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第135話 立場関係

 鑑定さんが逆探知をしている間に、俺は和樹と剣を交える。火花が散った。力で勝負すると押し負けてしまうので、流しながら相手の隙を窺っている。


「くっ……この短期間で何故、ここまで力を手に入れられるっ!?」


 和樹が横薙ぎに、剣を大きく振るった。俺は身をかがめ、彼の懐の中に入る。この状態だとうまく剣を触れないため、柄で腹をついた。


 っていうかさっきも同じことやったな。と、いうことは……。


 距離をとり、和樹の表情をうかがう。案の定、怒りに顔を歪めていた。同じ手に引っかかったことが気にくわないのだろう。


 ま、まあいいや。


 挑発ってことで、相手の冷静さをなくしたんだ。これが、俺の戦略的行動さ。うんうん。


 ステータス的には和樹が全然強いし、こうやった方が普通にいいと思うんだよね。ぶっちゃけるとさっきのはマグレだ。え? わかってた? またまたー。


 和樹が頭上に何かを投げた。俺の警戒が強くなる。


 黒い球体だった。それは膨張し、黒い液体を辺りに撒き散らす。和樹はウォールバリアで自身の身を包んでいた。


 警戒してはいたが、反応が一泊遅れてしまう。視界が潰されてしまった。隣で、プリンの苦しむ声が聞こえる。彼女も被害にあってしまったらしい。


 だが、これはチャンスだ!


 風圧遮断で感知ができないようにする。視界が潰れた中で大気感知を頼りに走り、和樹のウォールバリアの前まで来た。そこに、全力で剣を突き刺す。固い。けれど、突き抜けないほどではない!


 剣がウォールバリアを貫通した。確かな手ごたえ。


「……!」


 ウォールバリアの中で熱い空気が渦巻くのがわかった。俺はこれを知っている。


 爆発、する!


「プリン、離ーー」


 声が届く前に、俺は吹き飛ばされた。喉が熱で痛む。息ができない。爆風から逃れるため、俺は火球を目の前で爆発させた。飛ばされる勢いで、爆発から逃れる。危なかった。大気感知がなければ気がつけずに大ダメージを負っていた。


「ゴオォォォ!」


 プリンは翼をはためかせ、爆風を押し返していた。見たところ、目立った外傷はない。


「妙な嫌がらせしてくれんな……!」


 和樹がガラス板のようなものに乗り、浮遊していた。ウォールバリアの中からはとっくに脱出していたらしい。


「僕も伊達に1万年を生きてるわけではないさ。こういう戦闘経験は、君にはないみたいだね」


 ニヤリと和樹は笑う。勝利を感じ始め、怒りが収まってきたらしい。不味いな。


「寂しがりやはコミュ力が無さ過ぎて人の心を読めな……らしいな。俺にはまだ隠し玉がある……もしれないんだぞ?」


 喉が痛くて掠れるんですけど。


「へぇ、強がりを。君がステータスを偽造しているのはわかってるけど、本当に隠し玉なんかあるのかなぁ」


 一応、あるはある。


 変化呪。シーファから使うなと釘を刺されているが、使うときは使うつもりだ。そこまで追い詰められるかはわからないけどね。


 これは本当の最終手段として、俺には普通の変化があるし。これを駆使して戦っていきたい。少し持ちこたえれば、和樹もどきを倒したシーファたちがこっちに参戦してくれるかもしれないし。


 ううーん! 完璧なプランだ。


 関係ないけどさっき喋ったので割とガチで喉が痛い。あがが。


「あーあ。ステータス偽造を解いてくれたらなぁ」


 解くわけないでしょう。


「そうしてくれたら見逃してもいいんだよ?」


 んな口車には乗るかっての。


「ねえ。なんとか言ったらどうなの?」


 喋れないんだって!


