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第190話 身近なもの

更新が遅れてしまいました。次は7月27日に投稿します。

 魔王撤退。現場調査。帰還。


 一通りを終え、俺はシーファとギルマスが集まる部屋に入った。因みにシロはまだ外を走り回っている。決して遊んでいるわけではない。うむ。


 そして、俺はプリンを紹介する流れとなった。自分で作り出したんだけどね。


 みんなが「こいつ、今更何言ってんだ?」みたい顔になっているが気にせず事を進める。


「入っていいぞ」


 魔法陣が光る。


 それを見た瞬間、部屋の一同はその目を丸くした。


 美女だった。しかし、頭から白い角が2本生えている。そして、肌も角と同じく真っ白だった。


 整った顔立ちに、シュッと鋭い目。服は青色のワンピースで、何処ぞのお嬢様を彷彿とさせる。


「ご紹介します。プリンでございます」


 ふざけた感満載だったが、みんなはそれどころじゃないらしい。


 ま、当然だわな。あの馬鹿でかい龍がこんなにちっこくなっておまけに人間姿になってるんだから。


「何か失礼なこと、考えてないでしょうね?」


 プリンがジロリとこちらを睨む。俺は苦笑いしながら手を前で振った。


「気のせい気のせい」


 そう。今までは念話だったが、プリンは喋れるようになったのだ。最初は口足らずであまり喋れないと思っていたが、割と話せるっぽい。


「プ、プリン? あんなに大きい龍が、人間に……? え……、え?」


 ミィトが物凄く驚いてる。そりゃそうだ。変身した時、俺もびっくりした。だって、服着てないんだもん!


 ということで、いつかシーファが欲しいと言っていたワンピースを着させた。明らかにサイズが小さかったし、こういうことを見越していたのだろう。


「人化できることは知っていましたが、こうやって見るのは初めてです」


 当の本人は自身が選んだワンピースとプリンへ交互に視線を送り、満足したかのように頷いた。


「よく似合っています。プリンは服との相性がいいですね。ファッションの本能が疼きます」


 ファッションの本能ってなんだよ。男子には理解できないな。


「そ、そう? ふふ。私は何でも似合うのね。シーファ、今度一緒に服屋でも行きましょう」

「はい。全然良いですよ」


 場違いな会話に、ライラさんが咳払いをした。


「あら? 私たちの楽しい楽しい会話を邪魔するつもり?」


 プリンから殺気が放たれる。ここでは咳払い効果が発動しないらしい。


 ほら。ライラさんが顔を引き攣らせてるじゃないか。


「プリン。あんまり言いたくないんだけど、そこまでやらなくとも……」

「マスターが言うなら黙るわ」


 プリンは口を閉ざす。


「黙るって程じゃないけど……。あのさ、そんなに偉い態度だと嫌われるよ?」


 俺が言うと、プリンは顔を青くした。人間だからこういう表情も読み取れるようになったのだ。


「マ、マスターは私のこと嫌いなの?」


 足元がよろめき、わざとらしく椅子に寄りかかる。


「うーん。そうじゃないんだけど……」

「そう! じゃぁ、私は私で元の性格で人生を過ごすとするわ!」


 扱いづらい……。まあ、いいや。嫌いじゃないのは本心だし。


「あれ? 何の話だっけ?」


 俺が首を傾げると、ミィトがすかさず補助した。


「外の様子の話だったよ」

「そこで質問があります」


 俺が口を開くよりも早く、シーファがこちらを見据えた。部屋中の視線が集まる。緊張感ある空気に俺は自然と真剣な顔つきになっていた。


「これはサトルが来る前に話していたことなんですが……単刀直入に聞きます。あれについて、何か知っていますか?」


 具体的な言葉が抜けていたが、それだけで十分すぎるほど理解できた。


「知らない」

「本当ですか?」


 俺は少し考え、言った。


「変な感じなんだよなぁ。知っているのに、知らない感覚。聞いたことはあるけど、それが何なのかが分からない。でも何らかの接点はあるんだ」

「接点というとなんだ?」


 サンカーが入り込む。


「ミィトなら知ってると思うけど、俺、一回龍に変化しただろ? その時に声が聞こえたんだ。 "変化呪を、使用しますか?" ってな」

「変化呪?」


 プリンが聞く。


「自我を失う代わりに絶大な力が手に入るスキルだ。そのおかげで和樹との戦いを有利に進められたわけだが……落とし穴も凄くてな」

「成る程。その変化呪とやらに『声』が関係してるというわけだな」


 サンカーが情報をまとめあげる。


 鑑定さんは何か知っていることはない?


 …………。


 ん?


 おーい。鑑定さーん?


 なんか反応しないんだけど。


 これは異常事態では?


 冗談ではなく、ガチの方。


 鑑定さんはいつも俺が話しかけたら必ず何か返してくれるし、というか自分から話しかけてくることもある。しかも鑑定さんの能力が進化したばっかりだ。彼女に答えられないものはないだろう。


 なのに。


 反応しない。


「……? サトル? どうかしました?」


 俺の表情の変化をいち早く読み取り、シーファが心配そうに話しかけてきた。


「マズイ。鑑定さんが機能しない」

「鑑定……さん?」


 不思議な顔で尋ねてくるので俺は手短に説明した。つーか知ってるだろ。


「鑑定さんは知っての通り、物とか魔物とかの情報を教えてくれるスキルだ。それで、今声について聞いてみたんだが全然反応しないんだよ」

「鑑定のことですね。ですが……」


 シーファは困ったように眉を顰めた。





「『声』のことについて聞いても、答えないと思いますよ?」





 …………?


「どういうことだ?」


 鑑定さんは『声』に関して、喋ってはいけないことになっているとか?


 そう言うと、シーファはますます困惑した。


「違います。まず、そんな世間話をやっても反応してくれないでしょう? 鑑定とは魔物のステータスや植物を鑑定するときの為に使われるものです」

「え……? し、喋るよ? 俺といつも世間話をしてくれるよ? 好きな色の話とか、そんなどうでもいいことだって話したことがある」

「何を言っているんですか?」


 嘘だろ?


 助けを求めようと部屋の顔を見渡したが、全員揃って首を傾げていた。


「どういうことだよ?」


 思わず同じ質問を繰り返してしまう。


 本当に、どういうことだ?


 鑑定さんはみんなにはないものなのか?


 鑑定さんとみんなは会話してないのか?


 鑑定さんってそもそもなんなんだろう?


 なあ、答えてくれよ。


 お前は誰なんだ?


 鑑定さん。


 いや、もしかしたらお前は敵かもしれない。


 身近にいる、敵かもしれない。


 答えろよ。


 誰なんだ?


 なあ!

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