変態忍者あらわる
卯月はセーラー服のまま次期国王として国民に紹介された。
怖い顔で仁王立ち。卯月人見知りだからね。
かわりにあたしがみんなに手を振ってあげた。お姉ちゃんだからね。えっへん。
城から見下ろせる国民達はみんないろんな人たちだった。さすが異世界。
「どういう説明だよ!納得してんのか!?」
「やだなあ、葉月。あたしは正直な感想をね。よくわかんないし。」
「そっちが正解だろ!本当は。俺もわかんねーよ。何人?なヤツ多過ぎ!
侍や着物は昔の日本風だろ、チャイナに、西洋ドレスに、軍服もどき。毛皮はなんでだ寒がりやさんか?
腰布だけの原始人風のヤツもいれば、仮面被って何かの戦隊ですか?正義のために戦っちゃう感じですか!!?わけわかんねー!!」
「葉月、ハウス!」
「ワン!......って、俺 犬じゃねーし!」
「まあまあ、おちついて。つまりいろんな人たちでいいじゃない?」
「ああ、そうか。って、納得していいのか?それでいいのか!!?」
「...こほん。この国は代々、王家の御子は皆、異世界に渡ります。そして、18歳に国に戻られる。異世界の知識や文化を身につけて。
御子様が戻られるたびに、新しい文化をもたらされます。国民は影響され、ブームが起きるのです。
そして、しばらくすると、好きなスタイルに落ち着きます。
代々、家風として文化を守る一族もありますが、基本的には個人の自由です。つまり、ばらばらな出で立ちになります。」
「なるほど、なるほど。」
「お前、本当はわかってねーだろ。」
「失礼な、チミィ。フムフム国なのだろう。ふむふむ。」
「なんだそりゃ、弥生、テキトー過ぎ。」
「じゃあ、今度はセーラー服が流行るのね?わあい!あたしってば流行先取り!」
「っ!」
「弥生様、それでは初代国王様から歴史をおさらいしてみましょうか。初代国王のお名前はもう覚えてくださいましたよね。」
「えーと、なんだっけ。むっく?・・・もっく、やっく・・・まっくだ。まっく!」
「お前、本当に名前覚えるの苦手だよな。特に片仮名系?マキシミアンだっちゅうの。」
「おっしい!まっきーだった。」
「惜しくねーし、まっきーもちげーし。」
「なっ、なんて不謹慎な!!もう、我慢なりません!わたくし、これで失礼させていただきます!!」
フランス人形みたいなゴテゴテかさばるドレスを着たくるくる巻き毛の大きいお姉さんは(おばさんっていったらだめだめよ)、引きつった顔でドスドスと出て行ってしまった。
毎日違う人がやってきては何か覚えさせようと大きな声を上げたり、鞭で叩いたりするけど、大概は怒ったり泣いたりしながら出て行ってしまう。
何がしたいんだろう。異世界は不思議だなあ。
「あーあ。やっぱ、こうなったか。弥生にお妃教育は無理だっていってんだけどなあ。(ボソッ)俺にはつごういいけど」
「葉月、卯月は?」
「聞いちゃいねーし。ああ、卯月なら今日は騎士団との顔合わせ。剣道やってたって言ったら手合わせしたいんだってよ。」
「ええー!なにそのおもしろいべんと。あたしも見たい!」
「そりゃあ、俺だってみたいけど、無理じゃね?しばらくお前は誰にもあわせるなって卯月が、っとやば!ないしょだった。」
「ちょっと、聞こえてるんだけど。なに、それ!ずっるい、卯月。あたしにないしょで1人だけで自己紹介してるなんて。お姉ちゃんを自分で紹介したいのかなあ。卯月も成長したよねえ。」
「え?なんでそういう解釈?」
「ああん?なにか?卯月だってやるときはやるんだからね。」
「はいはい、そうでした。そういうことにしときましょう。」
「それで、手合わせどこでしてるの?」
「ええと、どこだったかなあ。」
「うわあ、広いねえ。」
部屋の外に立ってた警備の兵隊さんに案内してもらえた。
お城は広くてすぐ迷子になっちゃうし、案内してもらうって便利だねえ。むふふ。
大きな木が何本か生えているだけのだだっ広いグラウンド。運動会とかやるのかなあ。
「おい、弥生。ちゃんと覚えろよ。1人にしないようにはしてるけど、何かあったときに迷子じゃシャレになんねえからな。」
「うーん。自信ないけど、がんばるよー。」
誰か見つけて案内してもらうからへーき、へーき。
「いまいち、真剣味にかけるんだよなあ。まあ、危機感持てって方が無理あるもんなあ。」
「あれ、卯月は?っていうか、誰もいないじゃん。」
「本当だ。いつの間にか案内のヤツもいなくなってる。」
「異界の血は我が国にはいらぬなり。おとなしく元の世界へ帰るべしでござるなり。」
うわ!びっくりした!
どこから現れたのか、全身黒タイツでなぜか白い包帯を顔だけに巻いたおじさん声の人がすぐそばに立っていた。背中に刀?をおんぶ紐でくくっている。
「おお!変態忍者?格好いー!!なに、なに、本物?」
「弥生、近づくな!」
「我らはこの国を守るものなり。たび重なる異界の血の混成が我が国に危機を招くことを恐れるなり。」
「おおー!皆の平和を守るおまわりさんねー!格好いー!!敬礼!!」
「いや、我らは影で動く者なり。日の当たる場所で賞賛される訳にはいかないなり。」
「さっすがー。おくゆかしー!!」
「おい、弥生テンションおかしいぞ。怪しいヤツとなれなれしくしゃべってるんじゃねー。なにかされたらどうするんだ!』
「今日は警告なり。おとなしく帰れば何もしないなり。」
「なりなりさん、平和を守ってね。あたし応援してます!!握手してください!!」
「いや、そんな。我など若輩でアルからして。年頃の女子の手を握るなど、はなはな恥ずかし、いや、遠慮、するなり。な、な、な、なれ、なれなれしく・・・///・・・や、やめるなり!いや、嫌ではないなり・・・///」
右手を無理矢理つかんだだけで、あわてふためいているけど、ぶんぶん握手。離そうとしたらいつのまにかなんか両手でつかまれていくら振っても振りほどけないんだけど。なんで?
「卯月はあたしのかわいい妹だから。よろしくね!なりなりさん。恥ずかしがりやさんだから自分からは話しかけられないかもだけど、仲良くしてあげてね!」
ふふふ、お姉ちゃんは抜かりなしよ!
「い、いもうと?妹とはどういうことなり?」
「あれ?この世界には妹っていないの?年下の女の子の兄弟のことだよ。」
「おんなのこ?」
「うん、卯月は女の子。正確にはまだモガッ」
「そういうこと!卯月は女の子だから。そこんとこ、よろしく!」
「な、なんと・・・。おん・・・な・・・とは・・・。」
よろけながら、ふらふらと歩き出したなりなりさん。どうしたのかな?
「次代様が女。では、連れ帰ったこのお方は妃ではなかったのかなり。なんという・・・、われらは勘違いをしていたなり。」
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