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第143話 過去

 シーファが蔓で殴る殴る。


 これだけ聞いてもわからない人は多いと思うので、説明しよう。


 シーファが蔓を操って、和樹をボコしているのだ!


 うむ、流石俺。説明がざっくりしすぎだ。


 今はシーファが頑張ってくれているので、俺とミィトは一度戦闘から離脱していた。ミィトは十分戦えると思うけど、俺たちが巻き添えにされないように見張っているらしい。時たま和樹に魔法で攻撃してるけど。


 ま、和樹もどんな魔道具を使うかわからないし油断は禁物ってことだ。そういうこと。


 それにしても……。


 さっき見えた光景はなんだったのだろう?


 蜘蛛の仮面を被った謎の人物。服装は黒かったような……? いや、赤かも。もしかしたらどっちも混合した赤黒い色だったかな。そんな色のローブを着ていた。


 背中には大きな杖。それも、鎌の形をしていた。


 ……まるで死神みたいじゃないか。


 俺は考え込む。


 あの植物を操る力も何なのか怪しい。いや、もしかしたらーー。


 彼女は、シーファは……。


 突然、轟音と共に空が割れた。


「新たな敵か!?」


 ミィトが身構える。


 空に出来た亀裂から出てきたのは、漆黒の鎖だった。鎖は鋭い速さでとある人に襲いかかる。


「この技は……! お前、まさかっ!?」


 和樹は事の深刻さに気がついたようだが、遅かった。


 その体に鎖が巻きついていく。入れ替わるように蔓が離れ、さらに強い力で締め上げられる。


 和樹とシーファの姿が鎖に覆われ見えなくなった。俺は駆け出そうとしたが、足が思うように動かない。転がった衝撃で骨をやってしまったらしい。


「動くんじゃねえ! ここは俺がーー」


 ミィトが一歩前に踏み出した瞬間、またあの光景が映し出された。


 ミィトがいた場所には死神のテズとあの蜘蛛の仮面を被った何者かが。そして、シーファと和樹の位置には……。


 見覚えのある人物ーー和樹がいた。


 和樹は深い傷を負っている。しかし、笑顔を貼り付けたままだった。いかにも和樹らしいことだ。


 空は燃えるように赤い。周りには人の死体が山積みになって葬り去られている。まるで、その世の終わりを映し出しているかのようだった。


 幻覚を見せられているんじゃないか?


 そう思い、何度も瞬きをしたが今回ばかりはその光景が消えることはない。


 蜘蛛の仮面が和樹に歩み寄り、何かを話す。そして、途端に向きを変えテズを睨みつけた。


 空が割れ、黒々とした鎖が姿をあらわす。裏切ったのか?


 それに、これは……シーファが使っていた魔法と同じだ。蜘蛛の仮面は、シーファと同一人物?


 いや、そんなわけない。この魔法を使える人だってそこらじゅうにいるはずだ。きっと、ミィトなら知っているはず。


 鎖は残像を残し、次の瞬間にはテズに巻きついていた。テズはもがくが、鎖が獲物を簡単に逃すことはない。


 そこに、今までで見たこともないほどの大きさの龍が頭上をかすめていった。風は感じないが、迫力は抜群だ。


 龍は旋回し、テズの元へと一直線に飛んでいく。鎖で動けないテズの抵抗も虚しく、その大口を開け、パクリと。


 テズを飲み込んだ。


 和樹が笑う。


 蜘蛛は……仮面のせいで表情は見えないが、きっと笑っているのだろう。


 その時。


 龍の体がバラバラに弾け飛んだ。


 何が起こったのかわからず、唖然とする和樹。


 地面に降り立ったのは、テズだった。だが、既に満身創痍の状態で立っているのがやっとというところだ。


 テズが右手を振り上げる。光が漏れ、自らの体を包み込んだ。


 和樹たちは焦る。魔法を打つが、時既に遅し。テズの姿は消えていた。


 肩を落とす、和樹と蜘蛛。


 突如空中に1000を超える魔道具が現れた。それは自我を持つかのように、和樹のアイテムボックスへと飛び込んでいく。それを見て、和樹は邪悪な笑みを浮かべた。


 和樹の口が動いた。俺はその一つ一つを解析していく。


 ーーに、が、し、ちゃっ、た、ね。


 逃しちゃったね。


 テズを逃したことを悔やんでいるのだろう。


 ーーさ、あ、い、こ、う、か。


 さあいこうか。


 ーーし、ー、ふぁ、ちゃ、ん。


 シーファちゃん。

少し区切りをつけたかったので短めです。もう一話は今日の夜8時に投稿します。

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