第200話 ギルドマスターたち
通算ではありませんが、200話達成しました!
ここまでこれたのも読者様のおかげ……本当にありがとうございます!
街に戻る頃にはすっかり体力も魔力も回復していた。全回復ほどではないが。
目覚めたらまた暴れるかもしれないが、それなら街に入れて、拘束したほうが安全だと判断した。ギルマスならなんとかやってくれるだろう。
ふう。一件落着だな。
一番頼れるのはサンカーだ。彼なら俺よりも的確な判断を下し、安全の処置の元に行動するだろう。
「と、いうことで戻ってきたんだけど……」
シーファはプリンの右腕を治療しながら、俺の話を熱心に聞いていた。
ここはギルドの部屋。プリンは人化をして身長を縮めている。
「サンカーさんどこ?」
手を止め、シーファは苦虫を噛み潰したかのような表情で俯いた。
「サンカーさんは少し具合が悪いみたいなんです……。今、そちらでも治療を施しているようなので」
「治療? 襲撃でもあったのか?」
「いいえ」
彼女は聞き耳を立てている人がいないことを確認すると、手招きをした。
促されるまま近づくと、シーファはこちらに身を寄せ、耳打ちをしてくる。
「ミィトさんと同じで、操られてるみたいなんです」
「え……え? サンカーさんが?」
よりによってあのサンカーが!?
真面目でそういう感情操作系はあまり効果がないと思ってたのに!
せ、性格とかそういう問題じゃないことは分かってるけどさ……。
っていうかシーファ、当たってるって!
二つの山が……あがが。
「私、声を聞いたんですけど……"自虐を付与されました"って」
うわあ……想像したくない。サンカーさんのイメージが……うがが。
「他のギルドマスターもそうらしいんです。何かしらの感情を付与されていて」
すごい重要だけど頭に入ってこないな!
理由? 察してくれ!
「これは国の機密情報です。一般の方がこれを知ったらパニックになるので、他言は無用でお願いします」
シーファは人差し指を自身の唇の上にそっと重ね、にっこりと微笑んだ。
か、可愛い……。
「サトルが会ったらがっかりするような光景なので、あえて見せませんが」
お気遣いありがとう。
「そんなにひどい状態なのか?」
「……はい」
嘘じゃないな。ま、シーファが嘘をつく理由なんてないけど。
どうしても疑ってしまう。自らのことを責め、挙げ句の果てには自身の身体を傷つける自虐行為。
いやだあ!
そんなの見たくない!
関係ないけどもうくっついてる必要なくないですか? おーい。シーファさーん?
「ちょ、ちょっと! 私の右腕を治療している間にイチャイチャしないでくれる!? 変なところでストップかけられると気持ち悪いんだけど!?」
プリンの右腕は漸く指が生えてきたところで、中途半端な時間で止められていた。
「あ、すいません」
「全く……。私の存在を無視するとは訳がわからないわ」
ーープリン、調子乗りすぎ。
「ご、こめんなさい……」
俺のことをマスターって呼んでるけど、実際の主人ってシロだしな。そりゃあ言うことは聞く。
「これからはシロ様と呼ぶから許して頂戴」
ーーよかろう。
うそーん。
なんか流れ的に結構大事なことが決まった気が……しなくもない。
「……預けたミィトってどうなるのですか?」
シーファが心配の感情を浮かべる。
それはそうだよな。
このまま元に戻らない場合、最悪の事態になれば死刑……。
ミィトが弱い人間なら良かったのだが、彼女は強い。十分国に危害を加えることができるのだ。そんなミィトが何倍も強くなり、国に向かって牙をむいたら。
囚われている今しかチャンスがない。逃せばもう捕まえられない。
そうなれば、国は必ずミィトを処分したがる。逃がさないうちに、できるだけ早く。と言っても最善を尽くした後、最終手段として殺るんだろうな。
そして、民にいらぬ心配をかけぬとその一件は永遠に闇に葬ることになるのだ。
ギルマスのミィトを殺したとすればチカ大国の存続にも繋がるしな。反乱もあるかも。だから、闇に葬る方が国側としてメリットが大きい。
だからこそ、簡単に答えが返せなかった。
時間をかければかけるほどシーファの不安は膨れ上がっていく。
ついにそれが破裂しそうになった時、部屋の向こうに気配を感じた。
シーファも気づいたようだ。
ちょうどプリンの治療も終わった。
「失礼する。入室の許可を」
「入っていいぞ」
魔法陣が光り、見慣れた人物が姿を現した。
「おお。ライラさんか。しかしまあいつもごつい鎧着てんな」
「ごついとは余計だ」
俺たちは挨拶代わりに交わした言葉で笑いあった。
「あんたが何の用?」
プリンがくってかかる。もう、いいや。
「どこから連れてきた小娘かは知らないが、あまり攫うのはやめた方がいいと思うな」
「攫ってないわ!」
「私、歴とした誇り高きドラゴンなんだけど?」
「ははは。これまた冗談好きな嬢ちゃんだな。だが、言うならもっと分かりにくい嘘の方が面白いぞ?」
ライラさんはプリンの主張を一蹴し、俺へと視線を向けた。
「ぎぎぎ……っ!」
プリンはライラさんに邪念を送っているが、当の本人は涼しい顔で受け流している。
「ミィト様が目を覚ましたみたいだ」
「……様子は?」
「大人しいとの報告が上がっている。状態異常に詳しい医者が検査をしたところ、もう付与の効果は残っていないようだ」
部屋の空気が一瞬にして和んだ。
「良かった……」
シーファが椅子に背を預ける。座るというよりも、倒れこんでいると言った方が正しい。
「まだ原因は解明されていないらしいがな。ミィト以外のギルマスも、元には戻っていないようだ」
「そっか……。その四人は、国に危害を加えるような感情を付与されていないんだな?」
サンカーのことは知ってるけど……キュラサとワヤ、ズートの様態は未だ分からない。
「大丈夫だ。サンカーさん以外、さらに面倒くさい性格になったがな」
ライラは苦笑いでそう話した。
ーーなんで仕事してるの? 騎士団は抜けたんでしょ?
シロの場違いな言葉攻撃!
「う、うん?」
状況が読み込めないライラさん!
ーー騎士団を抜けたのに、どうして仕事っぽいことしてるって話。
「ああ。そのことか。まあ、私はもともと騎士団長だったからな。国からの信頼を置いているのかもしれん。例え、騎士団から抜けたとしてもな」
「ライラさんってエルシャルト国の騎士団じゃなかったっけ?」
「人間族の国同士は基本仲が良いからな。ここの王から指名を受けた」
本当に関係ない話しちゃった!
あは!




