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第199話 ミィトとの決戦

 終わる。人生が。全て。


 脳内パリピのスキルのおかげで時間の流れが非常にゆったりと感じられる。


 ミィトは(レインボー)の攻撃の手をわざと緩め、俺を油断させた。そして、足だけを動かして次に俺が一歩踏み出す場所を予測し、小さな石ころを蹴った。


 上にだけ集中していた俺は気がつかず、一歩踏み出したところで石に足を取られ、転んだ。


 なんという最期なんだろう。今までの奮闘を考えたらダサいと笑われる程の死に方だが、何故か満足していた。


 俺は……よくやったよ。


 和樹を倒して。街から魔王を退けて。何回、人々を救ったのかな。


 あとはあいつらに任せよう。


 シーファ、シロ、プリン。


 ごめんな。


 俺はここまでだったらしいよ。


 重い瞼を開いた。虹色の光しか見えず、他の景色はかき消されていた。


 さようなら。


 みんな。


 〈諦めるんじゃないわよ!〉


 突如声が聞こえ、動かないはずだった俺の体が動いた。


 否、誰かに抱えられていた。


 〈まったく。こんなところで死んでもらっちゃ困るのよ! 私も、みんなも!〉


 その声は……プリンか。


 光によって塗りつぶされていた視界が晴れてくる。プリンは右腕を無くしながらも大空へと羽ばたいていた。


「お前……!」

 〈何? 助けたことに文句あるわけ?〉


 口調は強いが、ひしひしと安堵の感情が伝わってきた。


「死ね! 死ネエェッ!!」


 ミィトは手が届かない俺たちに向かって吠えている。魔法を打てばいい話だが、さっきので全部使い果たしたらしい。すでに膝は震えており、立つのもやっとという感じだ。


 〈前からこいつ、嫌いだったのよ。その理由が分かったわ〉


 プリンは鋭い目つきでミィトを睨む。


 〈やっぱり裏切り者だったのね!〉


 違う。彼女は、操られてるんだ。だから傷つけないでくれ……!


 〈操られてる? そんな都合のいい話があるの?〉


 ああ。


 〈…………分かったわ〉


 不承不承といった感じでプリンが頷く。


 彼女は腕にぶら下がっていた俺を背中に乗せる。漸く安定した姿勢をとることができた。


 〈これ、ポーションよ。マスターが持っている凄いやつよりかは数段劣るから、効果が出るのに少し時間がかかるわ〉

「ありがとう……」


 礼を言ってからプリンが咥えていたポーションを受け取り、飲み干した。


 急に体がぐらつく。プリンが方向転換を行ったらしい。


 〈一旦引くわ。文句は言わないで頂戴〉


 言うや否や、プリンはミィトとは反対方向へ飛翔し始めた。


「や、め……」

 〈今のマスターで勝てない相手なら、私だって敵わないわよ。ここは冷静になって、街へ戻るの。みんなと合流して策を練らなきゃいけないわ〉


 今の間でミィトがいなくなったら、探すあてがないじゃないか!


 〈だからってマスターには代えられないわよ!〉


 プリンは瞳を潤ませ、大きく念話を飛ばした。


「ーーっ、…………」


 初めて見せたプリンの顔に、俺は何も言えなくなってしまった。プリンもそれ以上は念話をせず、ただひたすら羽ばたいていく。


 そっか……、当たり前だよな。


 アホみたいに心配かけて、俺は何を言っているんだろう……。


 でも、でもさ。


 一つだけ、きっと正しいことがあるんだ。


 仲間は見捨てないって……!


 〈ちょ、ちょっとマスター!?〉


 ミィトだって、誰にも代えられない一つの命だ。


 気がついたら、俺は宙に身を乗り出していた。


「助ける! 絶対に!!」

 〈馬鹿言わないで! 今のマスターで勝てるわけがーー〉

「勝つんじゃない! 取り戻すんだ……ッ!」


 キッと前を睨みつけ、一直線に降下していく。その姿はさながら一本の矢のように。


「ミィトオォォォ!!!!」

「サトルウゥゥゥ!!!!」


 剣を引き抜く。ポーションの効果が出てきたみたいで、少し体が軽い。


 ミィトも剣を構え、一思いに振り抜いた。


 高い金属音と共に火花が散る。衝撃で手に痺れが走ったが、気にする余地はない。勿論これで相手が怪我することはないだろう。俺と同列か、それ以上のステータスを持っているのだから。


 ぶつかったほんの一瞬、ミィトが怯んだ。その隙を見逃さず、俺は剣を数ミリだけ逸らす。同時に半身になった。


 勢いよく切りかかったはずのミィトは剣に流され体勢を崩す。その切っ先も半身になった俺には触れられず、虚しく宙を切る。


 立場が逆転した光景に、俺は先ほどの記憶を思い出していた。


「技量は同じくらいだな! ミィト!」


 地に足が着いた瞬間、俺は持てる全力を出し方向転換を行った。


 ミィトは右足で踏ん張り、無理やり姿勢を変える。上半身をひねり、勢いで横薙ぎを払う。


 だが、もうそこに俺の姿はない。


 ミィトの背後を取り、剣の腹を使って首を軽く叩いた。


「っ……」


 音も立てず、静かに崩れ落ちる。それを支え、俺は剣を鞘に収めた。


 やはり、魔力切れを起こしてから動くのはそれ相応の代償が必要になる。彼女は気を奮い立たせ、いつ意識を失ってもいい状況下で戦っていた。だから、少し衝撃を加えただけで気が緩み、倒れた。


 俺なら意識を保つだけで精一杯だ。そこらへんは戦闘歴の違いを見せつけられる。


 〈マスター!!〉


 プリンが慌てた様子で着地した。


「おう。今から戻るぞ」

 〈戻るぞ、じゃないわ! 無茶なことして! 私がどれだけ心配だったか!〉

「それよりもプリンの方が重症だろ? 早くシーファに治してもらおう」


 プリンは右腕を無くしている。シーファのハイヒールならば部位欠損も治すし。恐るべき死神の力。


「帰ろう」

 〈え、ええ……〉


 俺はミィトを担ぎ、プリンの背に乗った。

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