第112話 狩って狩って狩りまくる!
ゴブリンの群れ。俺はその中央を突っ切った。瞬間、すべてのゴブリンの首が飛ぶ。ふ、我ながらかっこいいと思うぜ。
調子乗ってた。すいませんでした。
俺の目の前に現れたのは、ゴブリンよりもひとまわり大きいボブゴブリンだった。俺は剣を構え、身構える。
「風刃っ!」
シーファの魔法が飛んで行った。ボブゴブリンはひらりとそれをかわす。しかし、かわした先に俺の剣。あっという間にボブゴブリンは首をはねられる。
うははい。うははい。
全然強くなかった。
そのあとも雑魚処理をしていたのだが、魔物の強さが上がっていることに気がついた。弱い魔物が殺され、強い魔物だけが残ってきたのだろう。周りの冒険者たちも苦戦しているようだ。
突然、ものすごい衝撃が地面から伝わってきた。
魔物ではない。サンカーだった。
サンカーが刀を一振りすると、地面に衝撃が伝わって砂煙が飛んでいく。砂煙に乗せられて魔物は宙へ吹っ飛んで行った。そして、落下。魔物の内臓が飛び出し、地面に叩きつけられる結果となった。
結構残酷なことするなぁ。ま、相手が魔物だからごちゃごちゃ言ってられないけど。
「シーファ、そろそろ俺たちも力を出さなければいけない。苦戦している冒険者を助けるぞ」
「了解です!」
魔物を切りながら走っていくと、押され気味の冒険者がいた。シーファが風刃を放つと、魔物の体はあっさりと両断される。ステータスの差が激しいのだ。
「あ、ああ……」
女性の冒険者は目を丸くして、魔物の亡骸を見つめている。シーファが駆け寄った。
「大丈夫ですか?」
「う、うん。すごいよ。私が苦戦していた魔物を立った一撃で倒すとか……」
「ありがとうございます。怪我はしていませんか?」
女性は苦笑する。
「気にしないでよ。風邪魔法が使える貴方に光魔法は使えるの?」
シーファは彼女の傷を見つけ、そこにヒールをかけた。みるみる傷が治っていく。女性は驚いた顔をした。
「二属性持ちなんだ……!」
彼女は腕を振り、問題なく動かせることを確認すると、にっこりと微笑んだ。
「ありがとう!」
シーファも微笑みかえした。
そのあとも数十人の冒険島の危機を救い、俺たちは感謝された。
ん? ちゃんと俺だって魔物を倒してるぞ? シーファにだけ魔物を倒させてなんかないからな。
そう思いながら、俺はしっかりと魔物を切っていく。冒険者たちからは、俺たちのことは好印象になっていた。戦場でも情報は回るのか、俺たちの姿を見つけたら怪我を治して欲しいとくる人がいる。シーファのMPは膨大なので、ヒールをかけても大丈夫だが流石にその数が多くなっていくと彼女も辛いだろう。
「嫌ならやらなくていいんだぞ?」
「いえ、私は皆さんを助けたいだけなので」
何と優しい子なのだろうか。俺も見習いたーーげふんげふん。俺も優しいからな!
……ダメだ、これじゃナルシだな。
「君たち、使えない冒険者をヒールしなくてもいいんだよ?」
そう声をかけてきたのはワヤだった。明らかに敵対心を持っている。このギルマスめんどくさいなぁ。
「冒険者……ですか。私は、人間にはいろいろな個性があっていいと思いますけどね」
シーファはしんみりとした口調でいった。途中、俺を見たのは気のせいだろうか。
「はは、考えすぎているんだよ、シーファちゃんは。雑魚は引っ込んで後ろで馬鹿なやつらのヒールでもしてな」
ワヤは笑いながら去って行った。シーファは……微動だにしない。怒っている様子すらなかった。
「あんなやつに関わるのが脳筋というものなのです」
まあそれが正論だよな。俺もあいつとは関わりたくないし。接していて疲れる。
「ところで、和樹はどこにいるんだ?」
「姿は見当たりません。気配的にも、近くにいる感じはありませんが」
「果ての大地だ」
俺たちの会話に割り込んできた者がいる。ミィトだった。そういえば、今日の人格は強い気の男性だったっけ。
「俺の気配感知が微かに反応している。ラギ森林の方向からだが、そんな近い場所にいるはずがねえ」
「何故です?」
「ラギ森林から魔物が来ているだろ? なら、そのごちゃまぜになった魔物の大群の中に1人でいるか? 自分たちの配下だからともかく、敵が来たとしたら十分に戦えねえ。なら、ラギ森林から分離された果ての大地にいるってことが普通の思考だ」
ほう、確かにな。
「あいつ、俺と決戦したいとか言ってたよな? 俺1人で行ったほうがいいーー」
シーファが俺の腕をつかんだ。
ーー1人では、絶対に行かせません。
そんな意思が伝わってきたような気がした。
……ミライの狙いも和樹だ。それに、シーファも和樹に深い恨みを持っている。彼女はミライに復讐をしたいとずっと願って生きてきた。なら、一緒に戦ってもいいんじゃないか?
和樹が反対してもいい。その時は、強引に押し切るだけだ。シーファと俺のコンビは、最強にならなくてはいけないのだから。2人で最強になると約束したのだから。
俺は微笑む。シーファは俺の意図が分かったようで、俺を掴んでいた力がゆるくなった。
「ったく、戦場でいちゃつくとかどうにかしてんじゃねえか?」
ミィトの不満が飛ぶ。今度俺が漏らした笑みは、苦笑いだった。
「っーー!? 後ろだ!」
ミィトの叫ぶ声。俺は即座に横へ飛び退いた。シーファも腕からするりと離れ、後方からの攻撃を回避する。後ろを振り返ると、そこには大きな図体の魔物が俺たちを見下ろしていた。
龍だった。
「ガアァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」
耳が張り裂けんばかりの雄叫びをあげて、龍は大きな口を開けた。
赤い者が口の中に見えがくれする。しかし、すぐにソレはかくれんぼをやめ熱い何かを形作っていく。
ーーブレスが、くる。
俺が悟ったのと同時。龍の最大の武器、ブレスが完全に無防備の俺たちめがけて放たれた。




