潔癖
床にクッキーが落ちた。ある人が素早い動きで拾い上げて、口に運んだ。
「汚いなあ。床に落ちたものを食べるなよ」
「10秒たってないからセーフ。子供の頃よくやっただろ」
「俺は潔癖症だから一切。一日朝と夜の二回風呂に入るほどだ」
「なあ、人間の顔にはダニが住んでいることを知っているか」
「え、何それ。ダニってペットが飼うものじゃないのか」
「人間にもいるらしい。誰もが皮膚に飼っている」
顔に不安の色が浮かぶ。全身をなめまわすように見た。
「それって冗談じゃないだろうな。俺は信じないぞ」
「本当だって。だいたい、体の中にも菌類がいるのだから不自然ではないし。綺麗かどうかなんてただの感じであって、よっぽどじゃない限りは殆ど意味ないぞ。一般家庭より病院の方が汚いって話も聞く。だから、あまり気にするなよ」
「……」
後日、潔癖の人は、浴室にて全裸で発見された。家中の洗剤が浴槽にぶちまけられていた。