第193話 死神の忠告
投稿できなくてすみません。
今日は二つ投稿します
「ーーとは言っても、接点はないであろう?」
テズの言葉に、俺は頷いた。
「まぁ関わらないことだな。スキルをオフにしておくといい。余は少し、其奴に挨拶をしてこよう」
会えるのか?
そう問うと、テズは当たり前と笑い声を漏らす。
「あれだけの結界、破るのは容易いわ」
結界?
ヤツは結界を張っているのか?
テズの目が、もうお前に知ることはないと語っていた。俺は開きかけた口を閉じ、テズの行く末を見守る。
「潔くて助かる。そして、もう一つだけ余から言いたいことがある」
「……なんだ?」
「神を信用するな。今はよくとも、いずれ其方の命に関わる問題に発展するであろう」
……まただ。言い方は違うが、魔王も同じことを言っていた。
「俺からもいいか?」
転移しようと魔力を練り上げるテズは首を傾げた。
「お前はどっちだ? 俺のユニークスキルを狙ってるにしちゃ、情報を与えすぎだ。その迂闊さがかえって自身の首を絞めることに恐怖はないのか? 心配はないのか?」
「く、くくく」
「……何が面白い?」
「くははははっ! 恐怖、恐怖か」
さぞ愉快そうに笑う死神は背中の大鎌に手をかけた。
「恐怖などない。それと、今断言しよう。余は其方の敵だ」
「俺だけ? ミィトたちは違うのか?」
「ああ。余が欲しいのは悟のユニークスキルーー変化だ。その他はどうなろうと余には関係がない」
「はは。お前らしいな」
「む。それはどういう意味だ」
互いに笑いあう。
「いやぁ〜。だから妹に嫌われるんだよ」
空気が瞬時に凍りついた。
沈黙。
俺は笑顔のまま静止し、テズは鎌に手をかけたままその動きを止めた。
刹那、空気を切り裂く音がした。俺の前髪が数本はらりと落ちる。
半身を逸らし、避けた結果でこれだ。前シーファがテズと戦って勝ったと言っていたが、きっとその時よりも力を上げている。
否、人を殺して魂を奪った。
「殺す気満々じゃねえか。何が争いをおこさないだ?」
何度も言っていたくせに。
「……チッ」
テズは一つ舌打ちし、転移を使って消えた。
「行ったか……」
俺は、大きくため息をついた。
暑く感じたので、カッパを脱ぐ。ベッドの上に放り投げた。
しかし、鑑定さんがまさかそんな人物だったなんて。なんで黙っていたんだ? というか、どうして俺の鑑定スキルに?
分からないことがありすぎる。でも、そいつには会えない。こことは違う次元にいるからだ。
ーーやつの正体は…………。
驚いた。
ーー邪神だ。
神という存在だったから。
ーー接点はないであろう?
あるはある。けれども、直接会ったことはない。
ーー神は信じない方がいいよ。
魔王の言葉はそういう意味だったのか。魔王は邪神のことを知っていた。そして、俺に忠告をした。
忠告をした目的は?
……分からない。問いただしたいところだが、俺の代わりに死神が向かってくれている。手に入れた情報を話してくれるかはテズ次第だ。
まあ、あの雰囲気だと話してくれる可能性は少ないかな。
喧嘩ふっかけない方がよかったかも。
うん。後悔後悔。不良じゃないんだし気をつけよう。
……スキルをオフにするか。
一瞬躊躇い、俺は鑑定のスキルをオフにした。
これで、心に声が届くことはなくなった。同時に、自身のステータスも敵のステータスも鑑定することができなくなった。
喪失感に支配されつつも、俺は部屋の外に出た。
廊下に人の気配はない。
階段を降りると、ギルドの騒がしさが一層増した。
四人掛けのテーブルに、シーファとミィト、サンカーが座っている。
「待たせたな」
俺の言葉に、3人が視線をよこした。
「いや、それほど待っていない。それよりも、座ってくれ」
サンカーに促され、空いた椅子に腰をかける。……プリンがいないな。
「……して、どんな話だった?」
「うん……色々だ」
「そう話したくない内容なら別にいい」
「助かる」
サンカーが口を閉じる。入れ替わりにシーファが身を乗り出した。
「何かされましたか」
疑問形ではなかった。俺の変化をよく読み取っている。
「少し前髪を切られただけだ。下手な散髪よりもいけてると思うぞ?」
「冗談を言わないでください。ほとんど切られてないですよね?」
シーファは苦笑する。
「前髪でも、特に前の部分が切られていますね。カッとして切ったのなら、こんな繊細なことはしないでしょう。ということは、確実に殺しにきてますね。頭を両断しようと鎌で切りつけた。ですが、サトルが半身になったことで上手くかわした。違います?」
全く、鋭い洞察力だ。俺なんか鑑定さんに指摘されないと絶対に気づかないぞ。
鑑定さんに……。
「すごいな。流石はシーファだ」
平静を装い、素直に賞賛した。
と、バタバタと慌ただしい足音が聞こえた。ギルドの入り口を見ると、そこにはワヤとキュラサが息を切らして立っている。
「漸く来たか」
サンカーが言うと、シーファは力を抜き背もたれに寄りかかった。
「僕たちを、置いて、はあ、話し合い、かい?」
「心外、だわ。私たちは、あんなに、はあ、必死に、戦って、たのに」
お疲れ様。
「ズートはどうした?」
疲れていて更に怒っているところに突っ込まないサンカーさんかっこええっす。
「ズ、ズート? 私たちよりズート? まだ外にいるけど……」
キュラサはポケッと阿保顔をし、すぐにいつもの表情に戻った。
「それと、雨、止んだよ。雷も。何だったんだろうね」
キュラサにワヤが食ってかかる。
「魔王に決まってることは普通の考えで分かるよね? って、あれ? もしかして分からなかったのかな? キュラサは幼稚だなぁ」
「何ですって!? 私が幼稚!? そういう貴方こそ幼稚よ! 幼稚って言った方が幼稚なの! 分かる?」
「へえ。僕より年下の君こそが幼稚なんじゃないかなあ?」
「年下って、3日違いなだけでしょ!? よくもまあイキってられるわね!」
「それは僕の台詞だ! 3日も違うのに、なんでそこまで調子にのるんだ!」
はいはい。いつものね。
サンカーは額に手を当て、やれやれと首を振る。一方のミィトは子供を見守る親のように、優しい微笑みを浮かべていた。
「雨が止んだみたいで良かった。このまま次の段階にいけば、それこそ天変地異の現象が巻き起こってた」
窓越しに見える景色は雷でボコボコに陥没した地面だった。
ファースト、セカンドといったのだからサードもあるはず。何段階まであるんだろ。十段階とかあったらセージが壊滅する。うん。
あー、面倒臭い。
あんな魔術どうやって止めるっていうんだよ。術者も見つからないのに。
裏切り者でもいるのか?
ないな。
もしそうだったら俺がとっくに気付いてる。全感知上位を持ってるし、嘘をついた時点でバレバレだ。体温の上昇とか、そういう小さな変化にも気づけるしな。
っていうことは、アレしかいないんだろうなあ。




