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第162話 リミッター

 しゃがんで斧を躱す。すぐ上を緑色のラインが通過していった。


 距離をとろうと思ったが、俺の後ろにはまだ火柱が。この魔法は発動時間が長いためまだ消えることはないだろう。


 まさか自分の打った魔法で地雷を踏むことになるとは。


 方向転換をし、俺は右へ飛んだ。マシンガンの弾で地面が抉れる。


 俺は必中70%を発動させた。運だが、当たる確率は多い。俺は和樹との戦いでレベルアップをこれでもかというほどしたので必中も性能が上がったのだ。


 火柱を避けられたのなら、もう一度だ。


 無詠唱でとてつもない一撃を出すーーつもりだった。


 ひ、火柱が出ない!?


 俺は驚愕に目を見開く。その状態を隙とみなしたのか、ロボ子が接近してきた。


 変化は使えるようだったので、ルーゲラキラーフラワーに姿を変えた。


 俺の身長が縮んだことで斧攻撃を避けられた。しかし、ロボ子の口は下を向いている。マシンガンの銃口が松明の炎を反射しキラリと光った。


 左へ転がろうとしたが、斧は俺の行く手を阻み地面に突き刺さる。俺は頭にある葉のプロペラを回し、空を飛んだ。避けきれなかったのか、1発だけ下半身に銃弾が食い込む。


「ぐっ……」


 激痛に耐えながらも俺は一旦距離をとった。


 防戦一方だ。なんとかこの危機から脱する方法を考えなければ。


 ロボ子は俺にそんな暇も与えてくれないらしい。


 《リミッター20%解除……成功しました》


 リミッター?


 そういえば先ほどもそんなことを言っていた。


 すると、ロボ子の姿が掻き消えた。気がついたときには目の前に移動をしている。


 こ、こいつ……っ!?


 俺はある可能性に驚愕した。


 俺の感知を全て掻い潜ってきたのか……?


 ありえない。それこそ、全遮断を持っていない限りは絶対にあり得ない。


 戸惑いながらも剣で斧を流す。しかし、ロボ子は恐ろしいまでの身体能力で体を一回転させ即座に斬りつけてくる。


 体を一回転だ。


 頭だけは動かず、体がぐりんと。


 流石はロボ。なんでもできる。


 感心している場合ではないが、人間には到底できない真似に目を奪われない奴はいないだろう。


 と、ロボ子の周りに雷球が浮かんでいるのがわかった。


 魔法まで使うのか!


 火球で相殺。しようとしたが、今は変化中だ。人間に戻らなければ火球のスキルは使えない。


 俺は空を縦横無尽に駆け回り、なんとか雷球を回避した。バランスを崩したふりをして酸を吐き出し、見事ロボ子に命中させる。


 当たりどころが良かった。


 ロボ子の口から突起していた銃口が溶ける。中で弾がつまり、暴発した。


 大爆発だ。この体では炎に弱いので、ひとまず人間に戻る。先ほど受けた傷に弾丸が入っているので少々痛むが、立つのに支障はない。すでに傷は塞がりかけているからだ。


 完全に塞がる前に弾丸を素手で取り出す。


 めっちゃ痛いがこうした方が後々いいのだ。


 俺は剣を横薙ぎに振るい、黒煙を真っ二つに切り払った。奥には倒れているロボ子が見える。爆風で飛ばされたらしい。


 ロボ子は起き上がる。その身には傷一つついていないが、どこかそこ知れぬ怒りを感じた。無機物なのに、感情などあるのだろうか。


 《危険を感知。リミッター80%解除……成功しました》


 俺の呼吸が荒くなる。ロボ子はそれほどの威圧を放っていた。


 ロボ子が斧を一振り。この距離じゃ届かないが、俺の視界に銀色の風の刃が飛び込んできた。すかさず回避。薄皮一枚切っただけで済んだが、何故か切られた腕が痛む。


 見ると、紫色に変色していた。毒だ。


 しかし俺は状態異常無効を持っている。なんで毒が効いたのか、わからない。


 突如、ロボ子の姿が何重にも増えた。


 全て残像。ロボ子はそれこそ残像を残さないまでのスピードを出せるが、今回は俺の目を翻弄するためにわざと素早さを低くし移動していた。それでも目に追えない。俺を中心にして周回し始めたからだ。


 これだけ素早いと、大気感知もあてにならなかった。まず何故か使えないが、ロボ子が走り回るだけで風が発生しもうわけがわからなくなってくる。


 逆に混乱しそうだったので大気感知はきった。


 と、それまで俺の周りをぐるぐると回っていたロボ子の動きが異なったものになる。手を突き出し、一度に数百の雷球をぶっ放してきた。


 ()()()()()


 これは分身ではない。単に、ロボ子の身体能力で出せる一つの"技"なのだ。


 ロボ子が超高速に動き回り、かつその動きに合わせて今のような雷球を飛ばしてきたとしたらーー。


 全方位から、数百の魔法が降り注ぐことになる。


 逃げ場はない。上からも、足元からも、右からも左からも斜め上からも斜め下からも全部!


