第147話 美しい!
魔人を撃退したので結果オーライ。俺も強くなったんだなぁ。
あ、冒険者さん大丈夫だったかな。
「無事か? って、やっぱり何処かで見たことがあるような……」
なーんか見覚えあるんだよね。何処だっけ……。
「おいおい。俺を忘れたってか? ユリガだよ。《銀の雷》の。まあ、こんな魔人に追いやられてる無様なところを見せちまったからそんな名前簡単に名乗れねえがな……」
自嘲気味にユリガは笑う。で、俺は思い出した。
「思い出した。あれだろ? 魔物退治の時1人で仕切ってたやつ」
「お前馬鹿にしてんじゃあねーだろうな? 本当に思い出してるのか?」
「ソンナワケナイジャナイデスカー。アハハハハハ」
睨まれたのでふざけるのはやめた。
「でも、貸し一つと言っていいんじゃないか? 俺が入らなければ完全に死んでたぞ」
「ぐぬぬ……。認めたくないがこればかりは事実だしな」
恨まれちゃった? まあ、いいや。
いやいや人との関係は大切にしていこう!? 何普通に流してるの俺!
とか1人漫才を脳内でやっているうちに、ユリガは立ち上がっていたようだ。彼は素直に頭を下げてくる。
「今回ばかしは本当に助かった。サトルの言う通り、貸し一つとさせていただく」
「おお! 気前が良くて助かるな」
「何か困ったことがあったら相談してくれ。と言っても、お前の方が強いから戦闘系だと足を引っ張りそうだがな……」
弱気な発言は聞き流し、俺たちは挨拶をして別れた。
貸しはあるかないかと言ったらあったほうがいい。俺は実際ユリガしか見てないけど他の仲間もいるわけだ。俺にしては頼もしいけどな。
つーか、強いって有名なパーティーがそんなこと言ってていいのかよ!?
うん、最終的にはこれだな。聞かなかったことにしよう。あ、最初に戻ったのか。そんなことどうでもいい。
で、騒動感知を発動させる。お、いたいた。
ん? オークに囲まれてるじゃん。
数は……20!? まだそんなに残ってたのか!
対して冒険者の数は2人。装備はかなりいい品質だが、オークは1匹B−のランクだ。それが20体だから、いくら2人でも倒せないと思う。
あ、俺たちは例外で。自慢じゃないけど俺1人であれ全部殺せる気がするし。
騒動感知で様子を見ながら急いで移動するか。
シーファにそのことを伝えようとした時、俺の動きが止まった。
敵襲ではない。騒動感知で見えた光景に唖然としたのだ。
時はさかのぼる。
2人の冒険者は双方長剣を構えており、背中合わせにして敵と対峙していた。
まず、5匹同時に周囲から攻撃を仕掛けるオーク。そいつらは弓を持っていたため、遠くからの遠距離攻撃で囲われた冒険者を狙った。
逃げられない。
俺は悟る。
全方位からの攻撃で、さらにオークは逃げ道を確保させないために大きく手を広げて迫っていた。矢に当たらないように、かがみながらだ。
片手には斧を持っていて、もし冒険者たちが矢をかがんで避けた時、即座に追撃できる体制となっていた。体勢を低くした状態からでは、避けることはできないだろう。
因みに俺なら変化して飛んで逃げる。んで空からの一方的な攻撃。最高だ。ミストバードに変化するから矢の攻撃は効かない。ふふ、卑怯なんて言葉は俺の頭の辞書にはないのだよ。
おっと、話が逸れてしまった。まあ脳内パリピのおかげで今の思考は短縮され、なかったことになってるけどさ。
それで、2人の冒険者はどんな行動をとったかというと……。
かがんだ……ではなく。矢を受けて死んだ……でもなく。
まるで生きているかのような、滑らかな剣筋で矢の軌道を小さくずらしたのだ。それも、必要最小限の動きで、かつ素早く。素人だと、何もしていないように見えただろう。
矢は冒険者たちのギリギリをかすめていき、かがんでいたオークの眉間に突き刺さった。全弾命中。
全ての矢の軌道を逸らした冒険者たちだが、それでも油断の一欠片も見せなかった。うう、俺なら浮かれてるぞ。あれが当たり前のことなのか?
「どうしましたか?」
タイミング良く、シーファが話しかけてくる。俺はその言葉で我に帰ることができた。
「シーファ、少しついてきてくれるか?」
「え? ……分かりました」
察しがいい。こちらも助かるものだ。
と、いう冒険者たちの行動で俺は唖然としていたのだ。そして、今は彼方の状況を確認しながら森林を走っている。未だオークと睨み合っているので、動き出す気配はなかった。
何故そこに向かってるかって?
そんなの直接目で見たいからに決まってるじゃないか!
あと、鑑定もしてみたい。でも鑑定遮断とか持ってたら嫌だし、本人に了承をもらったらだけどね。
思うんだが、冒険者たちのあの剣術は俺よりも上なんだよな。
ステータス的には勝ってると思う。自惚れじゃないからね?
だけど、剣術なら向こうのほうが圧倒的に上。俺には変化があるから真っ向勝負で勝てるが、ユニークスキルの力を借りず、両方のステータスを統一できるとしたらタイマン張って負ける。
いや、片方には勝てるな。
俺は悟る。
片方の動きはまだぎこちなかったのだ。上級冒険者にも真似できない動きだけどさ。比べちゃうくらいもう片方が凄いんだって。
完璧な剣筋に、美しさを乗せている。その動きは優雅で、柔らかで、相手を翻弄する力を持っていた。俺にはあんなことできない。
まあ異世界人だしな。と、いう言い訳をついてみる。だって異世界人なんだもん! もともとここで育ってるわけじゃないもん!
とか思ってみる。
虚しくなってきたので、やめた。
あ、もうそろそろで着くな。あの剣を間近で見たい! 研究して、俺もあんな素敵に剣を振りたい!
とかいう夢を膨らませながら、走る。




