馬鹿な話
昔に書いたものをあまり手直しせずに投稿しました。
座っている二人の旅人の内、一人が話し出した。
―――昔話だと思って聞いてくれりゃぁいい。
一人の女が突然現れてさ、しかも驚いたことに、そいつは自分の名前も、性別さえ分かっちゃいなかった!
顔はパッと見ても可愛くてさ、体はボッキュッボン、おっと死語は慎んでおくよ。
でさ、笑った顔もそれなりに可愛くて、でも言った言葉が「私は誰ですか?私の名前は何ですか?私は何をしてたんですか?ていうか、あなた、誰ですか?」でよ!笑っちゃうよな!
・・・。
笑えよ。
まあ、こんな事言っててさ。マジでバカじゃないかって思ったわけよ。こんな男の前にいきなりふらふらと無防備な姿さらしてよ、え?そんな風に見えない?
バッカ、昔の話しだよ。昔の俺もなかなかの悪だったんだぜ、一匹狼みたいなよぉ。
・・・・・・・笑えよ。
話を戻すが、それで親切な俺はまず、自分の性別ってやつを思い出させてやったんだよ。あ?どうやってって?・・・んだよ。察しろよ。男にはあって女にはない物を差し込んだだけだよ。あ?やっぱり説明しなくていい?・・・・・・・ハア。
そしたらさぁ、女はまた笑うんだよ。「ありがとうございます」ってさ。
終えたら放り出そうと思ってたけどあまりのバカさにもう全部俺が決めてやろうって思ってさ。
次に悩んだのは名前だよ。なにせ、名前なんて付けたことなかったからな。
これには散々頭を抱えた。最初禄な名前しか出てこなくて、やっとできたと思ったらもう三日も経ってんの。思わず爆笑しちまったよ俺ぁ。
で、結局できた名前は・・・え?ちょっと待て?なんでぇ?あ?・・・当てる?
無理無理!だって俺が三日考えて作った名前だぜ!?
そんなついさっき会ったばかりのあんたに分かるはずがねぇ!
まあ、当てたきゃ当ててみな。まあ、無理だと思うがな。
・・・・・「アイリーン」?
なんでお前・・・。
お前まさか。
いや・・・違うよな。
何勘違いしてんだ俺。いや、今の忘れてくれ、俺の勘違いだ。
ありえねえ。
あんた、なんでその名前を?顔に書いてあった?はぁ?ふざけてんのか?
・・・まあいい。それで女は大喜びしちまってよ。なんだかこっちまでうれしくなっちまったんだよな。不思議なもんで。
そこで話は終わり。
それからしばらく男と女は仲良く暮らしましたとさ。あ?今はどうしてるって?俺が知りてぇよ。
話の続きを知りてえのなら、女は男がプロポーズした瞬間にどこか走り去ってしまいましたとさ。だな。
今思えば何であんな女の為に三日間も名前考えちまったんだろうな。あの後すぐ放り出せばよかったのに。おっと、旅人さんにはこの話は退屈だったかい?
ハハッ。お世辞は結構。
あ?本当だって?・・・まあそうゆうことにしとくよ。
そういえば今旅をしてるのは何故かって?
ハッ・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・笑うなよ。
絶対笑うなよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・アイリーンを探してる。
ばっ!こっち見んな!
今俺だって恥ずかしさで死にそうだ!
・・・まあ、この話の中で一番バカだったのは俺だったってわけで。まさか、彼女の笑顔が頭の中こびりついて離れないとか…うわっ自分で言って恥ずかしい!お前は笑うな!
まあ、そういうバカな奴らの話だったと頭の隅にでも置いといてよ。
俺はもう行くけど。あんたはまだここにいるのかい?そっか。じゃあまたどこかで会えることを祈って。
じゃあな。