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第19話 防具と剣ゲット!

  身支度を整えた俺は、シーファに部屋で待機してもらって街に出た。俺の服もボロッボロの学ランだったし、あまりにもひどくて今はギルドから借りている。自分の装備も買わなければな。これでは目立ってしまう。


  ええっと……。服屋はどこじゃ?


  知らない文字ばかり。言語理解があるとはいえ、文字までは読めないらしい。


「あの、服屋はどこか知ってますか?」

「はぁ?」


  近くにいた女性に話しかけると、彼女は呆れ顔で俺を見つめた。


「目の前にあるでしょ?目が見えないの?」


  あら、そうでしたか。この店でしたか。


  お礼を言うと、さらに怪訝な顔へと変化したが、ちょっと恥ずかしかったのでそのまま店に入る。


「らっしゃい。なんの御用かな?」


  愛想よく厳つい男の店員が出てくる。


「服をくれないか?ローブと、防具だ」


  お金は羽変化で貰ってる。光銀貨1枚だ。詐欺じゃないからな?


  この世界の金銭感覚は、銅貨10枚で大銅貨、大銅貨10枚で銀貨、銀貨10枚で金貨、金貨10枚で白銀貨、白銀貨10枚で光銀貨らしい。光銀貨は貴族が持っているほどの大量の金らしいが、羽変化があればすぐ手に入る。


 それでもやっぱり罪悪感はあるため、これからはギルドで稼ぐぞ。


 まぁでも羽変化は一回変化させるともう変化はとけないので、そのままお金として使うことはできるがな。


 でも頑張って働いている人もいるから、その人たちの努力を踏みにじることはしないためにもこれ一回でやめにしよう。


「では、予算はどれほどだい?」

「光銀貨1枚だが、いいか?」

「こ、光銀貨……わ、分かりました。今すぐにでも用意します」


  光銀貨を見せると、反応が変わった。恐るべし光銀貨。罪悪感がハンパない。


「サイズはどれほどで……」

「俺よりも少しだけ大きいサイズの赤いローブと、俺のサイズの防具を作ってくれないか?でも、動きやすいやつがいいかな。できるだけ最高傑作で頼む」


  店員は急ぐように奥へ行き、俺からは見えなくなった。そして数分後に何着かの服を持ってくる。


「説明しますと、このローブは身軽な上、魔法攻撃をあげるという能力を持っております。さらに魔法耐性もついていて、魔法特化に適しています。そしてこちらの防具は、これも身軽さに最上級の職人たちが追求して作った代物になっております。このブーツも、3回ほど空中を歩ける仕様になっています。しかも、これらの服は姿形を変えられるので収納可能です。……どうですか?」


  これがウチらの店が出せる最高傑作だというように、目で主張してくる。鑑定様で嘘を言っていないか武器を確認した上で俺はこれを買うと決めた。


「買う。全部くれ」

「恐れ入ります」


  そんなにかしこまらなくても……。


「こちら全部で白銀貨3枚となっています」

「光銀貨で頼む」

「はい。白銀貨7枚のお返しになります。ありがとうございました!」


  厳つい男性がここまで敬語を使うとこちらもなんだか拍子抜けしちゃうなぁ。


  俺は白銀貨7枚を受け取って、服を着てローブは袋に入れてから店を出た。あとは武器だな。


  武器屋のことを道行く人に聞くと、また変な目で見られて防具屋の隣だよと教えてくれた。うう、俺がどんどん変な人になっていくぜ。文字の勉強もしないとな。


「あら、こんにちは。お好きに見ていってくださいね〜」


  今度は優しそうなお姉さんだ。俺は壁に掛けてある剣を見る。盾もあった。防具で身軽さを追求したものだから、縦入らないだろう。視界を遮ることになるし、片方の手が使えなくなるのはかなりのペナルティー。あのような爆発が来たら、いやーーこないように今度は努力するんだ。


  そこで、とある黒い1つの剣と杖が目に入った。


「これは?」

「それはお兄ちゃんにははやいかな。2つセットで白銀貨5枚。高性能だけど、お高いよ〜」

「よし、買う」

「……」


  女性は絶句する。さっきこの剣と杖のステータスを調べたが、かなり強かった。どちらも攻撃と魔法だけが違って、見 剣が攻撃力+10で、杖が魔法攻撃+10。これは強いよ。普通に強い。他のやつ見てもほとんどが+3とかだけだもんな。俺もあのボロボロの剣は熱で変形して使えなくなっていたから変えなきゃいけない。そうだ、鞘付きでお願いしよう。


「鞘もつけてくれるか?」

「いいえ、これは鞘もついてるわよ〜。そう考えると、お得セットでしょ?」


  こいつ、ベテランだな⁉︎俺が買うと言っても数秒絶句しただけで元に戻っている。この作業は手慣れているんだな。


「ほい。白銀貨5枚だ。それじゃあ、貰って行くぞ」

「ありがとうございました!」


  剣を鞘に入れるとピッタリとはまった。腰につけると、そのままくっつく。魔法の力でくっついているんだって。


  よおし、あとは帰ってシーファに渡すだけだな。


  俺が元来た道を帰っていくと、それとすれ違い際に派手な格好をした女性が通った。その脇には護衛らしきごつい男が付いている。


「ちょっと、邪魔よ!」


  肩がぶつかり、その女は食ってかかる。護衛が俺に警戒を強めた。


  肩が当たっただけでそこまで警戒しなくても……。こっちが傷付くじゃないか。


「私に向かって無礼なの!捉えて!」


  この世界は肩がぶつかった程度で捉えられるようです。いや、そんな場合じゃないって。まずは切り掛かってくる相手の攻撃を避けて鑑定ーー。


  遅。俺に比べたら全然遅いぞこれは。これが本当に姫の護衛か?防具屋のあのいかつい男でさえも全員倒せそうだぜ。


  俺は鑑定をする価値もないだろうと、その攻撃をやすやすと避けた。すれ違い際にそのみぞおちへと弱くパンチをすると、音を立てて護衛は倒れた。俺はその体を支え、姫に押し付ける。


「すまんな。慰謝料は出すから、見逃してくれ」


  そう言って残りの白銀貨2枚を渡すと、俺は駆け足でその場を去った。その場に姫は呆然として立っている。やがて、憎しみに顔を歪めた。手の中の白銀貨がみしりと音を立てる。


「は……?凡人のくせにっ、凡人のくせにっ!」


  まさか1番弱い護衛を雇ったのが不幸だった。ただのお出かけだからといって、欲を張らなかったのが悪い。姫はその後ろ姿を眺め、城へと戻った。

「ごめん、プイ。作戦遂行する前に街に入っちゃった」

『はい?ごめんって・・・僕たちが半話分かけた作戦だよ?これじゃあただの雑談会みたいな感じになっちゃったじゃん!どうしてくれるんだよ!』

「本当に申し訳ない。許してくれ」

『うう、僕の出番・・・僕の出番が・・・』

「うわ、泣くな。泣くなって」

『誰のせいだと思ってるの?うわぁぁぁぁ!』

「痛い!痛い!やめろ、おい!」

『もうやめないからね!僕からの裁きを受けるんだ!』

「パグみたいな口調でウザいな!それならこっちもーー」

『うらぁぁぁぁ!』

「うおぉぉぉぉ!」

「うるさいです。やめてください!」

「『すいません・・・』」

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