第171話 儲かった
繋がりました!
「あ、あれは……っ!?」
「最近悪さを働いている奴らじゃねえか! 噂ではクソ強いって聞いたぞ!?」
「じゃぁ、あいつらは本当に騎士団の協力者なのか……?」
野次馬はざわめき、それと同時に俺の罪が軽くなっていく。
「そういうことだ! こいつらは俺たちの協力者なんだ!」
ルインの一言で、完全に誤解は解けた。解けたというよりかは解いた。
「ありがとな」
その場から離れた俺たちは、ルインに感謝の気持ちを述べた。
「いやいや。良いことをしたやつが罵られるなんて真っ平御免だからな」
そこで彼はハッとなる。
「そういえば、田舎から出てきたとか言ってたよな? その他にもお前、なんか言ってたことが矛盾していないか?」
ぐっ。
先ほどの案はパッと出てきたものなので、後先考えずに言ってしまった。くそう。またここで疑われることになるとは。
「まるで自分の毛色が銀だというような口調だったぞ?」
「えっとな……それは……」
返答に困っていると、横からシーファが言葉を挟んだ。
「幻聴だったでは?」
「そうか? 確かに聞こえたはずなんだけどな……」
「しかし、一度貴方は毛色を間違えたでしょう? 幻覚を見ていたかのように、今回だって空耳だったかもしれません」
「……確かにな」
ルインは押し黙る。静寂が辺りを包み込んだ。
どう沈黙を破ろうと考えていると、大きな声でルインが叫ぶ。
「ああ、もう! やめだ、やめだ! もうどうでもいい!」
ダメだぜ、ルインさん!
まあその決断で助かったのは事実だけど。
「あと、ギルドにも説明してくれないか? 一番最初そこで疑われたんだよ」
「分かった。困った時はいつでも頼りにしてくれていいぞ」
おお。これは心強い味方ができましたな。国の騎士団に信用されているなら安心していいかも。顔借りたい。
「俺の名前はどこでも使っていいぞ」
なんと。
心を読み取る超能力者なのかどうか知らないが、許可を貰ってしもうた。しかしまあここまで親切にするかね?
「今回ばかりは迷惑をかけた。これも俺にとっては罪だ。無実の獣人を疑うなんて、重罪だ。だから、それ相応の謝礼をしたい。口裏を合わせるだけでは足りんからな」
「お前……いいやつだな」
「伊達に騎士団最高責任者をやっているわけではない」
最初は弱いかと思ったけど、周りにしては強いんだなぁ。今も他の兵が頷いているし。脳筋ってところ以外を除けば完璧かも。
そうしてギルドにつき、ここもルインたちが説明してくれた。一緒に罪人たちの山を差し出すのは効果覿面で、受付嬢が後ろに引っ込んでいった。
まぁあとは俺の疑いが晴れて、ハッピーって感じだ。
「それじゃ、俺たちは仕事があるから」
そう言い、ルインたち御一行はギルドから去ろうとする。
「ああ。今日はありがとな。また会ったら、どこか食いに行こうぜ」
その声かけに、ルインは右手を挙げて答えるのみだった。
何あれ超カッコいい。
「あ、あのう……」
その一部始終を見ていた受付嬢が苦笑いしながら呼んでくる。
「懸賞金と報酬をプラスして、5000万セージです。ご確認ください」
大金持ちになっちった。
あと人間の街とは硬貨が違うらしい。そう考えて持ってこなかったのは正解だったな。ま、依頼でもやってチミチミ稼いでいこうとは思ったけどすぐに大金を手にするとは思ってもいなかった。
ジャラジャラと音のする袋を差し出してきたので、言われた通り中身の確認。
うわぁ、めっちゃある。普通じゃ数えられないだろ。
俺には鑑定さんがいるけど。
困った時のぉ、鑑定さぁぁん!
『2セージ足りませんね。意図的な犯行ではないと思います。きっと、数え間違いでしょう』
そりゃあこれだけの大金があるんだから数え間違いぐらいあるだろ。大目に見てやるか。
「大丈夫だ。丁度ある」
受付嬢は一瞬目を丸くしたが、すぐに営業スマイルに戻った。
「分かりました。では、ギルドカードを出してください」
首を捻りながら俺とシーファの分のギルドカードを渡す。
「良かったですね! 今日からDランクです!」
え? 1日しか経ってなくね? あと2つ一気に上がってるんだけど。
「こんなに早くランクアップする冒険者は私でも見たことありませんよ……。ですが、あの暴君たちを捕まえたのですから、ここまでしなければギルド側が申し訳ないという気持ちになりまして。それが理由です」
成る程。
ま、クエストを発注できる範囲が増えて良かったって思うべきところだよね。これは。
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「ミ、ミィト様っ!」
「……? どうしたの?」
慌ただしく私の仕事部屋に入ってくる兵士。本当、うるさくて困っちゃう。
「魔王が、動き始めたんです!」
「なっ!? そんな……!?」
今回ばかりは無視してはいけないことだった。私は立ち上がり、直様会議の準備をする。
「現状は?」
「偵察隊によりますと、3体の大型魔物を引き連れた魔王が進軍中だと……!」
「3体? それまたおかしな数字。間違いはないの?」
「はい。マルス率いる偵察隊の確かな情報です」
マルスね。あの人は優秀だから間違いなんて犯さない。なら、信用してもいいかも。
「魔物の種類は?」
「それが、見たことのない種類だと仰ってまして……」
新種でも作り出したのかな? 今はわからないから、情報が集まるまで待つしかないか……。
「分かった。でも、魔王直々に来るなんて馬鹿げてる……」
「ごもっともです」
普通、ここは魔物に進軍させ、弱ったところを魔王が突くのではないだろうか?
それに、魔王は死神の呪いを受けて成長が止まったと聞いたことがある。なので、思考は今も幼女だ。
全くもって小さな子供が考えることは怖い。魔王は何を企んでいるのか、見当もつかない。
私は誰にもばれないように、小さなため息をついた。
最近は平和が続いて、ずっとこの時が流れていればいいのに。
そう思っていたけど、現実はそこまで甘くないみたい。
「ギルドマスターたちに伝えて。ロット国で緊急会議を開くと」
既に魔王進軍の情報は伝わっているはずだ。今やっている仕事も放り投げて飛んでくるはず。
私は1人、ロット国に向けて走り出した。
馬車などいらない。走った方がよほど速いからだ。
ロット国に着くと、サンカーが迎えてくれた。彼はここのギルドマスターだ。
「話は聞いたぞ。儂が思っていた通り、お主が一番乗りだ。先に塔に入って行ってくれ。全員揃ったら向かう」
いつもは元気よく笑っているおじいちゃんだが、顔が引き締まっているように見えた。いや、引き締まっているのだ。
サンカーをここまでの表情にさせる者ーー魔王。
(一体、こんな時期に何を考えているの……?)
勿論、答えてくれる者などいなかった。




