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第181話 上空から

 魔王含める4体はあっという間に軍の前まで来た。迂回などせず、真正面からだ。わざとだろう。


「あいつ……、自分から軍の中に突っ込んでいきやがった……!」

「熱くなっちゃダメだよ、ワヤ。それも相手の計画なんだろうね」

「そうだったのかぁ? おれには全く理解できんぞ」


 後頭部を掻いて豪快に笑うズートを横目に、ミィトは苦笑いしていた。


「でも、どういうことなんだろうね? 半円陣形の中に入り込んでから一切動かない。取り敢えずは魔法部隊と弓部隊で攻撃しちゃう?」


 と、ワヤ。


「弓部隊は隠し玉だから、まずは魔法部隊でいいんじゃない?」


 と、キュラサ。


「なんだと!? また僕の意見に反論するというのか! このクソ女!」

「クソ女とは何よ! 貴方こそ慎重に考えて行動するという概念はないの!?」


 2人の間に火花が散る。その様子を見ていたズートが、未だ睨み合っている女性と男性の首根っこをひょいと持ち上げた。


「うわっ!?」

「ひゃっ!」

「喧嘩はダメだぁ。この場でそれは絶対にダメ。馬鹿なおれでもわかる」


 野太い声でそう言われ、キュラサとワヤは地面に崩れ落ちた。


「ズートに言われるとは……」

「私たちはなんて情けないのかしら……」


 2人して地面に崩れ落ちている。なんやかんやあって、仲が良い。


 ミィトはパンッと手を叩き、ギルドマスターの注目を集めた。


「茶番劇は終わりだよ。そろそろ戦闘に集中しなきゃ。と、言ってもまだ戦ってないけどね」

「はい。分かりました」

「仰せのままに」


 ワヤとキュラサが礼をし、それぞれの持ち場へと走って行った。


「2人の茶番は見ててなかなかに楽しいな。さて、儂も行くとするか」


 剣を抜き、サンカーは中央へと歩いていく。ミィトもそのあとに続いた。


「おれは?」


 ズートが自信を指差し、首を傾げる。


「全く、忘れないように50回は言ったはずなんだけど……」


 ミィトは項垂れる。サンカーが愉快そうに笑った。


「ほっほ。ズートは最後の方に暴れてくれれば良いものよ」

「そうなのか? じゃあ、おれは待機してる!」


 本当、何故こんなのがギルドマスターなのかよく分からない。


 ミィトたちが近づいてくるのに気がついた魔法部隊は、2つに分かれて道を示した。


「ありがとう」


 礼を言い、魔王等の正面に立った。幼女はニカッと無邪気な笑みを見せる。それにはどす黒い色の殺気が隠されていたが。


「ギルドマスターのお出迎え? あはは、テンション上がるなー」


 魔王は目を細め、嬉しそうに笑う。偽りはないみたいだ。


「なになにー? 2人は、カップル?」

「ふふ。面白い冗談ね。こんなおじいさんと付き合うわけないでしょ?」

「ほっほ。傷つくなぁ」


 暫くして、ミィトは手を掲げる。


「……かかれっ!」


 雄叫びをあげ、騎士団が矢のように突き進んでいく。魔法部隊が詠唱を始め、魔王は後ろへ下がった。


「まずは小手調べだー」


 最初に、騎士団がサソリの元へと到着した。


「くらえ!」


 騎士が剣を振るう。


 サソリは微動だにしなかった。鋭く、研ぎ澄まされた一撃が紫色のボディを貫こうとする。


 鈍い音がして、剣が根元から折れた。


「なっ!? 何故!?」


 そして、一閃。


 それだけで周囲にいた騎士の首から上が無くなった。


「ギイィィィィッッッ!!!!」


 咆哮を上げ、尾の位置をあげる。ミィトは何が起こるか、察した。


「魔法部隊っ! 総動力で結界を張って!」


 詠唱が切り替わり、結界が張られる。ミィトも氷結結界を眼前に広げた。


 尾から液体が発射。運悪く結界が張れなかった魔術師の1人がそれをくらい、体が溶けた。


「毒だよ。強い酸を含んでいる」


 サンカーが苦虫を噛み潰した表情をする。


「これは厳しい戦いになりそうだ」


 サソリのハサミについている、捻じ曲がった刃で騎士が切られていく。とんでもない殺傷力だ。豆腐でも切る感触なのだろう。


 そして、様々な魔法が飛ぶ。と、サソリの周りにも魔法が浮かんだ。風刃。風魔法だ。


 ミィトは無詠唱で氷の剣を作り出し、サソリに向かって走り出した。


 魔法部隊とサソリの魔法が炸裂する。ミィトはその中から火刃を探し出し、氷刃をぶつけた。


 水蒸気爆発が起こり、煙が辺りを支配する。すぐ後ろにサンカーが付いてくるのが気配で察知できた。


 サソリの姿を確認し、大きく跳脚。空からサソリを狙う。


 当然のようにこちらに気がついている化け物が刃を振るうが、半身になってそれを躱す。風により、一気に煙が晴れた。


 無防備なサソリ。風を切る音がし、尾を切断した。断面は即座に凍結し、毒が含まれた血は結晶になる。


 氷の結晶が地面に着くよりも早く、ミィトは着地。追い詰めるかのように、サンカーが背後で剣を振り上げた。


「ギイィィィィッッッ!!!!」


 ミィトは振り返る。気がつくと、サンカーの体は宙に浮いていた。


「えっ?」


 体勢を変え、地を削りながらサンカーは数十メートル吹き飛んだ。


 何があった?


 目の前に集中しながらも、横目で背後を見やる。サルはこことは違う場所に投擲を繰り返していた。ならーー。


 ワニだ。


 ワニが大きく口を開け、何もない場所に噛み付いたかと思うと周囲に複数の空間攻撃が設置される。しかも、全て狙っているのだ。


 くすくすくす。


 魔王が声を押し殺して笑う。


「やっぱり、楽しいね! 人間が足掻いて、どうしようもなくて。それでも立ち向かって、殺されていく姿は最高に面白いね!」


 ミィトはギリッと奥歯を噛み締めた。


 しかし、そんなことをしても勝てないのは明白。まずは周りの化け物を倒さないと話にならない。


 空気を裂き、サソリの一撃が迫る。氷剣で受け流し、ハサミは地面を陥没させた。


 ハサミと腕の繋ぎ目を狙い、剣を振るう。振り切った時には、紫色の血が氷になって宙を舞っていた。


 切断できない、か。


 流石に固い。半歩下がり、突きの形へと変化させる。


 サンカーが早速走ってきて、ミィトに攻撃しようとしていたサソリの目を斬りつけた。


「ギィアァァァァァッッ!?!?」


 片方の目が潰れ、混乱するサソリ。


 グサリと、もう片方の目を潰す。あと一押し!




 ……その時、恐ろしいことが起こった。

タイトルの意味は、数話投稿したらわかると思います。

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