「や……ゲホッゲホッ」


 ごめんもう黙る。


 やだって言おうとしたんだけど。


「ふぅん。黙秘か……。じゃぁ、最後のチャンスをあげる」


 和樹はにっこりと笑った。お世辞にも爽やかとは言えないが。


「僕の手下になる気はある?」


 声が出せないんじぇい。うがが。


 そんな俺の姿を見ていたプリンが、鬼のような形相をした。


 〈何を血迷っているの!? 私も付き合いはあまりないけど、これだけは言える。あんな奴の手下なんて、絶対ならないほうがいいわ!〉


 いつまでも答えない俺が、和樹の手下になるかどうか迷っていると勘違いしてしまったらしい。俺は必死に首を横に振り、誤解を解いた。


 あ。


 首を振るという手段があったか。


 くそう。中々思いつかなかったぞ。こんな考え誰も思いつくわけないだろ。


 と、いうことで和樹に向かって首で気持ちを表した。勿論横に振ったぞ!


「そっか。……じゃ、消えてもらうとするね」


 和樹の姿が消えた。漸く確認できた頃には、俺の眼の前まで移動している。一瞬の瞬きの間を利用してここまで接近しているのだ。だが、それは俺たちに通用しない。


「ゴオォッ!」


 和樹に迫る巨大な爪。そのまま突っ込むわけにもいかず、舌打ちをしながら和樹は後退した。


 1人のタイミングに合わせても、もう1匹ーーもう1体がいる。俺とプリンが同士にかつ、和樹が望んだ瞬間に瞬きをするなんて奇跡が起こらない限りあり得ない。


 でもちょっとだけあり得るかも...。ええい! 気にしない、気にしない!


 とか考えているうちに、プリンが動いた。


 和樹が足をつけている地面が柔らかくなる。土魔法を使ったようだ。


 プリンが作った隙を逃すわけにはいかない。


 俺は和樹の元に走る。だが、和樹はまた空へ飛ぶ魔道具を使い俺の攻撃から逃れてしまった。


 MPの残量はまだある。なら、少し贅沢をしてもいいだろう。


 そう考え、俺は右手を突き出した。和樹は小首を傾げる。けれど、それだけで逃げようとはしない。俺の魔法攻撃を舐めているのだろう。


 なら、確実に当てるまでだ。


「地獄の業火!」


 …………。


 ん?


 あれ。


 何も出ないんだけど。


 と、考えていたのもつかの間。俺はあることに気がついた。


 和樹の真下に巨大な魔法陣が描かれている。しかも、和樹はそのことに気がついていない。


 これは……、また……。


 よし、なんとかして誤魔化すんだ!


「くそ……!」


 俺は不発だったかのように見せるため、そう呟いた。和樹が俺のことを嘲笑する。


「ぷっ、ははははは! 魔法が不発とか、これ以上ないくらいダサいじゃん! あははははは!」


 彼は俺のことを煽るのに気がいっぱいいっぱいで、まだ気づかれていない。逆に気がつかない方が凄いんじゃないか?


 魔法陣が淡く光を放ち始める。


 流石にこれはマズイ。


「あ、俺の倒したワイバーンがゾンビ化して蘇ってるぞぉ!」


 同時に明後日の方向へ指を指す。こんな子供騙しの技だが、和樹は見事に引っかかってくれた。俺が指を指した方向を見る。これにはちょっと吹き出してしまった。


 そして、地獄の業火が発動した。


 和樹を飲み込む巨大な炎。聖柱に似ているが、なにせ勢力が桁違い。和樹の持っていた双剣が一瞬で溶けて無くなった。それも炎が届く前に、だ。


 自身に危険が迫っていると知った頃にはもう遅い。和樹は炎に飲み込まれてしまった。


 激しい轟音があたりに響く。熱で少し火傷をしてしまったため、距離を取っておいた。


 轟音の中で誰かの声が聞こえた。それもはっきりと。この音の中で言葉が聞こえるとしたら……。


『洗脳をかけた人物を特定いたました』


 おお、仕事が早いね!


 で、ずばり誰?


『魔王です』


 え?


 どして?


 和樹は魔王を手下にしているはずじゃなかったのか!?

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