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第176話 少年P

 足に力を入れると、石造りの地面が砕ける。ミストバードの翼はもともと展開しているので必要ない。そして、一瞬のうちに俺はシーファの元へ辿り着いていた。


「っ、も、もう。驚かせないでください」


 息を呑み、苦笑いしながらシーファは言う。


「そうか? これでも結構遅めに行ったんだけどな」

「あはは……」


 全部本当のことである。本気を出せば衝撃波だけで町の一角を破壊できてしまうだろう。


 ーーそんなことよりも、シロたち頑張ったよ!


 思い出したのか、シーファが握っていたガラスの筒を差し出した。


「おお、ありがとう。どこにあったんだ?」

「あったというわけではなく、とある少年が見つけてくれたんです」

「少年……?」


 シーファに説明される。ゴブリンがこの国に迫ってきたので討伐したこと。その時にいたのが少年だったこと。少年と別れたあと、空中から爆弾を探していたら彼が地面で爆弾を持ち歩いていたこと。


「話によれば、家宝にされていたらしいです」

「は? 家宝? じゃぁこれは魔王が隠したものではないっていう可能性があるぞ?」

「いえ。話を聞く限り、今日見つけたものだったと。少年のおじいちゃんが見つけ、家宝にすると言い出したようです」

「よくわからないな。っていうか、家宝を勝手に持ち出して良かったのか?」

「……さあ?」

「色々おかしいな。そもそも、家宝を持ち出していることすらおかしい。怪しいな、ソイツ。魔王の手先が何かかもしれん」

「考えすぎでは?」

「ま、疑うことはいいことだ。そこら辺も視野に入れておこう」

「了解です」


 一旦話を止め、漸く爆弾を受け取った。


「俺はまた魔王にコレを届けに行ってくる。あと城辺りを重点的に探して欲しい。最悪上空からの侵入でもなんでもいい。俺も少し経ったら行く」

「分かりました。シロ、行きましょう」


 シーファたちの姿が消える。


 ……夕日に差し掛かってるな。もって1時間か。


 森によるついでにギルドへ行く。開けっ放しの窓から部屋を覗き見、時計を確認する。俺の体内時計通りの4時だった。


 その時。部屋の人物と目があった。


「ああ! それ、僕のお宝っ!」


 少年だ。俺を見るなり走ってくるが、俺は重力に引かれて地面に落ちていく。


「よっと」


 華麗に着地。すぐさまギルド内から少年が姿を現わす。


「おまえーっ! 僕がシーファさんに渡したお宝を持ってるとはどういうことだ!」


 え? あ、こいつがあの少年か。


「えーと……」


 俺が返答に困っていると、少年は犬のように唸り始める。


「グウゥゥ……! 分かったぞ! おまえ、シーファさんに渡したお宝を奪ったんだなー!? 最近町に出る悪い奴とはおまえのことだったのか!」


 憤る少年。


「あー、多分その悪い奴らは俺たちが捕まえた。っていうかシーファは俺の仲間だぞ?」

「嘘つくな! 嘘つきは泥棒の始まりだぞ!」

「えー」


 面倒臭い。


 みんな全感知上位を持ってたらいいのにな。嘘とか分かるから無罪を晴らすことができる。


「じゃぁシーファさんの特徴を言ってみろ! 絶対に分からないはずだ!」

「よっしゃ。いいぞ」


 俺は戸惑う少年の前でシーファ豆知識を披露する。


「獣人で茶髪で寂しがりやでそれでも他人を元気にさせる力を持っていて得意属性は風と闇で一回に千ほどの魔法攻撃を連射できてこれは言っちゃダメだけどここだけの話死神でテズの妹で美人でーー」

「もういい! もういいから! あと死神って何!? すごい物騒なんだけど!?」


 ストップが入り、俺は不承不承ながら演説を止めた。


「分かった。途中よく分からない部分もあったけど……。見た目とかはほぼ一致してたよ……」


 諦めたのか、俯向く少年。


「だけど、だけどな!」


 先ほどまでの悲しそうな瞳は何処に行ったのか。少年はライバル視するような表情でこちらを睨んでくる。


「絶対にシーファさんは渡さないからな!」

「は?」


 何言ってるんだ? こいつ。


「あ、そうだ。1つ聞きたいことがあってな」


 少年がクエスチョンマークを浮かべる。


「なんでギルドに住んでるんだ? 自分の家は? シーファにそれは家宝だって聞いたけど、家の人とかいないのか?」

「あ、え、それは……」


 明らかに歯切れが悪くなる少年。


「ま、その反応で分かったよ。ピリムさんよぉ?」

「なっ!? なんで僕の名前を!?」


 俺はニッと笑う。


「全く。その年で鑑定遮断を持ってるとか、反則すぎるぜ」

「どうしてそこまで……!?」


 そこまで言って、ピリムはハッとなる。


「まさか、鑑定!?」


 さっきから叫びっぱなしのピリム。


「は、犯罪だぞ! 勝手に他人のステータスを見るなんて!」

「そんな法律はないと聞いたが?」

「うぐぐ……」


 また唸り始める少年。


「何故……。僕には鑑定遮断があるのに……」

「生憎、神はこちらに味方してくれてるんでね」


 本当のことだ。


「そういうことだ。……俺はコレを届ける用事があるから、そろそろ行かさせてもらうぞ」

「い、嫌だ! シーファさんに渡したそれはーーえ、あれ?」


 少年がかぶりを振り、前を見据えた。


 そこにはもう、悟の姿はなかった。

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