四話 Plasma 中編
「君は全ての調停をなす者、"審判"としてこの戦いを見届けるのだ。」
審…判…?
「あっ君がShieldじゃないってことね。」
男は親指を立てた。
姿がない声は告げる。
「なぜあなたは真面目にできないんですか…」
「あー。素?」
「まあこの際ですし、私が詳しく説明しましょう。」
「とりあえず、あなたにはこちらに来ていただきましょうか。」
「すぐに神崎ビルの11階に来てください。そしたら、まあ、わかると思います。」
「なんだかんだ言って君も雑じゃ…」
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「ん…」
目が覚めると、外は真っ暗だった。
スマホを見ると2:30だった。
「すぐに…か。」
私は足音を忍ばせ、外に出た。
秋とはいえ、やはり深夜は寒い。
スマホに“神崎ビル”と入力する。
どうやら徒歩で行けるようだ。
「ここ…かな?」
目の前には廃ビルが建っていた。
中にこっそりと忍び込む。
崩れた壁とは対称的にエレベーターのボタンだけが光を放っていた。
「大丈夫なのこれ…」
↑ボタンを押すと扉が開く。中は普通のエレベーターだった。
「11階…って10階までしかないじゃん!」
仕方なく10階のボタンを押す。
10階はエレベーターの周り以外はほとんど崩れていた。
真上を見上げると秋の星が空に満ちていた。
「11階なんてないじゃん!」
私は星に叫んだ。
「こっちだよ。」
エレベーターの中から声が響いた。
「えっ…」
エレベーターの中にあの、男が立っていた。
黒髪で痩せ型。目鼻立ちがしっかりしている異質な男。
「この電話の奴を11回押すんだよー。」
「あ、ありがとうございます。」
男は非常電話のボタンを11回押した。
するとエレベーターは下へ降りていった。
「えっ、これ下に…」
「上がないからねぇ。仕方ないね。」
「どういう事なの…」
11階
そこは不思議な空間だった。
まさにあの夢と同じ空間。周りは真っ暗なのに中心の球体がぼんやりと光っている。
夢ではよく見えなかったが、球体は17人を映していた。
「よく来てくれたね、こんな時間に。夜更かしは美容の大敵だよ?」
男は改めて、と言ったように仰々しくお辞儀をした。
「仕方あるまい。まさか審判が何も知っていなかったとは…」
主無き声が響く。
「えっと…あなたはどこにいるんですか?」
「ここではない、どこか。」
声ははぐらかすように答えた。
「まあ、彼については『そういう奴』って認識で構わない。今日は君の話をするために来てもらったんだからね。」
男は笑いながらそう言った。
「私は“Life”の力を持っている。名前は…そうだな、ヘスースだ。ヘスースと呼んでくれ。」
「あなたも…能力者?」
「私は初めの天統べる争いの勝利者さ。」