに、何の話をしているんだ?


「それにしても、自我があるみたいで良かったですね。他の人間は全部ダメでしたのに。規則でもあるのでしょうか?」


 女性が首を傾げる。やがて諦めたのか、深くため息をついた。


 私はその間に入る。


「あのう……僕はどうなったの?」

「ああ、囚われているんですよ」


 面倒臭そうに女性が答える。


「派手に暴れたそうじゃないですか。ミィトさん」


 ミィト……さん?


 僕をさん付けで呼ぶ人はあまりいない。いるとしても、シーファくらいだ。


 というよりも、僕は暴れたのか?


 信じられない。そんな記憶一切ないし、身に覚えも……。


 そこで気がついた。この倦怠感は、魔力切れが原因なのだと。


「……貴方はシーファさん?」

「……?」

「"死神の妹ですよ"」


 男性は耳打ちをした。当然私には聞こえない。


「成る程です。確かにキャラが被ってますね」


 女性は細い唇の端を上げた。


「とにかく、私はシーファではありません」

「次の質問だが、今俺はどんな状態なんだ?」


 豹変した人格に女性は一瞬だけたじろいだ。


「ええっと……拘束されてますね」

「拘束?」

「それは綺麗なほど床にべったりと。あ、接着剤じゃないですよ?」


 だから、体が動かなかったのか。魔力切れということもあるが。


 冗談めかした口調だったが、私には笑う気になれなかった。


「僕、周りに迷惑をかけたのかな……」

「いえ。不幸中の幸いか、暴れたところは果ての大地だったそうです。かなり広範囲が氷漬けにされていたらしいのですが、それ以外は被害なし。良かったですね〜」

「……うん。でも、みんな心配してるよね。ギルドマスター失格だよ、本当」

「サンカーみたいです。その性格は見てるだけで気が滅入るので、止めてください」


 どういいことだ……?


「ま、大丈夫ですよ。呪いを解く魔法をかけておいたので」

「呪縛解除!? それって、人間には使えないって言われるくらいの高レベルな魔法なんじゃーー」

「またまた口が滑りました」


 ぽわん。


「あれ? 私は……」

「その下はもうみました。先ほどの失言しか消してないので、他は憶えているはずですよ」


 女性は屈み込み、膝の上に肘を立てて頬杖をついた。


「貴方もかなり人格が混ざり合ってますね。治さなければ」


 彼女が鉄格子越しに手の平をかざすと、何かがスッと抜けていく感覚が走った。


 今のは……?


「これでよしっと」


 立ち上がり、大きな仕事が終わったかのように両手をパンパンと打ち付けた。


「エルド様」

「あー。あー。分かってますって」


 男性が女性の名前を呼んだように思えた。


「それでは、私はもう行きますね。できれば、()にも会いたかったんですけど」

「誰です? そんなこと、予定にはなかったでしょうが」

「予定は予定ですー。現実は何が起こるかわからないんですから」

「それとこれとは違う気が……」


 仲良く喋りながら消えていく二人。


「待ってっ!」


 どうしても気になることがあって。


 私は呼び止めた。


 振り返った拍子で女性ーーエルドのフードが外れる。


 やはり。


 やはりそうだ!


 彼女だ!


 私の人生を変えてくれた、あの方だ!


「貴方は、私にあったことがーー」

「ないです。止めてください。気持ち悪いです」


 初めて向けられた冷徹な視線に、体が硬直した。


 威圧。


 勝てない。無理だ。逃げろ。


 体の全細胞がはち切れんとばかりに叫び続ける。


「あ、貴方は……、私を……」

「黙れッ!」


 エルドは言ってから後悔したのか、額を押さえた。


「感情コントロールがなってませんね。熱くなってはいけないのに……。それでも、アイツとは同じにされたくありません。虫唾が走ります」


 彼女はそう吐き捨て、またフードを深く被った。


 背中が遠のいていく。


 確かに、確かにあの人だった。


 顔だって、声だって同じだった。


 なのにーー。






 何かが違う。






 少ししてから国の衛兵が来た。私が何も害すことがないと判断され、すぐに釈放されたのだ。


 サンカーたちと会いたかったが、極度に拒まれた。それだけひどい状態なのだろう。


 ……あの二人組のことを衛兵に聞いた結果、誰も、何も、知らなかった。

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