 雷球に埋め尽くされていた。


 終わりか?


 いや、違う。


 何か解決策があるはずだ。なにか、案を……。


 俺の頭の中に、とあるスキルが浮かんだ。


 そうか。


 あれなら、1発逆転のチャンスが到来するかもしれない。


 雷球は俺との距離を縮めていく。脳内パリピで作り出す、限られた時間の中で必死にスキルを発動させた。


 重要なのは早さ。


 ロボ子の魔法が俺に到達するか、俺が間に合うか。


 どうやら天は俺の味方してくれたらしい。


 スキルを発動させる。


 神力感知。


 これは元から発動していたが、あと一つ能力があるのを忘れていた。


 神の力を取り込む。


 あの時鑑定さんは確かにそう言ったはずだ。ならばーー。


 神力を取り込む。


 そう念じると、体の中に何かがたまっていくのが感じられた。それは俺の中で暴れ、外に出ようともがいている。陸地で飛び跳ねている魚のようだった。


 精密になった魔力コントロールで溜まったナニカを抑え込む。どうやら、魔力が通っているらしい。


 そして、雷球が俺の肌に触れようとした。瞬間、雷球が空中で塵となる。俺の体に届く前に雷球は消え、空気中に溶けていった。


 気づくと、俺の周りには光のオーラが漂っていた。それは形姿を変え、変化自在に色々なものへと変化している。俺は無意識のままに光の槍を作り出し、ロボ子へ向かって飛来させた。


 必中が働いたのか、残像を残していたロボ子に直撃する。空中で体勢を整えるロボ子だが、初めて焦りの表情が伺えた。ロボに表情があるのかどうかわからないけど、そんな気がしたのだ。


 確実に削っている。けれども、ロボ子だってそう簡単には倒れてくれない。


 必中の効果が切れ、俺の攻撃が当たらなくなった。それを機にロボ子の反撃が始まる。見えないはずなのに、体が自然と動いた。紙一重でロボ子の斧を躱していく。


 あれだけ見えなかった隙が何箇所も見つかる。俺の口元は緩んでいた。


 楽しい。


 強敵と戦い、まだ自分が強くなれるんだと思うと嬉しい。


 ロボ子が意表を突いた蹴りを飛ばしてくる。剣で難なくいなすと、さらには斬りかかった。


 鉄がぶつかる音。しかし、その体は確実に切れている。


 《災厄をもたらす強敵と判断。リミッター全解除……成功しました。無効化フィールドを作成。魔法全種開放。相手の能力をコピー……失敗しました。支配の権利を行使します》


 あれほど有頂天に達していた俺の力が下がっていく。同時に、不快感が俺を襲った。願ってもいないのに脳内パリピの効果が切れる。その他にも、使用不可になるスキルは多く出た。


 そして、最後に残ったスキルーー神力感知。


 もし俺からスキルがなくなったとしたら、完全に負ける。


 なら、やるべきことは一つだ。


 まずは逃げよう。


 ロボ子から奪った力を最後まで出し切り、空間を捻じ開ける。すると、空間の入り口ができた。これが無効の世界とつながったいたのならいいのだが。


 初めてなので不安しかない。


 斧を片手に追ってくるロボ子。


 俺はせめてもの目眩ましと地面を殴りつけ、砂煙を上げた。ロボ子が見えなくなる。


 砂煙を切り裂き、突き出しの形でロボ子が向かってくるが、狙いは数ミリずれた。お互いの視線が交差する。


 ロボ子がこちらを振り返る前に、俺は黒い空間の中に走って逃げた。背後から差し込む光が消える。入り口は完全に閉じたようだった。


 《……対象の逃亡を確認。マーキング……失敗しました。ご、ゴシュ人さマ……も、も、モ、申しシわケ御ザいまセンでした》


 壊れたようにそういう少女のロボは、石に腰をかけまた眠るように目を閉じた。


 次の獲物を待ちながら……。

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