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Ω's War  作者: あいますく
戦争開始
9/11

六話 Ice Age

「須田宮君!」

須田宮君はあの冷気の中をくぐり抜け、私のいる方へやってきた。

「あの人…先にあいつを倒すまで休戦だって…」

「そっか…」

私は二人を見ていた。雷と氷がぶつかり合う。

“Ice Age”は冷気をだんだんと弱める。それと比例するように雷も弱くなる。


二人の間に静寂が流れる。その距離わずかに数歩程度であった。

二人は無言で構える。

武道に疎い私には分からないがきっと高尚な武術に違いない。


“Ice Age”が蹴りを入れる。“Plasma”は右手で受け流し、左手を打ち込む。雷は纏っていない。しかし、それは確かに“Ice Age”の鳩尾に入った。それにより、体制を崩す。それを見逃さず、“Plasma”は右手を振り下ろす。が、“Ice Age”は右手で受け、一度距離を置く。

「ふむ。鈍ってはいないようだな。」

「小癪な…貴様は力を使わないつもりか?」

「君が使わないなら。」

激昴、というのが正しいだろうか。

怒りに任せて冷気を纏った拳を突き立てる。

が、巧みに躱して、背後に回り込み、正拳突きを打ち込む。

数メートル吹き飛んだ。

相性は最悪だった。広範囲に影響を及ぼす“Ice Age”では局所的に高エネルギーをぶつける“Plasma”とは相性が悪すぎた。

「君の拳には戦いの美学がない。師匠にも言われていただろう。」

「戦いに美学など不要!ただ勝利こそがあればいい!」


一気に距離を詰める。首をひっつかむ。咄嗟のことでプラズマの展開が遅れる。首が凍っていく。雷の拳を打ち込む。怯ませる程度であったが首を離してしまった。


速すぎた。あまりにも速すぎてついていけない。


“Ice Age”は冷気を指先に集中させる。これまでにない攻撃。恐らくは弾丸のように冷気を射出するのだろう。この短時間で新たな攻撃を編み出したのだ。


即席の冷凍弾丸が放たれる。プラズマの分解速度では追いつかない。

弾丸が腹部を貫通する。肉が凍る。血も流れずただポッカリと穴が空いた。

「ぐっ…」

「俺はお前さえ殺せればそれでいい!お前を殺せばこの世に俺より強い者はいない!」

「そうか…あの試合は君の唯一の負け戦だったのか…」

「その通りだ!貴様さえいなければ!」

「やはり…お前はわかっていない。」

「なんだと…!」

「武道とは強さを追い求めることではない…己が心を律することである!」

雷撃を放つ。体を貫通する。その場に倒れ込んでしまう。

が、その時、大地から氷の槍が“Plasma”に突き刺さる。

お互い満身創痍であった。それでも彼らは止まらなかった。

私はただ呆然とそれを見ていた。

雷撃が私のそばに飛んできた。氷塊が私の隣に降ってきた。

それでも私は二人の死闘を見続けていた。


空が白み始めたころであった。

二人の戦士は互いの胸に氷と雷撃を浴びせた。

片方は憎しみを、もう片方は哀れみを乗せていた。

二人同時に膝をつき、倒れ込む。

この戦いは相打ちに終わった。


「終わったようだね。」

いつの間にかへスースがそばに立っていた。

「つまり、そこの少年が最後の一人になったわけだ。」

指を指した先に、須田宮君がいた。

「さあ二人とも、着いてきたまえ。勝者の部屋に案内しよう。」

私たちは釈然としないような顔を見合わせた。


これでいいのだろうか。

俺は勝っていない。

勝っていないのに勝者だなんて。

いっそ願いが叶うなら…

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