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第144話 信頼

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さもないと貴方の家のカーテンを全部昆布に変え((殴

「お前は、誰だ」


 サトルは畏怖の念が込められた視線をこちらへよこしてくる。何度も後ろを振り返った。しかし、何もいないことを確認すると急速に心の中の不安は膨れ上がる。


 サトルは私のことを怖がっているのか。


 私が何かしたのか。


 もしかしたら、気がつかないうちに彼を傷つけてしまったのか。


 それともーー。


 良からぬ思考が次々と浮かび上がり、消えていった。最終的に残ったのは、サトルが私を怖がっているということ。こんな簡単な答えにたどり着くのに1分ほどかかってしまった。


「ど、どうして私を怖がるのですか? 私が何かしましたか?」

「何かしたって……あの技はなんだ!? 俺に隠してことがあったのか? それとも、何なんだ?」

 

 サトルが質問攻めで私を追い詰めに来る。だが、私にはその『技』というものがわからない。


「わかりません……! サトルが何を言っているのか、何故私にこう突っかかってくるのか!」

「騙していたのか? 俺たちを、騙していたのか!?」

「だから、わからないんです!」

「死神なんだろ?」


 私の必死の講義は、その言葉によって止まった。


「死……神? 何で私が死神なんですか? テズさんと間違っているのでは?」

「死神は2人いた」


 サトルの言葉に、目を見開く。衝撃だった。まさか、死神が2人いたなんて。けれども、それとこれとでは話が違う気がする。


「何故今その話をするんですか? まさか、その死神が私だとでも言うのですか?」

「さっきっからそう言ってるだろ! シーファは何か隠してる! 俺たちに教えてくれよ……!」


 そんなサトルの肩に触れる者がいた。ミィトだ。彼女はこんな状況でも冷静沈着な表情をしている。


「そこまで言う必要はねーだろ。一度正気になってみろ。シーファの顔は嘘をついているように見えねえ。それなのに、お前は追い詰める気なのか?」


 サトルは目を開き、私を見つめた。


「確かに……な。だが、シーファがこれまでずっとそれを隠してきたとしたら? それだけの演技の才能があるということになる」


 そこまで言って、サトルは何か思い出したような顔をした。


「俺の勘が言っているが、シーファは敵じゃねえ。その代わりにほら、敵意も感じねえだろ?」

「……そうだな。じゃぁ、最後の確認をしよう」


 サトルは此方へ歩み寄ってくる。目は優しいが、手は剣に触れていた。サトルがその気になれば私などすぐに切られてしまうだろう。


「お前は、誰なんだ?」


 最初の質問に戻る。私は思考をフル活用し出た答えをありのままに、声に出した。


「私はサトルの最初の仲間として、最強の魔法使いになる女性です」


 そう言って、微笑む。


「最初に約束したじゃないですか。2人で世界最強を目指すと」


 私は隅で横たわっている、シロやカゲマル、プリンを流し見る。一周して、視線はサトルへと戻った。


「今は仲間が増えました。勿論、別れだってあります。ですけれど、サトルと交わした固い約束は決して破れることはありません」


 息を継ぐ。今までのことを振り返り、温かいものが頬を伝ったような気がした。


「サトル」

「…………」

「貴方のことが好きって、言ったじゃないですか」


 苦笑まじりに言う。サトルの眉がピクリと動いた。きっと彼のことだ。あの言葉は嘘だったんだと心の中で決めつけていたのだろう。まったく、これだから鈍感男は……。


「私は今でもサトルのことが好きですよ。こう、堂々と言えるほど大好きなのです」

「…………そうか」


 ポツリとそれだけ言い残し、サトルは背を向ける。剣に添えてあった手は……ゆっくりと離れていった。


 サトルは一度だけ、此方を振り向く。その顔は、いつものサトルだった。


「行くぞ、シーファ。世界最強を目指すんだろ?」

「はい……っ!」


 私とサトルは笑いあった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 シーファが無実だと知った俺の心は何故だか安らいで行った。本当はシーファのことが信じられなくなったわけではないのだ。ただ、彼女が死神と知った時に『恐怖』という者に体が支配された。


 前みたいに付与されたわけではない。俺の本能の叫びだった。


 もう、シーファを疑わない。


 あの時はどうかしていた。いつもなら、彼女の考えていることなんかすぐわかるのに。


 彼女は俺たちの仲間だ。


 だから、今までも、そしてこれからも。


 優しく接していくんだ。


 チノ大草原から出た俺たちは、真っ直ぐラギ森林へと向かった。まだ魔物は残っている。そいつらを全滅させなければ今回の魔物退治は終わらない。


 結局、和樹はどこを探しても見つからなかった。シーファの話によると、記憶が一切ないらしい。なんかあったんだなぁ。


 あと、何故かミライが外の空気を吸いたいという理由で横を歩いていた。なーんか嘘ついてるような……。


 と、そんなことを考えている俺の頭の中にミライの声が。


『聞こえるカ』


 あ、ほら。俺に用があったみたいね。聞こえるよー。


『これはお前の脳にしか聞こえていなイ。一度しか言わないかラ、よく聞ケ』


 オッケーでーす。


 そんなことで、ミライはシーファの身に何が起こったのか、全て話してくれた。やっぱりシーファは死神だったらしい。予想はしていたが、驚くものは驚くのだ。


『……以上ダ。何か言うことはないカ?』


 うん、ある。


 内容とは全然無関係だけど、一つ聞きたいことが。


 ずばり! 何故俺にだけそのことを話したか、だ。


 普通にみんなに話せばいいのに、俺だけってなんか変じゃない? ここはギルマスのミィトにも話しておいた方がいいんじゃ……。とか思った。


『お前しか他に信用するできるやつがいなイ。それだけの理由ダ』


 ついに俺の時代が来た。うっははーい、うっははーい。


 よし、冷静になろう。


 っていうことは、ミライが俺を信用してくれているってこと? いや、そう言ってるのか。やっとだぁ、やっとミライが俺を認めてくれたぁ。


『勘違いすんナ。この中で一番信用できるって意味ダ』


 とか言ってデレちゃって。ミライちゃんツンデレかな?


『消し飛ばすゾ』


 すいませんでした。


 そうだ、今のことシーファには伝えたの?


『お前なァ……チッ。あの小娘には伝えてなイ。自暴自棄になったらオレもお前も困るだロ』


 確かにな。自分が死神だと知って混乱しないやつがいないと思う。


 例えれば、20才まで生きていて初めて自分が人造人間だったって知ったみたいな?


 やっぱ語彙力がない人が例えても誰もわからないか。


 あ、ミライが消えてく。もう伝えることもないのかな?


 その後特に魔物に襲われることもなく、俺たちはラギ森林に着いた。

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