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Ω's War  作者: あいますく
戦争開始
2/11

一話 Dark

爽やかな秋晴れ。私は秋が好きだ。この並木道が赤や黄色に染まっているのは、いつ見ても最高に美しい。たまたま、この道には誰もいなかった。そうだ、写真に撮って愛子たちに見せてあげよう。

そう思って、スマホを構えた時だった。


突如、左からすさまじい蒸気。それとともに一人の男子学生が吹き飛んできた。

私はその男子学生に見覚えがあった。

「え!?須田宮君!?どうしたの!?えっ!?てゆか!?何あの蒸気!?」

彼は須田宮慎也。少なくとも昨日までは蒸気を出してはいなかった。

「ああ、鏡さん!ちょっと今大変なことになってるから下がってて!」

「はあ!?」

そういった直後、左から闇に呑まれていく。

その闇の球体はなにかが中心にあるのだろう。しかし、それには光が届かない。

「えっ!?なにあれ!?」

「今はこれを止めないと!」

そう言うと、須田宮君は闇の中心に向かって飛び出した。そのあとには、飛行機雲のように蒸気が残っていた。


しばらくの間、蒸気が噴き出す音、鈍い打撃音、そんな色々な音が聞こえてきた。もう何がなんなのか。

そして、闇が収縮していき、中から須田宮君が出てきた。

「中に何がいたの?」

「わからない。でも、人間であることは確かだ。顔を殴った感触があったからな。」

「顔って…」

そう言う間に闇は完全に収束した。そしてその中にいたのは…

「日向先輩!?」

中にいたのは私たち2人が所属するオカ研のリーダー格の1人である日向蘭子だった。

キレイに顔の中心部を殴られていて、鼻が折れ、前歯は無くなっている。

「気絶してるね。」

「先輩のこと、どうする?」

「とりあえずその木の下で寝かせておこうよ。」

そういった時、2人のスマホがメールを知らせた。

その内容は、大学が数日間休校になるという事だった。

「見た?大学休校だって。」

「何があったんだろうな?」

「見に行ってみる?」

「先輩はこのままか?」

「いいでしょ。別に。」

先輩には多少の恨みがあるから。とは口に出さない。

「扱いが雑だな。」

「それよりも早く大学に行こうよ。」

「あ、ああ。」


伊野澄大学に着いた。大学の門は固く閉ざされていた。そしてその中ももちろん、誰もいなかった。

「何も無いね。」

「いつもなら人はもっといるはずだよな。連絡が来たのは今なのにおかしくないか?」

「確かに…」

「先輩に話を聞くしかなさそうだな。」

「先輩はわかってると思うの?」

「わからないが、能力者だったろ?」

能力者。その言葉で、さっきまでの現実離れした事が蘇ってきた。あの夢も。

「そうだよ!さっきのやつはなに!?」

「今更かよ!」

「驚きすぎて思考停止してたんだよ!多分!」

「いや、俺の場合は目が覚めたら、なんか蒸気出てるなぁってなって。」

「なんでそこで驚かないの。」

「いや、目が覚めた時から使い方がわかってたんだよね。」

「むむむ…わかんない。」

「まあ、先輩に話を聞きに行こう。」


そしてさっきまで争いあっていた所に戻ってきた。せっかくの綺麗な並木道が酷いことになっている。

「先輩ー起きてくださいー」日頃の若干の恨みを込めてぺしぺし叩く。

「せーんーぱーいー」ぺしぺし

「起きろー!」べしべし

「う、ううん…」

「あっ目覚めた!」

「起きろ!」べしべし

「痛い!起きてる!起きてるから!」

「あっ、おはようございます。」

「なんなのよ…」

「先輩大丈夫っすか?」

須田宮君がそう言うと、日向先輩は須田宮君をキッと睨む。

「あんたは…!」

「えっ?いや、確かに顔殴ったのは悪かったと思ってますから!」

「違うわよ!私はあなたを倒さなきゃならないの!」

「え?何でですか?」

「あなたも見たんでしょ!?あの夢を!」

「見たの?」

私はあの夢を思い出しながら言った。

しかし、須田宮君は数秒間考え、

「いや、俺夢見ないタイプだから…」と言った。

「よくそんなので予知夢見たとか言えたわね!」

「話合わせとかないと進まないじゃないですか。」

「今はそんなこと話してる場合じゃないですよね。どんな夢だったんですか?」

「…まあいいわ。1番熱心な鏡さんが言うんだったら仕方ない。」

ごめんなさい。話合わせてるだけです。

「なんか暗い洞窟の中にいるの。そしたら何も無いはずなのに声が聞こえて、『お前は“D”に選ばれた。お前が勝ち残ることが出来れば、願いを叶えよう。』って言ったの。そしたら目が覚めて、まずは“Steam”を倒せって感じたの。」

「ああぁ…あったような…無かったような…」

「って事は須田宮君はSteamの能力者って事?」

「そうなるな。で、先輩はD?」

「恐らくDar…」

そこまで言葉を発すると、パクパクと口を動かすが、音が出ない。そして…

「がっ…が…」

先輩の周囲に『DROP OUT』の文字が漂い始めた。


そして、先輩はだんだんと姿が消えていく。先輩の口は「助けて」と動いているように見える。須田宮君は手を伸ばす。しかし、文字はバリアのように阻む。


ついに先輩は頭だけが残り、そして、全て無くなった。まるで何も無かったかのように。


「今のは…」

「DROP OUT…脱落…」

「…先輩を思っても仕方ない。願いを叶えて、生き返らせればいい。」

「…そう…だね。」

いくら嫌な先輩でも、こんな別れ方をしたら悲しい。

今は須田宮君の言う通り、前に進むしかない。


そうして、この能力戦争が始まったのだ。


「早くも脱落者が出たか。役者はちゃんと揃ってるね?」

「揃っている。が、今回はイレギュラーだ。」

「イレギュラー?いつも通りじゃないか!」

姿無き者はため息を吐く。そこに息が、存在するのかはわからない。

「これだからあなたは…」

「俺のことはαと呼んでくれ。呼び名があるのはいい事だろう?」

「α、か…」

何も無い空間に2人が、正確には1人しか見えないが、この戦争を見守っていることを、“プレイヤー達” は、まだ知らない。

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