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第157話 別れとけじめ

 宴が終わり、翌日早朝。シーファはプリンにご飯をあげてくると言い、ここにはいない。シロは勿論シーファについていったため、俺1人である。か、悲しくなんてないからね!


 俺たちはギルドの宿に泊めてもらっている。お金が集まったら報告してくれるらしいので、楽だ。


 すると、部屋の前に2人の人が立っているのを感知した。カゲマルとライラさんだな。


「入っていいぞ」


 俺は大きく壁の向こうに呼びかけた。2人は揃って魔法陣を使い、転移してくる。とは言っても壁と壁を挟んだ短距離だけど。


 ライラさんたちが入ってきて、数分が経った。


 なんか話せや!


 とは言えず。


 さらに数分。


 気まずい!


 とも言えず。


 っていうかシーファたち早く帰ってきてー。空気が重たいよー。


 え? この空気を作ったの元々は俺のせいだって? 知らんなぁ。


 と、ライラさんが口を開いた。漸くこの地獄の時間から抜けられる!


 とか思っていた時期が俺にもありました。


 ライラさんは思いとどまったのか、口を閉じてしまった。


 ああ……腹減ってきた。


 そうやって現実逃避をしている間に、覚悟を決めた者がいる。カゲマルだ。


「悟様。今日は、俺たちから話したいことがあってきた。時間を貰っていいか?」


 十分もらいすぎてる気がする。


 とか言えず。


 何も言えねぇ。


「ま、まあいいけど。昨日の話だろ?」

「そうだ。私たちはあれから話し合って、決めた」


 踏ん切りがついたのか、ライラさんがやっと喋ってくれた。


「やはり私たちは一緒に行動していきたいと思う」

「そうか」


 俺の素っ気ない態度に怒ることもなく、ライラさんは続ける。


「サトルに言われて気がついたことがあるんだと、こいつが言っててな。ほらーー」


 ライラさんが一歩下がり、代わりにカゲマルが近づいた。表情はネックウォーマーののようなものに隠されていてあまり分からないが、何処となく緊張しているかのように感じられる。


「昨晩、悟様から叱責されて俺は目が覚めた。これまで、他人の意見に任せて身を動かしていたことは事実だ。そして、それが間違いだということにも気がつかなかった。どれもこれも悟様が言ってくれなければ俺は一生あのままだった。本当に、ありがとう」


 カゲマルは深く頭を下げる。


「そういうのはいいから。もう、前の気持ちはわかった」


 前から仲間が俺たちの元を離れていってしまうことを考えていた。その時、俺はどうしたらいいのか必死に思考した。考えついた答えは、仲間の自由を優先することだった。


 ここでカゲマルが何を言おうと、俺は無理やりライラさんと送り出していたことだろう。


 カゲマルが俺の元にとどまらないと言ったことだけ進歩だ。


 俺は口元を緩める。


「カゲマル」

「……?」

「これは俺からの最後の命令だ」


 命令と聞いて、カゲマルはすぐに姿勢を正した。こういうところに忠実なんだよな。


「悟様呼ばわりはやめろ。これからの主人は、ライラさんだ」

「そ、それは……っ」


 俺を呼び捨てで呼んで、ライラさんに『様』を付けろと。俺はそういった意味を込め、言葉を放った。カゲマルは理解してくれたようだが、戸惑っている。


「出来ないのか? もう、俺のところを離れるんだろ?」

「けれども、悟様はいつでもどこでも俺の主人だ」


 カゲマルにとって、ライラさんを様付けするのは造作もないことだ。しかし、俺から『様』を外すことが出来ないのだろう。


「…………っ」


 魔人は考える。魔人の思考する姿は中々見られないものなんだけど、今はそんなことを気にしている場合ではない。


「俺が決めなければいけない……のか」


 信じる、と頷くライラさん。俺はあえて視線を合わさずに、ベッドへと腰をかけた。


 つーかそんなに悩むことじゃなくね?


 ま、まぁ最初の一歩としてはいい進歩か……な?


「……わかった。悟……。ライラ様」


 俺が笑顔になったことに気がついたのか、カゲマルはホッとため息をついているようだった。何かを心配していたらしい。俺は怒らないよ?


「それでいいんだ。じゃあ、俺たちとは別れだな」

「ああ。でも、また会えると思うけど」


 ライラさんとは出会ってあまり経ってないけど、何回もばったり会ってるしな。


「さて、そろそろ私たちは行くとするか」

「もう行くのか? 結構早い出発だな。シーファたちにもお別れを言ったほうがいいぞ?」


 そう言い、俺は遠回しにカゲマルを引きとめようとしているのに気がついた。心と行動が矛盾している。


 はは、やっぱり俺だって悲しいんじゃないか。


「そこまでやると俺まで悲しくなってくる。悟、に会っただけで十分だ」


 早めに慣れてほしいものだ。


 っていうか、カゲマルにもそんな感情があったんだな。ちょっと意外。


「では、また会おう」

「寂しくなるな」

「ふっ。また会えると言っているだろう」


 最後はカゲマル。


 彼らは、俺たちの前から姿を消した。


 そのあと。


 戻ってきたシーファたちにめちゃくちゃ怒られた。


「なんで引き止めてくれなかったんですか!? 私もお別れの挨拶をしたかったのに!」


 解せない! 何故じゃあ! これはカゲマルとライラさんのお願いだったんだよー!


 今度はきちんと言った。


 でも、聞いてくれなかった。


 何故じゃあぁぁ!




 それから半年が経った。


「うぇい!?」


 ブオンと空間が盛大に揺れ、何もない場所に黒い空間の入り口が現れる。俺はそれを見て、思わず大きな息を吐く。


「終わったぁ……」


 長かった。


 俺は魔物討伐の間を使ったり、寝る間を惜しんで指輪の研究をしていた。


 指輪をお忘れ? 仕方がないな。説明してやろう。


 ごめんなさい調子乗りました。


 この指輪は半年と少し前くらいに発見したものだ。シーファたちと洞窟の中に入ったあの日、俺とシーファにしかみえない道を見つけた。


 進んでみると、奥には別の空間に通じる入り口があったのだ。覗いてみると、そこは何もない真っ暗な部屋だった。


 部屋を見て、シーファは見覚えがあると呟いていた。そこで俺は悟る。


 死神と関係性がある、と。


 空間の入り口は消え、指輪に形を変えた。俺は一応拾いアイテムボックスに入れておいたが、それを半年前から研究しているのだ。


 空間感知は指輪に反応していた。だからこの指輪はあの時のような入り口を作ることができると判断し、今に至る。


 俺の目の前には違う空間に通じる入り口が。


 成功したのだ。


 ついに、死神ーーシーファとテズの謎が解けるかもしれない!

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