第102話 ルーゲラバイガルとの戦い 4
「がぅ!」
シロが次元斬を放つ。空間が歪むが、そこから攻撃されることがわかっているのか、バイガルは空を駆けながら避けていく。
「シロはMPをあまり消費するな。ここから落ちると大変だ。前の雷でもかなり体力を消費しただろ?」
「がう」
了承の声を、シロはだした。
それにしても、シーファの邪柱は何故効かなかったんだ? シロの雷は効いたのにな……。
『ステータスの鑑定結果に自己再生がありました。邪柱のダメージの後に回復をしたのでしょう』
鑑定さん、それマジ? じゃぁこれからもずっと回復され続けるってこと?
『自己再生は一度使うと12時間使用が不可です』
ああ、よかった。MPが続く限りずっと回復とかシャレにならないしな。とは言っても自動HP回復があるから回復されるのには変わりはないけどね。だから雷落とされた後には回復できなかったんだな。まあ、いいや。今から回復が追いつけないくらいで攻めてやるよ。
「シロ、バイガルを追いかけろっ!」
シロがバイガルを後ろから追いかける。片方の蛇頭が後ろを向き、火刃を10発ほど飛ばしてくる。剣で対処しようとしたが、その前に俺たちから軌道がそれておかしな方向へと飛んで行った。そのうちの数個はバイガル自身に返っていく。
「ジャアァァァ!」
バイガルが火刃を出してまた対抗するが、その火刃でさえ180度回転して己を傷つける刃と化してしまう。すべて、シーファの風圧変化のおかげだった。バイガルも風圧変化で火刃をかわしているが、何個かは避けきれずに当たっている。シーファほどの操作力は持っていないみたいだ。
バイガルが一本の木に近づいた途端、その木からカゲマルが飛び出した。木の影を登ってきたようだ。覚醒した剣を、前方を向いていた蛇頭に当てる。これも傷が入った。
シーファ、ありがとう。
「シロ、一旦チャージするぞ」
「があぁ!」
雷球をシロの背中に打ち込む。すると、雷球は吸い込まれ、同時にシロのMPが少量ながら回復した。これがシロのスキル、充電だ。
バイガルは挟まれた状態になってしまった。カゲマルはまた木の影の中に潜る。バイガルが木自体に攻撃をすれば、その2倍のダメージがカゲマルに入ってしまう。うーん、代償が大きいなぁ。
バイガルが雷球を放つが、俺はわざとシロに受けさせた。たちまち、シロのMPが回復していく。それを見て、バイガルは雷球ではなく火刃をうってきた。
「避けろ!」
俺の指示通りに火刃を避けていくシロ。その間にも、カゲマルがもう一方の蛇を相手に戦っている。
突然、火刃が飛んでこなくなった。バイガルの様子を伺う。その背に、シーファがいた。手のひらを背中に添え、今にも魔法を放ちそうだ。そしてーー。
激しい爆音。爆風を吸い込まないように、息を止める。シロと共に飛ばされたが、シロがなんとか態勢を保ってくれた。別に落ちたら飛べばいいから問題はないけどね。
「小僧、大丈夫カ?」
シーファーーミライが話しかける。俺は頷いた。それよりも、気になることがある。
「今、俺のことを心配したよな?」
シーファの表情が曇った。
「そんなこと今はどうでもいイ。コイツを殺すことが優先ダ」
お、デレた? ちょっと信頼されてきた? お? お?
