第110話 ライラとお話
「ライラさん! お久しぶりです」
シーファが礼儀よく挨拶をする。俺も軽く頭を下げた。ライラさんは微笑を浮かべながら手を横に振る。
「ここに来たのは魔物の大群をくいとめるだけの用事だ。敬意の心は大戦が終わってからにしろ」
流石ライラさん! coorだぁ!
「じゃぁエルシャルト国の騎士団も参加するといってていいってことですよね?」
ライラが頷く。おお、増援が増えた。これで戦闘も少しは楽になるだろう。
「ありがとな」
「礼には及ばない。ロット国が滅びたらこちらも何かと不便だ。ギルドマスターからも頼まれたしな」
ロット国のギルドマスターというと……サンカーさんか。やっぱりそこまでしなきゃ魔物の大群は難しいよな……。
「そういえば、チカ大国も来てくれるのか?」
その質問を待っていたかのように、ライラは目を輝かせた。
「ああ! チカ大国の最高チカ部隊が来てくれるらしい! あの有名なディブソンにも会えるのだぞ!」
ライラは1人興奮していた。俺たちには何を言っているのかわからない。ディブソン? 誰だそれ?
俺とシーファが顔を見合わせていると、ライラは驚いた顔をした。
「ま、まさかディブソンをしらないのか……?」
戸惑いながらも頷くと、ライラはまるで自分のことのように得意げに語ってくれる。
「ディブソンは1人で龍を討伐したこともある、超腕利きの騎士団長だ。さらに、抱かれたい男ナンバーワンで、顔もそこらの男性のとは比べものにならん!」
おお、それはすごいな。
龍を単体で討伐かあ。俺はシーファと協力して討伐したからな。
「その人ってギルマスよりも強いのか?」
「いや、同じくらいだ。私の知る限りでは、多数決でギルドマスターに選ばれそうになったらしい」
「らしい……とはなんでしょう?」
「チカ大国にはミィト様がいるからね……彼女がいなければディブソンはぶっちぎりで一位をとったのだそうだ」
「ミィトとの票の差は?」
心底驚いた顔をしながらも、ライラは答える。
「ミィト様って言わないんだな……。票の差は、5だ」
かなり僅差だな。接戦の末にミィトがギルドマスターになってったいうことか。
「ミィトとも強さが同じくらいなのか……」
ぽつりと呟くと、ライラは笑みを浮かべて首を横に振った。
「いやいや。ミィト様は規格外だ。あの強さに勝てるやつなんて、絶対にいない」
ディブソンよりもミィトの方が圧倒的に上だと。そうライラは語った。
さすがミィトだ。みんなが様付けしている意味もある。でも、ミィトの方が強いのに何故そこまで僅差だったんだ?
自分で考えて、すぐに答えが出た。
ミィトの人格によって付き合い方が難しいから、そう考えた人はディブソンに投票したのか。そう考えると納得いく。一番面倒くさいのは気弱な男性の人格だし。本当にあれは勘弁してほしいと俺は思う。
「おっと。かなり話が逸れてしまったな。私はこれから用事があるからこれで失礼する」
ライラは左手を上げて魔法陣の上に乗る。そこで、何かに気がついたようにあっと声を上げた。
「これもあげに来たんだ。受け取ってくれ」
ライラがポケットから何かを取り出す。
「なんだ、これ?」
淡い黄緑色の小石だった。光っているわけでもなく、何か神秘的な力を感じることもなく、本当にただの小石。
「役に立ったりでもするのか?」
ライラは唸る。彼女自身もわかっていないようだった。
「私にはわからない。でも、お守り代わりには使えるかと思ってな」
「……ありがとう」
礼を言い、俺はお守り(?)をポケットの中に入れた。大切にするぞ。
今度こそ、ライラは魔法陣で部屋の外へ行ってしまった。
ーー何か変なの感じる。
シロが俺を見て言う。どういうことだろう。
「あ、さっきの石か?」
俺は石を取り出す。シロは一歩後ずさった。
ーーこれ、ダメ!
バチバチとシロの体に電気が駆け巡る。俺は石をすぐさま引っ込めた。
「お、おい。どういうことか説明してくれよ」
シロは低く唸る。
ーー変! 変! 鑑定してみて!
シロが言う通りに、俺は医師に向かって鑑定を発動させた。
《聖石
邪気を払う力を持っている石。その力悪に使うべからず》
んじゃこの謎の解説文! 鑑定さんどうなってるんだ!
『…………』
おおーい。黙んなよー。
ま、鑑定さんでも表せないくらいのやつなんだろうな。でも、マジでこの石やばいな。
あ、邪気を払うとか言ってたからシロが嫌がっているのかな? 一応シロも魔物という分類なのかもしれない。雷獣だし。
「じゃぁこれはアイテムボックスに入れておくか」
アイテムボックスに入れたらシロも嫌がらないと思うし。
それにしても、アイテムボックスに入れたらお守りになるのかな……。一応身につけてる判定に……ってどうでもいいな。ライラさんには申し訳ないけど。
「あの方は一体……?」
そう言って出てきたのはカゲマルだ。そういえば、カゲマルはライラさんとは初対面だったな。
「俺たちの友達みたいなものだ。危害を加えてくる危ない人ではないから、安心してほしい」
「そうです。ライラさんはいい人ですよ」
俺とシーファに太鼓判を押され、カゲマルは納得の声を出した。
「あ、俺テックに薬もらってくるわ。ちょっと待っててもらっていいか?」
「サトル1人でですか?」
「ああ。別にすぐ終わるし、シーファが来ても意味ないぞ?」
シーファは不満そうな表情をしていたが、渋々頷いてくれた。
テックの家に行く。相変わらず、ボロ屋だ。あんなにすごい薬を作ってるのに、なんで儲からないんだろうか。
「お邪魔しま〜す」
中に入ると、テックが制作中の薬を放り投げ温かく迎えてくれた。いいのかよ。
「やあ、来てくれたんだね! 聞いたよ、明日魔物がここを襲ってくるってね。だから、出来るだけ薬を作っておいたんだ」
お、仕事が早い! 流石はテックだ。
こうして俺は3つの薬をもらい、ホクホク顏でギルドに帰った。




