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まるで
部屋の隅に座る君と
部屋の真ん中に立つ僕
まるで、と前置きをして
僕は世界をふたつに分けました
テレビに映った渋い顔の評論家は僕のようだ
壁に掛けてある絵の優しい色は君のようだ
工事現場を闊歩する猫は君のようだ
散歩を嫌がるあの犬は僕のようだ
踏まれて音を鳴らした木の枝は僕のようだ
見向きもされず咲いた花は君のようだ
どこからか聞こえる拙いピアノの調べは君のようだ
速いリズムを刻む階段の足音は僕のようだ
霞に映ったあの山の影は僕のようだ
灰色の端っこの真っ赤に染まった地平線は君のようだ
僕たちはどこまでいっても交わらない
僕たちは違う人間だから
まるで、と前置きをして君はいいます
あなたは私のようだ
そのとき世界はひとつになった
全く違うタイプなのに妙に気が合う人っていますよね