…………。
虚し。
バイガルの尾が横に振られる。シロが降下し、俺は背中から前に向かって跳ぶ。シロと俺の間を尾が通り過ぎて行った。部位変化で翼を生やす。今回はミストバードの翼だ。幻影は……発動できる。大丈夫だ。1つ部位があればスキルは発動できるらしい。
……効果は少ないみたいだけど。
剣を振り上げる。俺の真下にいた蛇の頭は目を見開いた。
「ジャアァァァァ!!!」
ブレス。口の中が青く光った。あと数秒でそれは俺に発射されるだろう。だがーー。
俺は微笑みを浮かべた。
「俺の方が速い」
一振り。全ての力を乗せた一撃が、振り下ろされた。重い手応え。何かの塊が下へ落下していった。血が俺の頬に付着する。
バイガルの首だった。
「シィィィィィィィ!!」
片方の首を失ったことが怒りに触れたのか、左の方の蛇は咆哮をあげる。すると、周りで変化が起こった。
カゲマルは強制的に影から追い出され、シロの雷獣化がとける。俺は急いでシロを回収する。カゲマルは地面すれすれで木を蹴り、見事に着地した。
「王者の咆哮……」
俺は状態異常無効があるから大丈夫。シーファは翼で飛んでいるから影響はない。ただ、使われていた魔法がキャンセルされただけだ。シロとカゲマルは魔法を使っていたので、それがキャンセルされて今に至る。まったく、面倒なスキルだ。
「シーファ、行くぞ」
「はい!」
暫くはここにこれないカゲマルたちには待機してもらうほかない。ここは、俺とシーファで決めるしかなかった。
「シィィ!」
バイガルが一声鳴くと、空から雷が降った。そこからどんどん黒い雲が広がっていく。シロの雷のようだ。しかし、バイガルが雷獣の技を持っているはずがないため、これはスキル欄からして雷神風雨というものだろう。
「構えろ!」
「指図するナ!」
ミライに体を託したらしい。ミライは叫ぶ。
やがて、雨が降り出した。それも一粒一粒が強く殴られたくらいに痛い。みるみるうちにHPが減っていく。そこに雷のご登場。こればかりはくらってはいけないと判断し、降ってくる雷はすべて避けた。下を見ると、カゲマルの上にシロが立っている。雷を受けて、MPを回復しているのだ。
あっちは大丈夫。今はこっちだ。
これは持続系攻撃らしい。バイガルはシーファに襲いかかる。その素早さは、先ほどと比べて遅くなっていた。それでもまだ速いのだが。
シーファ(ミライ)は闇球を5発ほど作り、バイガルにぶつけようとする。その闇球をすべて避けるバイガル。闇級の軌道が変わり、後ろから追われる形になってしまった。俺はシーファとバイガルの間に入り、剣で突進を受け止める。案の定力の差で押し負け、吹っ飛ばされるがシーファは巻き込まない。
バイガルは雷球で闇球を全て相殺し、口を開く。赤い炎が俺向かって放たれた。それを避けるが、これまたバイガルの風圧変化で追いかけられる。そこに でシーファの邪柱がバイガルを包み込んだ。ブレスは見当違いの方向へ飛んでいく。
「シィィィィッッッ!」
バイガルはもがき、苦しむ。シーファが俺の肩に手を置いた。
「あとは、頼みました……!」
そう言い、彼女は落下していった。カゲマルがシーファを受け止めたのを見る。魔力切れを起こしたようだ。
自分の魔力を確認する。部位変化のせいで、かなり減っていた。もってあと1分。その間に、決めるっ!
バイガルのステータスも確認。HPはあと、500をきっていた。俺は残り100だ。強い雨のせいで未だに減り続けているけど。
「シイィィ!」
「はあぁぁ!」
剣とバイガルの足がぶつかり合う。力を込めた途端、バイガルの姿が消えた。前によろける。大気感知で背後の空気の揺れを感じた。俺は変化する。ルーゲラホーホーにだ。上へ飛び上がる。下すれすれで、バイガルの口が閉じられた。
俺はさらにルーゲラベアーに変化。拳に力をためる。炎が手にまとわりついた。前のめりになったバイガルには回避の手立てがない。それに、MPも少ない。
その頭をロックオンした。
よし、行くぞ!
「地獄突きぃぃぃっっ!!」
鈍い音がして、バイガルは炎に包まれながら地面に叩きつけられる。HPは……残り200だ。
「シィ……ィ……」
これで終わりだ。いい戦いだったよ、ルーゲラバイガル。
俺が剣を突き立てる。ボロボロになった鱗は、それだけで貫通した。
残りHP100。最後の最後で、バイガルが尾をふるってきた。普通に考えればとんでもないスピードだが、この速さに慣れてしまった俺には容易いことだ。ひょいと避ける。そして、顔を上げた俺にブレスが迫ってきていた。
!?
手に転移させたギルドカードを投げる。そして、ブレスを避けた。頭に鑑定さんの声が響く。
『ルーゲラバイガルを倒しました。経験値16520を獲得。レベルが70に上がりました。ルーゲラバイガルに変化可能になりました』
やってやったぜ、ヒャッホイ!




