第2章
私の痛みに終わりは来るの。
私の幸せはどこにあるの。
私はどこからどこへ向かうの。
私は何を夢にみたいの。
未来に何を描きたいの。
それがわからなくて苦しいの。
稀に
本当に稀に。
うっすらと見えそうな時もあったのに
ずっと遠くまで暗い暗い
トンネルにいるようだ。
涙を流しても
救われない。
声をあげても
届かない。
例えば私の死ぬまでは
知らない間に知らない電車に乗せられて
どこへ行くのか知らぬまま
いきなり事故にでもあったよう
そのまま私は
天国か地獄かも
わからぬ世界にまた
放り込まれたとさ。
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また目を開けるとさっきの教室。
まだ気味悪く漂う靄に、私はまた軽く眩む。
腕の辺りから冷気に掴まれたような感覚を覚えると、激しく床に叩き付けられた。
さっきまで私の足元以外に床はなかったはずなのに。
どうして私が何者かに叩き付けられ、そして、その時に限って床があるのだろう。それに私は死んでいるはずだ。床があるとかないとか、そんな次元の話ではなく、これはどんな仕打ちだ。
ここへきて初めて怒りを覚えた。
その時だった。
耳鳴りのような声が聞こえてきて、同時に息苦しくなり、身震いがした。
苦々しい顔になるのが自分でも分かる。
でも初めてではない。慣れた感情。
もやもやもやもやして、腕を太腿を掻き毟る。
両手の五指の爪をたて、髪を掻き揚げる。
そのまま頭ごと膝を抱え込み私はうずくまった。
声の主はそんな私を嘲笑い見ている。
目を閉じているのにそれが分かる。
何度も何度も爪をたて、私は私に傷をつける。
うっすらと血が滲んだ腕を見てやっと、空気が肺まで届くのが分かるような呼吸が出来た。
血が滲んだ腕や太腿や、頬のあたりが熱いのに、痛みを感じることはなく、寧ろそこに神経が集中できて落ち着くことが出来た。
あぁ。そうか。
私があの子を置いてきぼりにしたから。
あの子は危ない目にあった。
声の主はそれを私に教えたかったのだ。
戒めたかったのだ。
そう理解したとき、声の主に気が付いた。
大好きだった父親の声だった。
この感情も生きていた頃もしょっちゅう味わった。
悪気はないのに、よく父親を残念がらせていた。
その度に衝突していた。
最近あったのは、学校の班行動で壁新聞を作成した、その内容についてだった。
放課後も先生に頼み込んで班のみんなとやっと完成させたそれを、授業参観で父親が見てその日の夜、父親は酒を飲みながら批評した。
『あの絵は誰が描いたのか、お前か。あれはちょっと首が長すぎて妖怪みたいだったぞ。
もっとあの記事以外におもしろいことが描けなかったのか?長いだけで読むのに疲れたぞ。あはは。』
はじめは一緒に笑っていた。
だけど我慢の限界だった。
父親の飲んでいた酒の入ったコップをぶちまけ父親に呑みかけの酒を思い切りかけた。
父親はショックで泣いた。
泣いて私の前に正座して説教した。
私はすっきりして、どんなに説教が続いても、自分が悪いことをしたなどとは思わなかった。大好きだったはずなのに。
そう、大好きだったから、認めてもらいたかっただけのなのに。
私は思い出しても父親に認めてもらった記憶がなくて、その度に胸がさっきのようにぐちゃぐちゃに掻き乱されるのだった。
だからさっきの感情にも慣れていた。
慣れるというよりは、それが私の日常になっていたから、苦しかった。
死ねば少しは楽になるのかなとか、思ったりしたこともあった。
しかしこれでは結局、死んでも一緒ではないか。
私はずっとこの感情から解放される事はないのか。
いつの間にか、この子に教室であった出来事を話しながら、そんな事をぼぉっと考えていた。




