第1話 プロローグ
初投稿です。誤字等があっても温かい目で見守っていただくとありがたいです。
嘉村悟は、高校2年生だ。幼い頃に事故で親が亡くなり、孤独に過ごしてきた。
幸いなことにうちは資産家だったため、アパートで一人暮らししていくほどには生活ができた。
一人だとぶっちゃけものすごく暇だ。彼女なんかできたことがないし。いや、あるとしたらシロと遊ぶことかな。
俺の人生で1番癒しを与えてくれるのは、犬のペットのシロ。ふわふわしてて小さくて真っ白でまんじゅうみたいでめちゃくちゃ可愛い。
帰ってくるときに駆け寄ってくるところがなんとも愛くるしい。
……シロに思いを巡らせていたのが悪かったのか。信号無視をし、高速で突っ込んでくるトラックに気が付かなかった。
ん?
迫る鉄の塊。重いものが体にぶつかり、遅れて衝撃が体を襲った。血が花火のように、美しく舞う。
視界がぐるぐると回り、地面に頭を打ち付け、地面に倒れる。
起き上がろうとして、自分の手が真っ赤に染まっていることに初めて気がつく。そして、意識を失った。
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恐る恐る目を開ける。急いで体を確認したが、服に血が付いているだけで身はなんともない。何が起きた? 俺は、俺は……?
「お、起きたみたいだね」
視線を前に向けると、いつの間にかそこには少年が立っていた。いや、人とは言えない。肌以外ほとんど白一色。白い服にヨタヨタの白いズボン。そして極め付けは雪のように純白な翼であった。
彼はひらひらと手を振り、にっこりと笑う。
「よし、精神に異常はないみたいだね」
「……誰だ? お前」
とても美しい。しかし、形容し難い何かを感じる。これは、なんだ? 神秘的なのか、はたまた……。
「あはは、怖がらなくてもいいよ。僕はパグ。君は悟くんだよね?」
「…………」
「もぅ、助けてやったのに、ひどいなぁ。覚えてないの? 君、とっくに死んでるよ。彷徨う魂になった君を僕が拾ってやったんだけど。少しくらいは感謝してよ」
頬を膨らませて少年は上目遣いで睨む。身長が低いため、彼はどうしても見上げる形になってしまうのだ。
「お前、何者だ?」
「魂の輪廻に干渉し、肉体を復元することができる存在だよ。君らの世界だと、『転生』っていうのかな。そして、僕らを引っ括めて神様って言うんだ」
「……はあ」
パグは無邪気な笑みを見せる。胡散臭いな。
「胡散臭いなって思ったでしょ?」
「っ!?」
「僕ぐらいの神様になると思考が読めちゃうんだよね、これが。気をつけないと……」
パグがグイッと顔を近づけてくる。眼光が大きく開いており、うっすらと笑みを浮かべていた。
「魂を抜かれちゃうかも」
「……ッ」
パグは離れながらくるりとその場で回り、再び顔が見えた時には素の表情に戻っていた。俺は生唾を飲み込む。こいつ、行動が読めない。
「あはは、どうやら君は正常みたいだね。いやぁ、よかったよ。ここのところ失敗続きでさ」
「……失敗ってなんだ?」
「輪廻からここに連れてくる時、不具合が生じることもあってね、精神がイカれるやつも少なくはないんだ。半分くらいかな、成功率は。ま、元々死んじゃった人なら魂に何をしても失うものはないから気が楽だけどね。あはは」
特に悪びれる様子もなく、平然と言ってのける。ということは、俺も失敗だったら……いや、よそう。
「そんな真に受けないでよ、後半は冗談だって、冗談」
俺を落ち着かせるためにやってるのか? ……だとしたら逆効果だが。
信用できない、というわけではない。けれども、何かを感じる。神様のオーラってこんな感じなのか……?
「異世界って、どういうところだ? 魔物とか、そういうやつか?」
「いや、世界中の機械化が進んで、その世界の下の下で永遠に重労働するために転生するのが君の役目だよ」
「え?」
「はは、冗談だよ」
「は?」
普通に焦った。ちょっとイライラしてきたし。
そんな茶番を繰り返し、俺の心を敏感に読み取ったのかーーいや、読み取ったんだなーーようやく異世界のことが聞けた。
「サトルが行ってもらうのは、『セージ』っていう世界だ。僕が言ったように魔物とか勇者も存在する」
お前が言ったわけではないんだけどな。勇者なんか俺すら言ってねえよ。
確実に心で訴えたものの、それを無視してパグは得意げに続ける。
「そこで、サトルには異世界に行ってリスキルされないためにスキルをあげることにしたんだ」
スキルという言葉に大きく反応した俺を見て、パジは胸を張った。俺もそういうお年頃だもん!
「その名も、《変化》!」
そう言われても性能とかわからないんだけど。まあ名称的に変身かなんかだろうけど、外れっぽいにおいがする。
「ちょっと、ハズレとか思ったよね?」
「ああ」
「うわ、しょうじきぃ……。僕傷ついちゃうよ」
「言ってろ」
「あぁ! ひどいなぁ! でも、僕はもう決めたからね!」
ぷんすかしているパグの手の先から淡い光が出て、俺の体の中に入った。一瞬だけ、ほのかな温かみを感じる。
「これでよし、と。君の肉体も、ここじゃもうもたないからあとは頑張ってね」
「え?ちょ、まっーー」
その瞬間、視界は光に包まれる。僅かにパグが口を動かしているのが見えるが、聞き取れない。
ま……た……あ……お……う……ね…………?
「一生会うか! お前怖いもん!」
パグの姿が完全に見えなくなる。そのあともなんか言ってたような気がするが……「君の一生はもう終わってないかい?」とか言われてそう。俺エスパー。
くそ、次会った時は一本取ってやる。覚えてろよお!
なんやかんやでパグを憎めない俺であった。
更新1ヶ月空いたりするのは私も嫌なので出来るだけ努力はしていきたいです。