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第106話 議論(?)

 議論が始まった。最初に手を挙げたのは、ズートだ。


「おれが敵陣に突っ込んで魔物の数を減らす。そこに包囲型でミィト様たちが魔物を囲う。中央に集まったやつをおれがなぎ倒す。周りからは魔法攻撃で集中攻撃」

「それは……」


 ミィトが言葉に詰まっているようだった。流石馬鹿だ。問題点がありすぎる。


「それでは貴方が死んでしまうかもしれません。それに、周りから魔法を打ったらズートさんに当たってしまう確率だってあります。第一、それで倒しきれなかったらどうするつもりですか? 魔法が効かない強い魔物がいたら? 本末転倒です」


 シーファがはっきりと意見を言う。ミィトが頷いた。


「その案が適用されたとしても1人で突っ込んでいくのは危険だし、これは却下で」

「そうか……」


 ズートが肩を落とす。


「あのさ、俺、あまりここにいるギルドマスターの能力を知らないんだけど」


 俺が言うと、ミィトはハッとなった。


「そっか。サトルは私たちのことをあまり知らないのか」


 ミィトは説明してくれた。


 ミィトのユニークスキルはご存知《多重人格》だ。1日ごとに人格が変わるというユニークスキル。人格ごとにステータスに差があり、気強な男性が攻撃力、爽やかな女性(今)が魔法、気弱な男性が素早さ、というようにステータスが上がるのだ。


 サンカーのユニークスキルは《鬼人化》。一回鑑定してみたことあるから知ってる。で、鬼人化っていうのは一時的に鬼の魂を憑依させてステータスを全面的にあげるんだとか。だけど、力は自分で制御できないし、味方を襲ってしまうこともあるからよほど危ない時以外は使わないらしい。人生で発動したのも2回なんだとか。ご老人なのに2回はある意味すごいな。


 ズートのユニークスキルは《剛力》。これも一時的に攻撃力を上げるのだが、それがすごい。なんと、攻撃力が200も上がってしまうのだ。その代わり発動した後はとんでもない疲労が襲ってくるらしい。なんでも寝てしまうのだとか。最後の切り札って感じだ。


 キュラサのユニークスキルは透明化。俺は発動しているのを見たことがある。自身を透明化させるのだが、MP消費系なのであまり使いたくないんだとか。それに、キュラサは特攻型でMPは高くない。なんで神はこんなのを持たせたんだろうな。な? パグくん。


「へっくしょい!」


 どこかでパグがくしゃみをしたことは言うまでもない。


 最後はワヤ。ミィトが説明しようと口を開いたところを、ワヤは遮った。


「僕の能力は話さなくていい」


 衝撃の一言だった。


「何故?」


 ミィトが尋ねる。ワヤは俺のことを明らかに警戒していた。


「こんな子供に僕のユニークスキルを教えるわけないだろ? それに、魔人を従えているという時点でおかしい。きっと魔王とかからきたスパイか何かだよ」


 そう言って、ワヤは周囲の人間を睨みつけた。


「どうかしちゃったんじゃない? 横からひょっこり現れたやつを議論に入れてさ、ギルマスと対等の関係でいる。ミィト様のことも『様』をつけない。ある意味、僕よりかも上だ」


 今度は、俺のことをきつく睨みつけた。


「みんな、可笑しいよ」


 ワヤはどうしても俺にユニークスキルを教えたくないようだ。


「いい加減にしてくれませんか?」


 そこで、シーファが椅子から立ち上がった。


 シーファは話した。魔王によって魔族が洗脳されていることを。そして、名付けをしたことでカゲマルの洗脳が解け今自由に動けていること。その他もろもろ。


「…………はっ! それが本当だっていう証拠はあるのかい?」

「ここに居るじゃないですか! カゲマルが証拠です!」

「いいかい?」


 ワヤが椅子を離れ、シーファに近づく。


「それじゃあ証拠にならない。なんたって、僕はその瞬間を見ていないから。そうなれば、いくらでも嘘をつくことだってできるよね?」


 さらにワヤは一歩進む。それに合わせてシーファが後退した。


「もう! ワヤったら、怖がってるじゃない!」


 声を荒げたのはキュラサだった。ワヤは舌打ちをし、自分の席へ戻っていく。シーファの鋭い視線がワヤの背中に刺さった。


「あと一歩、前進していたラあのクズ男ハ死んでいたのにナ」


 なにしてんじゃぁ!


 ミライに体を貸すほど重要か、シーファよ。


『恐らく邪柱を発動する予定だったのでしょう。詠唱なしですが、その方が威力を抑えられたりとメリットもあります』


 マジかよ……邪柱発動しようとしてたんだ。


「ワヤ、命拾いしたね」


 ミィトがワヤの肩に手を置いて爽やかに微笑む。笑っていられるのはお前だけだぞ。


 っていうか俺でも感知できなかったのにミィトは感知したのか……。すごいな。


 本人のワヤは頭にハテナマークを浮かべ、席に着いた。シーファも落ち着き、座る。


「だいぶ話が逸れちゃったけど、本題に戻るね。どういう陣形がいいか、意見がある人」


 最悪の空気の中で手を挙げたのはキュラサだった。


「やっぱり包囲の方がいいと思うの。閃光弾で魔物の目をくらませて、混乱している間に周りから奇襲を仕掛ける。最初は矢とか魔法とかで攻撃して、尽きたら特攻隊で突撃。その間にMPと矢を補充して、また入れ替わって攻撃。これでいいんじゃない?」


 まあ、いい作戦だと俺は思うが……ミィトの表情が微妙だ。


「うーん。閃光弾を使っても、目がない魔物とか目じゃなくて熱でも感知できる魔物とかがいたらダメだと思う。それに、MPとか矢もいずれかは尽きるだろうし……。まず混乱して魔物の陣形が変わったら包囲できないかもしれないじゃない?」


 な、なんと。的確な分析力だなあ。


「ワヤはなんか意見はない?」

「ない」

「サトルは?」


 急に指名され、俺はビビる。授業のときよくあったなぁ。


 とか考えている暇もなく。


「えっと……これはキュラサさんの包囲陣形の話なんだけど、矢は補充できなくてもMPは尽きない方法がある」


 ほう、とサンカーが唸る。彼も気がついていたようだ。


「温泉だ」


 あの温泉には、MP回復とHP回復の効果があったはず。そうすれば、怪我した人だって少しは治療できる。


「成る程。ここは温泉が有名だったね。採用させてもらうよ」


 やったあ! 適当に言っただけなのに採用された!


 うん。なんか嬉しいぞ。


「流石サトルです!」


 シーファが賞賛してくれる。でも、肝心の陣形がまだ決まってないよな。


「サンカーは陣形に関して意見ある?」

「言わなくてもわかっているだろう」


 ん? どういうことだ?


 と、思っているとギルマス全員が頷いている。理解していないのは俺たちだけか。


「陣形を決めるのに一番適した人物がいる」


 サンカーは淡々として言う。その視線はーー。


 ミィトに向いていた。


 この流れ、なんか俺に来るとか思ってたけど違ったみたいだ。


「ミィト様、お願いしますぞ!」

「わかった!」


 と、いうことで議論は終わった。


 え?


 これ議論の意味なかったでしょー!

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