第121話 仲間を置いてくのはダメ。ゼッタイ。
お、俺なんかやらかしたかな? 龍を倒して……え? これ倒しちゃいけなかったやつ? でもみんなは普通に龍に襲いかかっていったよね。なんでだろ?
「瞬殺でしたね。お疲れ様です」
シーファが降りてくる。未だに目をパチクリしている冒険者を見て、彼女も「えっ?」という顔で固まった。
「な、なんかしましたっけ……?」
やっぱりそう思うのね。
「おっ、お前たち……っ!」
冒険者の1人が呟く。うっ、何を言われるんだ?
「めっちゃ強えじゃねえか!」
は?
「ミィト様と同じくらい強いんじゃないか? もうギルマスになってもいいぐらいだ」
「シーファちゃんの魔法もすごいな。同時に10つ出すなんてBランクの俺にもできないぜ」
「サトルくんの動きも見えなかった! ブレスを剣で弾くこと自体がすごすぎるっ!」
マジ? そういう沈黙だったんだ。ま、嬉しいけど。
「あ、ありがとな」
一応礼は返しておいた。
「でもな……これだけの数がいながら和樹の居場所を知ってるやつは1人もいないんだろ? あいつ、居場所は伝えずに消えていったし、てっきり目立つ場所にいるかと思ったんだが……。どこにもいないじゃないか。決着をつけるとか言っておきながら姿を現さないってどういうことだよ……はぁ」
おっといけない。愚痴が出てしまった。
ああ、早く大将こないかなー。そいつ倒せば魔物の大群を処理するのも楽になるし。
軽く倒せる前提で言ってるけど殺せるかどうかわからないし。和樹も魔道具やら持ってるし、ユニークスキル、不老不死以外にも何か持ってそうだ。不老不死って年をとらないだけのスキルだしさ。戦闘向けのユニークスキル持ってなきゃなんかおかしい気がするんだよなぁ。
「まあ、いいや。お前たち、怪しい人を見つけたらすぐに報告してくれ。そいつはもしかしたら俺よりも強いかもしれない。だから、勝手に突っ込んで行って欲しくないんだ。どれもこれも、仲間を思っている行動と考えてくれれば助かる」
俺はそう言い、シーファに声をかけた。
「和樹が見つかるまで魔物退治を続行するぞ。シーファは上から援護してくれ。それと、和樹らしき人物がいたら俺に言ってくれないか? いってる内容は殆どあの冒険者たちに言ったものと同じだが」
「はい。全然大丈夫ですよ。絶対見つけてやりますので」
シーファの意気込みはバッチリだ。期待しておこう。
「じゃ、あとはよろしく頼む」
冒険者たちにそう言い、俺は部位変化で翼を広げた。
そして、大空へと飛び立っていった。
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…………。
なあなあ、俺カッコよかった!?
すごいかっこいい去り方しなかったかしら。
うん、やめよう。すごい可哀想な奴にはなりたくない。え? もうなってるって? ハッハッハッ! ……確かに。
本当にやめよう。
俺は少し離れたところで着地する。空ではシーファが円を描きながら飛んでいた。
俺はずっと翼を出し続けてたらMPを消費するし、こっちのほうがいいからな。
と、いうことで翼を消す。
でね、俺が降りたところって……。
魔物の群れの真ん中なんだぁ! きゃあ、怖い!
「グルルルルルル…………!」
赤い瞳が俺を睨みつける。ここから見るとシーファの存在には気がついていなさそうだ。
で、こいつらの名前は確かグリーンカンガルーだった気がする。体の色は名の通り緑色で、見た目はそのまんまカンガルーだ。目立つところといえば赤く光る目かな。特長はこれくらいだ。
「火刃」
詠唱なしに1匹へと火刃を飛ばす。そいつは反応すらも出来ずに体を真っ二つにされた。これはシーファの手を借りる必要すらないな。俺だけでチャチャっと片付けますか。
とか思ってたけど上からシーファの魔法が飛んできた。
まあ、いいや。あって困るものでもないし。
シーファの数十の援護射撃は俺の周りにいるグリーンカンガルーを全て断ち切った。死角からの攻撃に気がつけなかったようだ。抵抗なく全てを切り刻まれていく。
シーファさん本当にすいません上から目線で本当にすいません謝りますから許してください。
敵がいないなった。
ショボン。
『グリーンカンガルーを倒しました。経験値498獲得。グリーンカンガルーに変化することが可能になりました』
レベルは上がらなかったか。相手がショボかったからかな。とにかくシーファナイスだ。うん。
それにしても、和樹どこにいるんだろうなぁ。
俺は走りながらそう考える。横を通り過ぎざまに魔物を切りつけておいた。刃は抵抗なく魔物の肌にするりと入り込み、あたりに血を撒き散らしていく。俺の頭に経験値取得の通知が響いた。よしよし。順調だ。
出来るだけ和樹と剣を交える時までにレベルを上げていきたい。後々たった1レベの変動が役に立ってくることがあるかもしれない。いや、きっとある。
「にしても、魔物の数が少なくなってきたな……」
魔物の討伐部位を剥ぎ取り、アイテムボックスの中に投げ入れる。
「わんっ!」
「お、シロ。それにプリンもいるじゃないか」
シロは雷獣化して移動してきたみたいで、体を子犬の状態に戻してから一声鳴いた。俺は足を止める。プリンはその背中に乗ってきたようだった。
ーー酷い。なんで置いてくの。
「それは……ね? ……すいませんでした」
ーーどうせカッコよく去ったとかそんなこと考えながら飛んだんでしょ? シロはお見通しだよ。
ぐぐっ。
ーー仲間を置いていくなんてカッコよくもないよ!
ぐぶし。
「も、もう言わないで! 俺のメンタルがっ! 謝るから!」
ーー最初からそう言ってくれればいいの。
なかなか知恵が働くようになったな、シロよ。
俺は素直に謝り、シロとプリンを引き連れて走り出した。




