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始まりはいつも唐突で…

時は現代夏場、場所は沖縄

となれば、当たり前のように外ではセミが五月蝿く鳴き続け、空はいっぺんの曇りもない晴天だった。

そんな中、外に出ず人々が知恵を振り絞って作り上げた最高傑作のエアコンを風量MAXでつけながら

部屋の主である「比嘉ひが のぼる」は、

友人である「旭川あさひかわ 輝斗てると」と午前中からテレビゲームで遊んでいた。


のだが…


「あー!やっぱだめだ勝てねぇ!」


そう言って比嘉昇は持っていたゲームコントローラーを自室のベッドに放り投げた。


「だから、お前は動きが直線的なんだよ。」


そう言う旭川輝斗は掛けている眼鏡をクイッと軽くあげ、手持ちのスマートフォンに電源をいれていじりだす。


彼らは高校最後の夏休みを楽しんでいるわけだが、如何せんやることが無さすぎて暇をもて余していた。


「なぁ~輝斗ぉ~、なーんかやることないのか?」


「と、いってもなぁ…」


彼らはこの夏休みを結構遊び尽くしており、毎日のように朝から晩まで遊んでいたのだが、そうしていれば当たり前のようにやること事態が無くなってきていた。


「海は五回は行ったし祭りもいった、バーベキューは三回はしたし、川にもいった

映画館とかゲーセンとかも色々いったし、俺は車の免許も取った。」


「あと夏休みは一週間しかないんだし、もういいんじゃないか?」


「逆にあと一週間しかないんだぞ!?俺たちの一生に一度の高校生最後の夏休みは!

…あ、そうだ。」


そう言うとなにかを思い出したのか、昇は立ち上がり

部屋の勉強机の棚のなかを探りだした。


「どうしたんだ?なんかあるのか?」


そう言って輝斗はスマートフォンをスリープモードにして、昇が何をやってるかを覗き込んだ。





「そーいや、ここら辺に…


あった!」




「?」



そう言って昇が取り出したのは、一枚の手紙のような物だった


「これは?」


輝斗はいぶかしげな顔をながら手紙をビリビリと開ける昇に聞いた。


「あー、夏休みに母ちゃんが暇になったら開けろって言われた手紙。」


「お前の母ちゃんて確か海外で何かの研究か何かしてるって言う…」


「そうそう、全く帰ってこないうちの母ちゃんが珍しく渡してきたものだよっ…と!」


そう言って取り出した封筒の中身には手紙と何やら手のひらに乗る程度の小袋が入っていた。


「こう言うのはどっちから見たらいいんだ?」


昇は封筒のなかに他になにか入ってないかを確認しながら輝斗に聞いた。


「まぁ、単純にいけば手紙だろうな…」


「んじゃ、てきとーに読んでみますか!」


昇は持っていた破けた封筒を投げ捨て、手紙を広げ内容を音読した。


「えー、『この手紙を見ているってことは夏休みを謳歌して、相当暇になったってことだろうと思う。』」


「まさにその通りだな。」


輝斗は首を縦に振りながら、手元にあった氷が溶けて薄くなった麦茶を飲み始めた。


昇はそんな返しをしてきた輝斗を横目に、手紙の続きを読み上げる。


「『んでもって昇 "達" にはやってもらいたいことがある、それは』…」


そこまで読んで昇の口がとまった、単純に漢字が読めないと言う話では無いのだろうと輝斗は感じ取った。

それに、"達"となると輝斗も含まれてるのであろうと推理できる。


「嫌な予感しかないな。」


「…」


その嫌な予感が的中したのか、昇からは滝のような冷や汗がにじみ始めていた。


昇は意を決したのか、生唾を飲み込んで次の文面を読み上げた。


「『沖縄県名護市にある私の知り合いに会ってこい、そこには昔から研究対象として残していた物件がある、その謎を解いてこい。』


……はぁ。


"また"か…」



「また、だな…」



"また"というのは昇の母は何ヵ月かに一度このように仕事の手伝いと称した課題を投げ掛けてくるのだ。



参加は強制、課題は様々に行われ

前回は二ヶ月前、四国を又に駆けた鬼ごっこが終わったばかりで昇たちから見ると、「またか…」と言わざる終えなかった。



「はぁ…で、今回はどんな無理難題が押し付けられるのやら…」


そう大きくため息をついた輝斗は、立ち上がりクーラーで冷え固まった体を背伸びで無理矢理伸ばして、飲み物やお菓子のゴミなどの片付けを始める。



「でも報酬はそこそこないから、結構楽かもな。」



そう重苦しそうな言葉を吐きつつ、昇はゲームを片付けた。


「まーでも用心に越したことはないだろ。

一回帰って準備してくるよ。」


「ああ、じゃあ車お前ん家の前に寄せとくぞ。」


「頼む。」


そういった後、輝斗は手持ちの財布などが入った鞄をもって立ち上がり玄関に向かい、昇も出迎えに玄関まで移動した。



「ん、じゃーな。」


「おう、後でな。」



そうやって軽い言葉を交わすと輝斗が玄関を出る前に何かに気づいたのか足を止めた。


「そーいや今回はあいつらも連れていくのか?」


「あー、まぁでもあいつらも夏休み終わりそうだから暇をもて余してそうにはないが…」


「んじゃ、帰りに金剛に聞いてみるよ。」



「おお、頼む」



輝斗は携帯を開きながら玄関を開ける、もわっとした暑い空気が玄関を包み昇の背中の冷たい風が思わず武者震いをさせた。


「んじゃ三十分後にな」


そういって輝斗は足早に玄関から出る、昇も玄関にある外掃きのスリッパで外まで出て見送りをした。

すると、別れ際に昇は何かを思いだし輝斗に声をかけた。


「あ、ついでに俺のアレも持ってきてくれないか?」


「あー、わかったよ。

じゃ、今度こそまたな。」


「おう!」


そういって彼らはそれぞれの帰路についた。

この真夏の奇妙な冒険と出会いにまだ気づく余地は無く…




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