寒い日
昔の物。短いです。ポエム・百合くさいので注意。
二人は何も言わない。
玄関で靴を履き変え、すでに履いた女の子は履いている女の子を、その様子を見ながら待っている。
彼女の真っ黒な瞳は、日が傾き暗くなった光で、より一層暗く、虚ろに見える。
息は真っ白に凍り付いて、霧散した。
靴を履いた女の子は立ち上がり、待っていた女の子と目を開わせて、笑った。
言葉はなかった。
彼女もそれに笑い返すと、二人は歩き出す。空に浮かんだきれいな夕暮れ雲を眺め、心地よいとも感じられる寒さに震えた。
いつもの帰り道。
二人は言葉を交わさない。
寒いね、とか、きれいだね、とも言わず、二人で同じ物を見て、共通の思い出を持つ。
二人の間には、それだけで十分だった。
十分な幸せがあった。
鼻と頬が赤くなって、感覚も曖昧になる。
手はとっくに冷え切って、乾燥した肌が突っ張るのを感じた。
手を擦って暖めようとしたが、それも諦めてしまった。
並んで歩く彼女たちの一人が、もう一人の手を掴んだ。
捕まれた少女は驚かず、さも当然のように、その手を掴み返した。
手をつないだ二人。
冷たい皮膚と皮膚が重なり合い、少しも熱を生じない。
それでも、二人は幸せだった。
言葉を交わさなくても、いてくれるだけで。こんなに寒い夕暮れに、一人でいないことが。そばにいてくれることが、二人の幸せだった。