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第117話 グーチャは龍の頭を出す

 そろそろ剣も買い替えかぁ。


 もう剣折れる前提で言ってるけど。でもこれ魔物でしか本来の力を発揮できないから俺が持ってても意味が……お。


 俺、魔物に変化できたよね? それならこの剣のオーラも使えるんじゃ……!


 希望が出てきた。剣と共に折れかけていた俺の心が修復されていく。ま、グーチャは俺を敵だと認識しているみたいだし変化することは免れないだろう。逃げても絶対追ってくる。これは確信。


 ステータスは妨害で見れないし。みんなステータス妨害持ちすぎじゃね? なんで俺持ってないの?


 グーチャの腕が2つに戻る。何故4つあったのか疑問に思っていたが、元々の腕から分裂して増えたらしい。分裂しても腕の大きさは変わらないしなんといっても出てくる瞬間がえぐい。ギチギチと肉の擦れる音を出して血を吹き出しながら2つに分かれる。


 ヒェ〜。


 そして、戻るときは落ちた血が宙に浮かび、腕に戻って再生していく。うーん、ぐろいとえぐい以外いうことがない。現状、シーファが小刻みに震えてるし。見た目も肉塊だしな。


 次の攻撃が来る前にさっさと変化しとこ。と、その前に。


「シーファ、いつでも空へ行けるように翼を出しとけ」

「ーー!? でも、人目が……」


 この周りに人はいない。だが、空へ飛べば注目を集めるだろう。ラギ森林の中にいる人には木が邪魔で見えないはずだが、まだ草原に残っている冒険者たちからは丸見えだ。でも、命に比べればどうってことない。


「……っ、わかりました。ですが、私はサトルを置いて逃げたりなんかしませんよ!」


 シーファは羽織っていたローブを脱ぎ捨てた。もちろん下に服は着ているぞ。変な妄想したやついないよな? えぇ?


 これでシーファはほぼ安全だ。グーチャに翼は見えないし、空を飛べることはないだろう。この巨体を持ち上げるには中々の大きさの翼が必要そうだし。


 よし、不安がなくなったところで変化だ!


 人型に近いルーゲラベアーに変化する。剣を持ってみると……むむ、何か感じるぞ。体の中に何か疼いているというか、魔力が剣に向かって動いている。試しに剣に魔力を流し込んでみると、カゲマルが出したオーラのように、紫色の半透明の煙が吹き出した。やったぁ、成功だ!


 俺なんで魔物に変化すること自体、気がつかなかったんだろ。馬鹿かな?


「ギュガザアァアィイイヴヴッッッ!!」


 睨めっこに飽きたのか、グーチャは1つ大きく叫んだ。それが、戦場の幕開けの合図。グーチャの足が動く途端に俺たちも走り始める。シーファは魔法の詠唱、シロは雷獣化にプリンは応援。……おい!


 魔力が膨れ上がったオーラを飛ばすように念じると、オーラはグーチャに向かって鋭い刃と化し、飛来していった。グーチャはそれをかわさずに胴体で受ける。どこが胴体かわからんが。


 オーラをくらったグーチャはーー全くダメージを食らっていなかった。ま、1ダメージはくらっただろ。鑑定妨害が取れている今の隙に鑑定するかぁ。


 バチィッ!


 ふぁ?


 鑑定が妨害されたんだけど。何故にぃ!?


『絶対鑑定妨害を所持している模様。何をしようと鑑定を妨害してきます』


 マジかよ……ん? これみんな持ってるのかな?


『どうでしょう』


 鑑定さんも分からないって言っているし、気にする必要はないか。いつか俺もゲットするんだから。ねー、かんていさぁーん。


『……鑑定妨害が手に入る確率は100レベル到達地点で6%。そのあとは10レベル上昇していくごとに0.7%増えていく見込みです』


 低っ!


 たったの6か……。


 うぅ、俺が鑑定妨害を持つ日は当分なさそうだ……。


 グーチャは攻撃をくらったことに激怒したのか、腕を6本に分裂させた。さらに、何もない場所から龍の顔が出てきてブレスを放つ。また、棘のような尖ったものが体全身に生えてきて、それを飛ばしてきた。そして、体の周りにドロドロとした液体がつく。それが地面に垂れると、地面はわずかながら溶けた。酸のようだ。


 相手も本気を出してきたらしい。


 俺はブレスを避ける。しかし、ブレスは俺を追ってくるかのように横から迫ってきた。


 飛来してくる棘を剣で弾き返す。シーファたちのことを気にしている暇はない。あちらへ注意を向けた瞬間に、焼き払われてしまうだろう。


 一度変化を解く。地面から跳脚し、靴の効果で散歩だけ宙を走った。それだけでもブレスとの距離は遠くなっていく。俺の向かっている先は、グーチャの方向だった。


 酸が辺りに飛び散っているようで、グーチャがいる周りだけ陥没したように溶けていた。地面にもドロドロとした液体が付着している。あそこを踏んでしまうだけで靴が溶けてしまうだろう。


 部位変化で翼を出す。低空飛行で俺はグーチャに迫った。近づくたびに吐き出されているブレスが俺に迫っていると勘付けた。肌がチリチリと熱い。まあ、ブレスを吐いている張本人に突っ込んでいるのだから仕方がないだろう。


 グーチャはほぼ目の前にいる。と、こいつは体からまた針を出し、全方位に無差別攻撃を始めた。ゼロ距離だったため、俺には避ける術はない。手で顔を守るためにガードしようとするが間に合わない。


「ゴォッッ!」


 どこからかブレスが飛んできた。グーチャのものではない。プリンだった。


 プリンのブレスは棘を焼く。まだ威力が足りないせいか、完全には燃焼しなかったが、速度を落として俺にたどり着く前に落ちていった。


 これならいけるっ!


 未だブレスを吐いている龍の顔に接近。俺は変化する。


 ルーゲラキラーフラワー。俺は龍の顔の上に乗り、根を這わせた。皮膚が薄い場所を探し、その中に根を入れていく。


 酸が痛い。体がジュワッと嫌な音を立てる。くぅっ……。


 魔力を、吸い取る。こいつの攻撃は殆どが魔法だ。腕を動かしているのも魔法だし。魔法にガン振りしたゲームみたいに、他の能力が低いのだ。防御は高いみたいだけど。さっきくらったパンチも最初は痛かったが全然大丈夫な方だ。ま、冒険者なりたてのやつがくらったら鼻血だしてぶっ飛んでいくだろうな。


 根を這わせながら毒の煙を出す。思った通り、グーチャは苦しんでいるようだった。


 俺の根は体の中を伝い、本体へと迫る。龍の頭って体のど真ん中から出てるから不恰好なのよね。


 すると、龍の顔が本体に沈んでいった。俺もそれにつられて取り込まれそうになるが、少し踏ん張っただけで以外と大丈夫だった。


 にしても、こいつ魔力多すぎ。あれから1分くらいずっと吸ってるけどなぁ。俺もすごいスピードで吸ってるのはわかってるのに。


 シーファたちが6本の腕を倒し、俺のところまできた。あいつらも魔法をグーチャに打っている。


 お、俺に当てるなよ……?

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