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3


彼女は、その時の私には、ほとんど理解不能な事を、そのあたりまで話して、やめた。

それから私を見た。


「あなたって、いつも楽しそうね。」


気が付けば、こんな事態にも、にやついている私がいた。

さっきは少し怖かった。

ここへ来たとき。


しかし、目の前の彼女が、何やらわけのわからないことを真剣に話し続けている姿を見ていると、なんだか笑いがでてきたのだ。

「…大変だったんだね。」

分かったことだけを、口にしてみた。


「馬鹿にしてるの。」

「馬鹿にするってなに?」

私はその時5歳だから。

でもだから、彼女の言った『馬鹿にする』の意味を、すぐに吸収もした。


「馬鹿になんて、してないよぉう。」

少しふざけて言った。


彼女は、冷たい目線を投げかけた。


「とにかく。」


「あなたが、ここから落ちたら、私は負けらしいのよ。わかった?」

「はい。」

にやにやしながら、私は答える。


「笑わないでくれる?」

彼女はいらいらしている。


「今日は、戻りましょう。」

彼女は私の方を向き、私は彼女を見上げた。

「息を吸ってみて。大きく、ゆっくりね。」

言われる通りにやってみた。

辺りの冷たい空気が、鼻を抜けて、口の中に広がり、

体の中に入る感覚がした一瞬、彼女が白い靄になって、

どこかへ消えてしまった。



薄暗い山の中に、一人取り残された私は、途端に怖くなった。

呼びたくても、名前も聞いていなかった。

帰り道なんてわからない。

私は泣き叫んだ。


もう暗くなってしまった。

私は泣き疲れて、少し太めの幹の、その下にある、

腰かけにちょうど良い石を見つけ、座った。

寒かった。


頭がくらくらする。もう歩けない。


私を助けるんじゃなかったのか、あいつ……。

私がイライラさせてしまったから、

怒って、いじわるしてるのかな……。

それにしても、寒い。

もう疲れてしまった。

暗闇と一体になって、私はその後の記憶がない。

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