第12話 夜になり
『よし、それでいこう』
『オッケー。じゃあ、シーファちゃんに話すか。とはいっても、話すのは僕じゃないけど』
『お前話せないのか?俺の分身なのに』
『妙にぐさっとくること言うね。僕は言語理解まではいけないよ。だから、シーファちゃんの言ってることだってわからない。それに、ユニークスキルまではコピーできないよ。出来るのは・・・風圧感知と火魔法ぐらいかな』
『まあそれがあれば護衛には充分だろ』
それまでずっと待っててくれたシーファ。優しいなぁ。正座してくれてるよ。俺はそのまま彼女に近づき、見上げた。身長が小さいから少し不便だ。それに、この年齢でいうことじゃないが肌も若返っている気がする。
「えっと、プイと話した結果なんだが・・・」
1つ、これはわかっていると思うが(シーファは知らない)シーファにプイの護衛をつけること。
2つ、俺は街に入ってギルド登録をする。その間、プイと離れないこと。
最後に、シーファを狙うあの組織が来たら全力で相手をすること。その場合な殺しても構わない。だが、情報も聞き出したいので、半殺しぐらいが1番かな。
「そういうところだ」
「殺す・・・ですね」
シーファには抵抗があるかもしれないが、その時はプイがやってくれ。
『リョーカイ』
俺は頷くと、プイと合体した。身長が元に戻る。もう一度スライムになって分裂すると、プイが生まれた。
大丈夫だ。一回合体してももう一回分裂すれば同じ個体が生まれるらしい。プイは不思議そうにこちらを見つめていた。
『よし、後は街に着いたらもう一回分裂するぞ』
MPも無駄になるしな。
肯定の気持ちが送られてきたところで、もう一度合体して元に戻る。
「今日は寝よう。後、川とかはないか?」
「ここら辺にはありませんが・・・」
シーファは羽を一枚抜き、それを顔を前まで持ってきた。
「水になれ、えい!」
羽の形が変化し、形が整った時にはコップに水が入っていた。
コップも一緒に生み出すのか。
コップを受け取り、水を飲み干すと、シーファのステータスを確認した。
シーファ
種族...鳥獣人
状態異常...実験台の核印(レベル以外の全てのステータスが2分の1になる)
レベル...8
HP...50/50
MP...60/60
攻撃...18
防御...15
素早さ...39
魔法...42
《スキル》
・風刃・風圧変化・MP自動回復・火球・水球・水球・ウォールバリア・ヒール・エリアヒール・料理・飛行
《ユニークスキル》
・羽変化
《称号》
・風使い・実験台・融合された者・寂しがりや
最初見たときよりかは上がってるね。善き善き。でも、実験台の核印が痛いな。これがなければかなりの戦力だぞ。
俺の感覚が狂ってるのかもしれないけど、あれを倒しても4レベしか上がってない。俺はめっちゃ一気に上がったのに。倒した数にも比例してるのかな?
「シーファ。レベル上がってるぞ」
「本当ですか⁉︎嬉しいです!」
伝えることは伝えてと。もう外も暗いだろうな。今出歩くのは危険か・・・。いや、夜の魔物も見てみたいな。
立ち上がる俺を見て、シーファは顔をあげる。
「どこへ行くんですか?」
「ちょっと外へ。魔物を狩ってくる。シーファは寝ていてくれ。洞の周りにいるやつだけを倒してくるから、安心して寝てていいぞ」
「何を言ってるんですか⁉︎夜のルーゲラ大森林はこの世界の中でも3本指に入るぐらい危険なんですよ!ドラゴンスライムなんか夜の魔物たちに比べればまだ下の下の下です。それにーー」
シーファは目を潤ませる。
「私を1人にしないでください!外へ行くのなら何が何でもついていきますからね!」
こうなるよね。分かってた。シーファを危険な目に会わせたくないし、今日は大人しくしていよう。
座った俺を見て、シーファは安堵の表情を浮かべる。俺は聞いた。
「ところで、危ない魔物ってなんだ?どんな奴がいるんだ?」
「例を挙げますと、空の支配者のルーゲラガスホーホー。拳ひとつで10本の木をなぎ倒すと言われているルーゲラキングベアー。さらには群を組んで相手をが動けなくなるまで追いかけ回し、その肉を喰らうルーゲラウルフ。まだまだありますよ。こんな魔物、一部にすぎません」
「じゃあ、今の3つを説明してくれないか?」
めんどくさがるかと思ったが、彼女はその質問を待っていたかのように人差し指を立て説明を始めた。
「まずはルーゲラガスホーホーです。昼間は寝床で寝ていて、夜になると動き出す魔物です。昼間巣を襲うと簡単に倒せますが、夜になるとそのステータスは全て10倍に跳ね上がります。巣を襲撃した時に取り逃がしたルーゲラガスホーホーがその冒険者たちに仕返しをしに行くということもよくあります。なんと、ルーゲラガスホーホーは追尾能力に長けているので、どこへ行っても追ってきます。逃げ場なしです」
俺は絶対に巣を襲わんぞ。
「次にルーゲラキングベアー。ルーゲラベアーの進化型で、体調は個体差によりますが、平均は3メートルほど。今までで1番大きいのが5メートルで、そのルーゲラキングベアーのとうぱつしに集まった冒険者を一体で100人ほど殺したそうです。あまりにも危険なため、Sランクパーティーに殺されて今はあまり見かけませんが・・・」
シーファは息つぎのために肺がはちきれるんじゃないかと本当に心配するぐらい息を吸った。そこから全てを放出するかのように話し始める。
「最後はルーゲラウルフ。これは昼間でも活動しますが、夜になるとさらに活発になります。そのスタミナは底知らずで、朝になろうと一週間が過ぎようとも走って追いかけてきます。容量はルーゲラガスホーホーと一緒ですね。ですが、1つだけ違うと言ったら諦めないところでしょうか?流石にルーゲラガスホーホーは1週間も追い回していると飽きて帰るでしょうし」
うん。3匹だけ聞いたけど、絶対勝てない。
「もう私は寝ます・・・おやすみなさい」
彼女は壁にもたれかかり、すぐに寝息を立て始めた。俺も瞼を閉じる。
なんやかんや忙しい1日だったな。
こうして長い1日は幕を閉じた。




