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第167話 違和感

 帰り道。超空間を通りながら、俺は1つ聞く。


「なあ。変化呪ってお前が仕込んだスキルか?」

「ああ〜、変化呪ね。うん、僕が与えたスキルーーと言っては変だね。正しく言えば、変化スキルから派生したものかな。これに関しては僕も予想外だよ。変な方向に派生しちゃったからさ」

「え? じゃぁ他にも派生スキルはあるのか?」

「部位変化とかもその類だよ。まだまだいい派生スキルは沢山あるけど、間違った方にいっちゃったのかな?」

「おい。それって変化呪よりも滅茶苦茶使い勝手がいいスキルもあったってことか?」

「そういうこと」


 パチンと指を鳴らし、パグは頷く。


「マジかよ……」


 ここまでは知らなかったが、他は本で読んだことがある。ユニークスキルから派生するスキルは2、3程度。これで俺は2つの派生スキルを入手したことになる。


 あれ? あと1つじゃね?


 変化呪いらなくね? リスクが多いし、仲間傷つけるかもしれないんだけど!?


 解せへんで。何故じゃ。


「あはは。サトルは運が悪かったねぇ」


 笑い事じゃねえ。俺の生死に関わる重大な問題だっつーの。


「こういうの、神様の気まぐれって言うんだよね。あはははっ!」


 豪快に笑うパグ。やっぱりこいつムカつくな。1発殴っていいかなぁ。いいよね。うん!


「え、ちょ!? どうして笑顔で拳振りかぶってんの!? う、うわあぁぁぁぁ!?」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 結局、パグは殴れなかった。


 俺とパグでは身体能力が段違いらしい。当たり前だよな、神と人だもん。くそ、でも殴りたかったぜ。


「それでも人間でステータス1500を実現するなんてイレギュラーな事態だよ。全く、飛んだ化け物を転生させちゃったもんだ」


 また俺を化け物扱いしやがって。これでもちゃんと人間だっての。


 因みにパグのステータスは秘密らしい。俺のステータスを覗き見しているくせに、自分のは見せないんだとか。鑑定しようとしたけど、鑑定遮断を持っているらしい。


 いけ! 鑑定さん! 乗っ取れ!


 と、いう方法も確かめたがなんらかの力で妨害されているみたいだった。神だからなんでもありだな。


「ま、今回はニガさんの気分が良くて助かったよ」


 ニガさん?


「言い忘れてたね。ニガさんはロボットで、《機》の神だ」


 ニガっていうんだ。っていうか、さん付けするってことはそんなに強いやつだったのかな?


「僕以外はみんな敬語で接触してるくらいだからね。ご機嫌が斜めになると世界を壊しかねないし」


 神怖。


「いつもは妹のミミちゃんがなだめて終わるんだけど……。生憎今はミミちゃんがいないからなぁ」


 滑り止めがなくなった感じだな。迷惑。


「うんうん。本人の前で言ったら殺されるけどさ」

「ニガさん怖そうだったからな」


 あのパグでもさん付けするくらいなのなら、俺もそれにならおう。


「ニガさんも強いけど、ミミちゃんもなかなか怖いよ? 逆にニガさんよりも怖いんだよねぇ」

「マジかよ。ミミちゃん? も結構強かったけど、星を破壊するほどの力はなかったぞ?」


 ヤバい。ちゃんをつけるのには抵抗がありすぎるんだが。やめとこ。


「君が規格外なだけでしょ……って言いたいところなんだけど、今回は無理みたい」


 貶してんだろ。失礼なやつだ。


「どういうことだ?」


 一応聞いてみる。


「ミミちゃんはぶっちゃけ言うとニガさんよりも強い」

「妹なのにか?」

「妹なのにだよ。ミミちゃんは強すぎる点からリミッターというものを使って、自身の力をセーブしているんだ。サトルも戦ったんでしょ? なら身に覚えがあるはずだけど」

「ああ、リミッター解除とかなんとか言ってた。もう必死すぎて覚えてないけど、全開放までいったと思うぞ?」

「うわぁ……流石人外……」

「だから絶対貶してるだろ」


 俺の目標決まった。


「俺は、ステータスにさらなる磨きをかけてお前を殴れるほどに成長してみせるからな!」

「どういう目標なの!? しかもさらっと酷くない!?」


 一生取れることのないよう、心に固くその言葉を縛り付ける。俺は決意をしたのだった。


「なんかかっこいいこと言ってるけど普通におかしいよね!? ちょっと、聞いてる!?」

「え、俺がなんか言ったのか?」


 パグは呆れた顔になって、宙を仰いだ。空なんか見えない超空間だが、彼は落ち着いたらしい。次には冷静な声ーーパグに冷静な声なんてないがーーを出して一言。


「ほら、もう直ぐつくよ。僕の力も持たなそうだし、本日はこれくらいで勘弁してね」

「はいはい。わかったよ」


 超空間を抜け、元の場所へ戻っている。タイミングがいいことに俺の体が消え始めた。前までは一瞬で消える感覚だったが、ステータスも上がりその瞬間が見えるようになったらしい。動体視力様々だ。


 パグと視線を交わす。すると、景色が切り替わった。


「……見慣れた天井だ」


 冒険者ギルドの一室。俺は起き上がる。


 既に太陽が昇り始めており、時刻は7時だった。いつもは6時に起きることから結構寝てたことがわかる。


 戻ってきたっぽい。なんだか精神的疲労がすごいなぁ。


 それに、違和感がある。唇がしっとりと濡れている感じがするんだけど……。なにこれ。


「ん?」


 ベッドの横に何かが置いてある。俺はそれに手を伸ばし、拾ってみた。


 石だ。


 鑑定さーん。これってライラさんがくれた、呪いを退けるとかそういう効果のある石だよなー?


『私の記憶にも残っているので、言っていることは当たっているでしょう』


 やはり。でも、なんでこれがあるんだ? いつもシーファが持ってるはずなのに……。


 なんかの用があって部屋に入ってきたのかな?


 パグと一緒に行動してたせいで俺の感知に引っかかったとしても目が覚めなかったんだな。これは欠点だ。パグと話してる時。敵襲があったら寝ている間に殺されてしまう。これ一番格好悪い。


 この石はシーファが死神の意思に呑み込まれないように、持たせたものだ。ま、本人が持ちたいと言っていたから渡しただけですけど。


 呪いを祓う石ならシーファが死神に戻る可能性も少ないかもしれない。


 そう考え、今でも大切にシーファが保管している。ポケットの中で。


 だから、この石は絶対シーファが所持しているのだ。この部屋に入ってきたのはシーファと断定していいだろう。


 …………。


 なんで入ってきたの? よくわからん。


 俺が持っててもあれだし返しに行くか。何か用があってきたのかもしれないし、その時に用件を聞こうじゃないか。


 俺は立ち上がり、部屋から出た。

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