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別れと出会い

桜を見上げながら、学校へと歩いていた。


桜が舞い散る、4月。


あの試合以降、俺は野球部へとは行かなかった。


そして、あっという間に9ヶ月もの時がたっていた。


「あの、神谷選手ですか?」


いきなり、声をかけられた。


「はっ、そうだけど」


そう言いながら、その声が聞こえたほうを向いた…そして、驚いた。


「凛…」


「えっ、違いますよ。私は花野桜と言います」


すぐに、現実に戻った。その子の顔を見てみると、凛とは正反対で綺麗というよりは、可愛い顔立ちで、大和撫子というよりは、フランス人形のように目が大きく綺麗な髪の顔立ちをしていた。凛とはぜんぜん違うじゃないか…


「すまない、で、用は何だ。」


「あっ、はい。それはですね、野球部に戻ってください。」


無視して、歩き出した。


「えっ、待ってください。」


さらに、無視し続けた。


「神谷先輩。私、去年の広島県地区予選決勝の投球を見て、ファンになったんです。って、待ってくださいよ」


無視し続けて、歩き始めた。ただのミーハーなファンか。


「神谷先輩待ってくださいってば、あの試合から先輩がいる高校に入って、野球部のマネージャーになることが私の夢になったんですから」


はぁ、なんなんだ?このストーカー女わ。


「ですから、野球部へ戻って甲子園を目指しましょう。」


うざかった。最近はこういうやつらも減ってきたのに。


「ごめん、野球をする気はないんだ。だから、じゃーな。」


最初だったので、点検的な答え方をした。そして、走って学校へ向かった。



そう、退部届けを出した当時、周りのやつらは今の女みたいにウザイやつがいっぱいいた。しかし、さすがに9ヶ月もたった今頃では誰にも言われることがなかったが…



「おはよう、涼」


幼馴染の木下理恵が挨拶をしてきた。


「あぁ、おはよ。」


「なんだ、なんだ。顔が暗いわよ」


「なんでもない…」


少しめんどくさいことはあったが、喋るのもめんどくさい。


「そんな暗い顔して、なんでもないって言われてもな、理恵」


幼馴染の宮本大地が、話しに加わってきた。

「勝手に言ってろ」


そう言って、席へ向かって歩き出す。


「神谷先輩、置いて一人で行くなんて、ひどいです」


ストーカー女が、教室まできやがった。


「誰だ、あの子?」


「かわいい」


そんな言葉が、行き交う。


「涼、あの子だれ?」


「あんなかわいい子、この学校にいたっけ?」


少し怖い顔の理恵と笑顔の大地が同時に言ってきた。


「誰って聞かれても、ストーカー女?」


とりあえず、大地の質問にはスルーだ。


「誰がストーカー女ですか?私は、一年生の花野桜です、覚えてくださいね」


すぐ、そばまで来ていた。


「で、なんなんだ。教室まで着やがって」


「それはですね。神谷先輩に、野球部へ戻ってもらうためです。」


クラスの雰囲気が凍りつき、みんなが黙ってしまった。


「なんですか、この雰囲気」


ストーカー女は空気を読めないようだ。


そして、一番最初に声を発したのは理恵だった。


「えっと、花野桜ちゃんだったけ?それは…」


しかし、途中で口ごもってしまった。


「俺は野球は二度としない。野球部へ戻るつもりもない。だから、二度とこの話をするな。」


きつく、低い声でストーカー女に言った。


「無理です。私は諦めません。神谷先輩が、野球をしてくれるまで、言い続けます。あっ、ホームルームが始まりますから、戻りますね。」


そういうと、ストーカー女は足早に教室へと戻っていった。


「おい…」


すでに、教室にストーカー女の姿はなかった。





これが、花野桜との出会いと始まりだった。


物語りの始まりの第一部です。

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