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第177話 秘密の通路を見つけた!

 5分の1ほどの力を出せば、通常の人間にも獣人にも目視できない素早さになる。ミィトのような強い人には通用しないけど。


「あ! 2つ目だ! すごいね、やっぱりさとるはすごい!」


 同じ言葉を2度繰り返し、賞賛する魔王。彼女は前と同じ場所にいた。しかし、風景が違う。


 魔王を中心にして倒れている木々。地面が抉れ、所々が陥没している様は明らかに何かが起こったことを訴えかけてきた。


「お前……破壊活動でもやったのか?」

「えー。ダメ? だって、待ってる間暇じゃん? このくらいなら怒られないよね? ボクだってかなり力をセーブしたんだからさー。褒めてよー」


 そう言って甘え、抱きついてくる魔王。俺は広げられた手をバシッと叩いた。


「俺とお前は敵対関係だ。じゃれつく理由などない」

「これはこれは手厳しい」


 何処かの執事から仕入れた言葉なのか。


 絶対にこんな幼女が知らないことを発する魔王。


 あ、そっか。こいつ一万年以上生きてるんだった。外見のせいで忘れそうだったぜ。


『魔王の意図は無駄話をして時間を削ることです。この場はすぐに離れて、爆弾探しに専念しましょう』


 ハッ。確かに。


 俺が背を向けたのを確認し、魔王は残念そうな声を出す。


「あーあ。せっかくいい感じだったのにぃ。ま、数分は稼げたからねー」


 こいつもなかなか黒いな。幼女だからといって侮ると危険かもしれん。


 ……魔王の時点で危険なのは分かってるけどな!


 鑑定さんに従い、俺は早めに魔王と別れた。


 あと50分。シーファとシロに合流するべく、砦へと向かう。


「止まれ」


 門の前で、やはり兵に捕まった。


「またさっきのやつか。無駄話はしないといったはずだが?」


 完全にこちらを敵対視している。悪いことなんてやってないのにな。


「ここって王様とかいる?」


 とりあえず質問。


「はあ? お前、何を言っているんだ? いるに決まってるだろ」

「そうか。ならいい。じゃ、俺はギルドにでも行くわ。警備頑張れよ」


 単にノリで質問しただけである。意味はない。


 その場を立ち去り、兵たちの視界に入らない路地裏まで退避する。


 これは、あれだな。最終手段使わないと通してくれないやつだな。


 ということで飛ぶ。ミストバードの翼を動かし、あっという間に空高くまで昇る。幻覚で翼は見えないようになっているので、はたから見れば何もせず浮遊しているように見えるだろう。


 このまま砦の真上まで移動。誰もいないか見える範囲で確認し、適当な場所に降りた。多分2階のバルコニーだ。


 大気感知に引っかかるものはない。これなら安全だ。


 最初にシーファとシロを探してみたが、文字通り影も形もなかった。


 彼女たちも探してくれている。無理に見つけることはない。


 爆弾探しに専念しよう。


 バルコニーを歩き、木製の扉を見つける。ゆっくりとした動きで扉を開けると、そこは部屋だった。


 殺風景な部屋だ。大きな机に、椅子が2つ。なんともバランスの合っていない家具の配置だ。


 そして、俺は違和感を覚えた。


 違和感の正体はすぐに見つかることになる。


 足元。


 普通なら絶対に気がつかないほどの、小さなずれ。


 石で造られた床が数ミリ浮いている箇所がある。よく見ればそこだけ溝の形も変で、異様な雰囲気を出していた。


 大気感知で感じ取ったのだ。


 この下は、空洞だと。


 俺は考えたが、それも一瞬のこと。浮いている場所に手を添え、引っ張る。


 そのずれは狭く、指なんておけない所だったが、俺は簡単にこじ開けて見せた。


 パラパラと豆粒のような石が落ち、階段が姿を現した。


 手と手を打ち合わせ、埃を落とす。


 俺は覚悟を決め、階段を下って行った。




 ……閉め忘れたハッチ。誰かの足音。


「本当、おっちょこちょいなんですから。ダメですよ、マスター。まったく、ここは優しい優しい私が隠蔽してあげるとしましょう」


 そう言い、女性はハッチを閉める。


 これは中からでも開けられるので閉じ込められるという心配はない。


「おっと。もう時間ですか。自分で作り出したとはいえ、法律というものは面倒です」


 誰かと会話している。しかし、話し相手は見つからない。


「もう法律を破っている? 別にいいんですよ、これくらい。見つからなければ結果オーライなんですから」


 美貌の女性は笑みを浮かべながら魔力を練っていく。


「何故人間のためにここまでするかって?」


 少し考え、彼女は言う。


「それはそちらに戻った時に話します」


 ここまでの一連で、時間は経っていない。


 女性は右手をあげる。そして、自らを強い光で包み込んだ。


 光が止んだ時。女性の姿はない。


 止まっていた時間が進むかのように、町は活発に動き始めた。

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