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第174話 少年

 シーファとシロは空を駆けていた。眼下に爆弾らしきものは見当たらない。かなりの硬度を飛んでいるが、遥か下の風景は手に取るようにしてわかった。


「ありませんね……」


 思わずそう呟いてしまうほどに、爆弾は見つからなかった。


 と、その時。


 ーーあ! 町に魔物が近づいてきてるよ!


 シロが吠えた方向を見る。確かに、ゴブリン程度の魔物が歩いてきていた。数は数匹。それだけだが、野放しにすれば多少の被害は出るだろう。


「仕方ないですね。シロ、行きましょう」


 シロはこくりと頷き、超スピードでゴブリンの元へ突っ込んでいく。私も風刃を5つほどあたりに出し、その後を追った。


 隕石のように一直線にゴブリンへ走っていくシロ。


「グゲッ!?」

「グギャ! グギャギャ!」


 危機に気がついたゴブリンたちが逃げようとするが、既に遅い。シロが体に電気を纏わせ、地面と衝突した。


 砂煙が上がる。衝撃で吹っ飛び、難を逃れたゴブリンに向かって風刃を飛ばした。


 全弾命中。見えない刃に切り刻まれ、ゴブリンは息耐えた。


 翼で巻き起こした風によって、煙を飛ばす。中からシロが現れた。


 ーー終了! やっぱり悟が考えてくれたこの技は威力が高い!


 シロを中心にして地面が大きく陥没している。だがーー。


「まだまだですね」


 その言葉に苛立つこともなく、シロは悲しげに頷く。


 ーー撃ち漏らしがあった。シーファの言う通り。


 まだ技の制御ができていなくて、敵を完全に倒しきれない時がある。それをサポートするのがシーファの仕事だ。


 ーーでも、本気を出せば大丈夫。


 そう。今の一撃はほんのちょっぴりの力で出した技だ。本気で体に電気を纏わせれば、直径50メートルほどの円型に電気を流すことができる。範囲攻撃だ。これを考案したサトルはやはりすごいと思う。


「はい。それでは、爆弾処理に戻りましょうか」


 空へ飛び立とうと思った時、大気感知で何かを捉えた。


 援軍?


 私はそちらの方角に目を向ける。


「ひ、ひいっ!」

「っ!?」


 口から空気が漏れる。


 ーーなんでこんなところに獣人がいるの!?


 シロの驚いた声。


「お、お前らなんなんだ! 化け物か!?」


 その少年の獣人は尻餅をついており、必死に逃げようとしといる。しかし、腰が抜けているのかその場に立てない。


「安心してください。私たちは貴方の味方です」


 地面に降り、私は説得を試みる。


「み、味方って……。目の前でゴブリンを圧倒的に殺して、強さは認めるけど、なんなんだよ、その翼! それに、そっちは、電気を司る化け物……!」


 かなり怯えているのか、言葉を区切りながら話す少年。


「私は……悪しき人間に改造されたのです」

「……え?」


 間抜けな声を出す少年。私はくすりと笑う。


「辛かった、悲しかった。ですが、今は素敵なパーティーにいるんですよ。そして、今まで罵られてきたこの翼も誇れるようになりました。リーダーのお陰です」


 微笑しながら語り続ける私に、少年は呆気にとられていた。


 シロ。


 心の中でそう言う。


 ーーうん!


 返事がしたかと思うと、シロの体が縮み始めた。


 その様子を固唾を飲んで見守る少年。


 シロの身長が私の脛ほどになり、形が整った。白い犬が私の周りを元気よく駆ける。


「わんわん!」


 シロは少年のところまで行き、悲鳴をあげる彼の頬に自分の頬を擦り付けた。


 続いて、舌で顔を舐め回す。初めは嫌がっていた少年だったが、次第に楽しそうな声を出した。


「あはははは! もぉ、くすぐったいよ!」


 シロと遊び始めて数分。漸く落ち着いたシロを胸の前で抱き、少年は頭を下げてきた。


「ごめんなさい……。そっちの都合も知らずに酷いことを言ってしまって……。本当にすみませんでした!」


 私は少年の頭に手を置き、顔を上げるよう促す。


 面を見せた少年に、私は微笑んだ。


「いいんですよ。これでも、タフな方ですから」

「あ、ありがとうございます……っ!」


 嬉しそうに表情を緩める少年。私は手を振り、その場を去ろうとしたが、一言。


「このことは私たちの秘密です。誰にも言ってはいけませんよ」


 翼を広げ、大空へと舞う。


「あ、あの! 最後に名前だけ!」


 肩越しに振り返り、離れているにも関わらず小さく呟く。


「シーファ」


 少年の耳にはきちんと届いたようだ。


 呆然と佇む少年に背を向け、私たちは町へと帰った。


「シーファさん……」


 顔を赤くし、シーファがいなくなった方向を見つめる少年。


 彼には、恋心というものが芽生えていた。

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