表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
132/259

第128話 復活

「…………!」


 腕の中で何かが動く感覚があった。俺はハッとなり、視線を下に落とす。弱々しくなったシロがうっすらと目を開けていた。


「シロッ! 大丈夫か? 俺のことがわかるか?」

「…………くぅん」


 シロはそう、返してくれた。


 ーーシロは……ぶ。……心……て。


 念話が途切れ途切れに飛んでくる。大丈夫と言いたかったのだろう。だが、今の状況からしてその言葉は嘘と感じられた。もう少しすれば完全に復活すると思うが、シロも腹を刺されたショックが抜け切れてないのだ。


「無理しなくていいぞ」


 シロは俺の胸の中から地面に向けて足を伸ばしていた。シロの具合を考えると、立たせるのは危険だ。俺はとっさの判断でシロを地面から離す。


 ーーどう、して。


「無理するなって言ったろ。体力が完全復活するまで安静にしていてくれ」


 ーーでもみんなを戦わせてシロだけが戦わないのは納得できない。


「お前は十分戦ってくれた。俺のこともかばって、致命傷を負った。でも、奇跡的に助かったんだ。だから、その奇跡を無駄にしないでくれ。そういうことだ。今は休め」

「わぅん……」


 シロの目線の先には、必死でハカイと戦闘を繰り広げているシーファたちの姿があった。数ではこちらの方が勝っているが、実力差が歴然としている。シーファの魔法攻撃を余裕で躱し、より強力な魔法を何発も撃っていた。ミィトの素早い接近戦も適当にあしらうだけでハカイが優勢になってしまうという現状だ。


「俺はMPがない。シロも、ここで一緒に観戦していよう」


 回復したらシロは俺の言うことを聞かず向こうへ加勢してしまうかもしれない。その時はその時だ。俺も何かしら考えないと。


 魔法が使えない俺には……剣しかないし。


 剣しかない……剣しか……あ。


 ギルドカードがあった。


 ここで出てくるか、ギルドカード!


 ーー仲間がピンチなのに、何を考えてるの。もう。


 あ、ごめん。さらっと念話できてたけど無視するわ。


 ギルドカードを投げればハカイを傷つけられるかも。さっきハカイの手に刺さった時点で相手に効くことは確かだ。あとはどう当てるかだな。


 俺は野球選手のように、ギルドカードを投げる態勢をつくる。


 どう当てるかだって? んなもん気合と根性じゃあぁぁ!


 腕を振りかぶった瞬間、音速を超えたギルドカードはハカイの背に迫った。ギリギリでそれに気がついたハカイは、尾でそれをガードする。ふふ、無駄だな。


 尾を真っ二つにし、それでも勢いが止まないギルドカードは結局背中に刺さった。高い防御力と減速していたせいでそこまで傷をつけられなかったが、尾にしてはバッチグーだ。ギルドカードって怖。誰もが持ってる身近な凶器やん。


「グ、グォォ!?」


 困惑の叫び声をハカイが出す。まあそりゃそうなるわな。俺だってフォークで攻撃されて腕がなくなったら絶対混乱する自信がある。それと同じだ。見た目はちくっと痛むくらいだけど当たったらやば味だった、みたいな。


「サトル、ナイスです!」


 シーファが親指を立てて俺に微笑んだ。取り敢えず俺を同じポーズで笑みを返しておく。


「ギルドガードでこいつの尾を切断……だと?」


 そして、珍しくミィトは混乱していた。この人格でこういうのは見たことがなかった。貴重な一面だ。


 俺も驚いてるけど。


 だって、ギルドカードで尾を切断だよ!?


 あ、ミィトと台詞(セリフ)かぶってた。まあ、いいや。


「わんっ!」


 シロが元気そうに鳴く。あ、もう行くのね。止めはしないけど死なない感じでよろしくお願いします。


 ーー当たり前! みんなが集まったんだから死ぬわけない!


 フラグにしか聞こえないんだけど……。


 しっかりとフラグを立ててシロはハカイの方へ走っていく。


「サトル、これを使ってください」


 そう言ってシーファが取り出したのは残り一本しかない(ポーション)だった。


「なんで? これはシーファたちに使って欲しいんだが……」

「MPもなくて何もできない人に言われたくありません。と、いうか暇ですよね」

「……はい」


 ぐっ。俺の心の中よくわかってるじゃないか。っていうか言い返せない!


「じゃあ、これを渡します」


 シーファが薬を投げる。俺は慌てながらもなんとか薬をキャッチした。普通に危ないことするな。


 薬を飲む。飲み終わると同時に、体の中から何かが湧き上がってくる感覚がした。傷が塞がっていく。MPも急速に回復していった。1つだけ言わせてもらえるとすれば、苦い。不味い。あとなんか辛い。


 これかけても良かったんだけど、かけたほうが良かったかな?


 ま、過ぎたことだししょうがないよね。


 俺は剣を抜き、シーファの横に並ぶ。復帰だぜぃ!


「飲んでくれて嬉しいです」


 彼女は援護射撃の手を緩めずに、そう伝えてくる。


「でも、もう薬がない。回復手段がないんだぞ?」


 ヒールをしてくれても、シーファのMPが減るだけだ。魔法特化のシーファの手が減るのは惜しいので、ヒールはさせたくない。


「なら、ハカイを倒せばいい話のことです」

「あぁ、その手があったか」


 ハカイを倒せばレベルが上がる。レベルが上がれば、ステータスが上がりボーナスで体力と魔力が全回復するから、シーファはその方法にかけたのだろう。


 ハカイを倒せればの話だが。


「よし。なら、俺もガチでいく」


 前からガチだけど。こう言ったほうがシーファを安心させられるし。


 シーファは真剣な表情で頷く。


「サトル……さっきみたいな変な感じにはならないでくださいね?」

「? 何か俺変だったのか?」

「はい。一言で表すと、邪悪な感じでした……」


 変化呪を使いますか?


 そう質問された時のことだと思う。確かに、俺はその瞬間自我を忘れていた。こんなことをしてはいけないとわかっていたのに、危うく使用するところだった。


 あの声は鑑定さんの声でもなかった。なら、なんなのだろう?


 いくら考えても無駄なので思考を止めた。ただ、ひとつ。


「気をつける」


 そう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