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【8】地竜大好きおねいさん

やっとこさ翌日・・・。初めの方なので腰を据えてじっくりと、ってな事でお願いします(汗)。

うぬぬ、時として勢いだけではダメな時もありけり。

でわでわ読了お願いします!

 頭部の爆発を再度ウエットにすることでリセットできた私は、ようやく宿屋『ふとった猫』亭の一階へと足を運ぶ。


 今度はちゃんと頭髪乾燥魔具(以下ドライヤー)にて髪を乾かしましたよ!


 キュアンがドライヤーかけてくれたので、私の寝癖を見て爆笑した事には今は目を瞑ってやろう・・・。イケメンの笑顔にキュンっ!なんて、し、してないんだからっ!

 しかも中々のテクニシャンだ。ドライヤー中何度寝そうになったことか。その都度髪を引っ張られて起こされたけど。

 アメとムチなのかい?そっちもテクニシャンなのかい?おおぅ!?


 早朝の為か宿の一階には誰も居らず、キュアンと共に小さなカウンターの前を通り過ぎて外へ出た。


 外の空気は冷たく澄んでいる。

 ひょこひょこ歩きながら大きなあくびをひとつかました。


「相変わらず緊張感の無い奴だな。」

「違うっ!ちょっと筋肉痛が悪さをですね・・・。」

「はぁ?昨日そんなになるまで動いたか?」


 くっ、・・・この元騎士様めっ!自慢か?体力自慢なのか!?


 体力のない身体が今更ながらに恨めしい。

 現在の私の動きを比喩するなら『ロボット』だ。この世界にはロボットは存在してそうにないので、つまりはただ怪しい動きをする人物だ。


「筋肉痛くらい法術で治せないのか?」

「あっ、そっか。」


 ナイスアイディーア!その手があったか。

 私は早速筋肉痛を治すイメージで法術を行使した。


「おおぉ~!体が軽くなった!便利便利~♪」

「・・・お前、休まなくてもやっていけそうだな。」

「んー、でもやっぱり睡眠は摂らないと身体がまいっちゃうと思うよ。法力も無限じゃないし。」

「お、おぉ。そーいやそうだったな。」


 おっと、今の物言いは子供らしくなかったかな?ついつい思った事を脊髄反射の如く言い返しちゃうくせがあるんだよね。気を付けよう。


~~~~~~


 清々しい朝の空気の中、私達は約束のクロロフィルンの町の北門へ向かった。

 朝靄で少し視界が悪いが、歩くのに不便って程でもない。



「おーい、こっちだこっち!」


 北の門の傍まで行くと、屈強な石造りの門より外でカルアさんの呼ぶ声が聞こえた。

 門番をしている衛兵の人に会釈をしてそちらへ向かう。


「お前達で最後だ。」

「すまない。遅れたか?」

「いや、何せ相手がグールだからな。皆気が急いてるんだろ。おーいっ!!今から出発するぞぉ!忘れ物はねぇだろーなぁ!?・・・じゃあ、俺は先頭の部隊に居るから適当に着いて来てくれ。戦闘予定地まで半分の距離進んだら小休憩を取る。その時皆に紹介しよう。」

「わかった。」


 応答を全てキュアンに任せて、二人の遣り取りを見ているだけの私。

 こうして見るとカルアのオッサン、ちゃんとリーダーしてんね。確かに厳ついスキンヘッドに親分的な口調は頼り甲斐ありそうです。



 集まった冒険者達は全部で大体30人前後だろうか。結構大所帯だ。そして二日掛ける遠出の為か、ひとつだけだけど馬車の姿もあった。


「詳しいグールの数は聞いていないが、参加人数を考えると多そうだな。心していた方がよさそうだ。」

「うん。でさ、お兄ちゃん。」

「ん?何だ?」

「グールってどんな魔物?」

「・・・・・・。」


 アレ?いつもみたいに教えてくんないのかな。


「お前、絶対に前に飛び出てくるなよ。」

「わ、分かってるよ。後ろの方に居たらいいんでしょ?」

「あー心配だ。」


 キュアンとそんな遣り取りをしていると、後ろからクスクスと笑う声が聞こえてきた。振り向くとそこには・・・やっぱり美人のおねいさん。しかも少し露出のある魔術師的な服を身に纏う、・・・巨乳美人さんだ。


 もー、そんな要員求めて無いっての。始め以降、本来求めている美形・性別男と全然出会っとらんがな。ちっともウハウハできやしない。


「ごめんなさいね。あなた達の遣り取りがあまりにも微笑ましかったのよ。」


 長く伸ばしたオリーブ色の髪を指でサラリと掻き分けて、おねいさんは言った。

 大人のお色気ムンムンですね。

 私は相変わらず顔色を変えないキュアンを確認して安心しつつ、おねいさんへの警戒度を上昇させた。

 巨乳とは卑怯なりよっ!・・・転生前の私って貧乳ーでしたもーんだっ!


「僕はシャルロード、こっちのお兄ちゃんはキュアンです。おねいさんは誰ですか?」

「あら、失礼したわね。申し遅れまして、私はギルドパーティ『地竜の咆哮』のリーダー、カチュア・ランバートよ。」



*************************

カチュア・ランバート(27)人族♀風魔術師


幼い頃に地竜ゴリオガに助けられ、それ以来崇拝してい

る。生まれも育ちもクロロフィルンであり、町を守る為

にギルドパーティ『地竜の咆哮』を立ち上げた。若くし

てそのリーダーを務められる程、魔術の腕前は高い。

カルアに頼まれて『嘘つき法術師』の監視を行っている。

*************************



 ・・・私の監視かよ。


 くっそーカルアのオッサンめ。

 少しでも見直した私が馬鹿だった!



「『地竜の咆哮』って、おねいさんはもしかして地竜が好きなの?」

「!そうっ!そうよっ!あなたも好きなの?」

「うん、地竜ってやさしいし、かっこいいよね。」

「そーよね!よく分かってるじゃないっ!」

「・・・・・・。」


 えーと、キュアンさん。そんなに冷たい視線をくれなくてもいいじゃない。

 ちょっとばかしカルアのオッサンに仕返ししたいだけなのよ。


「私は小さい頃ナイショで『始まりの樹海』に遊びに行ってね、そこで迷子になっちゃったの。もうここで死んじゃうんじゃないかと心細くなって泣いてた時に現れたのが地竜、ゴリオガ様よ。始めは食べられちゃうんじゃないかと思ってまたわんわん泣いたんだけど、泣き止むまでじーっと待っててくれてね・・・。最後は私を背中に乗せて町の近くまで送ってくれたの。」


 恍惚と地竜との思い出を語り出したおねいさん。

 しかし、あのリュイの性格を考えたら本当の事だろう。

 リュイったらやっぱ優しいなぁ。

 リュイを思い出して自然に顔が綻んだ。


「わぁ、すっごいやさしいね。」

「でしょう?その後樹海を探索できるまで強くなって何度も探したけど、結局会う事は出来なかったのよね。また会いたいなぁ・・・。ねぇ、シャルくんはどーして地竜が好きなの?」


 言ってもいいのか確認を取る為、キュアンの方へ視線を向ける。


「・・・俺達も地竜に出会った事があるんですよ。」

「まぁっ、本当っ!?それっていつなのっ!?」


 キュアンから話してくれるって事は言ってOKってことだろう。


「昨日だよ。おねいさんが会った『始まりの樹海』に住んでるみたい。」

「やっぱりっ!どの辺りなの?」

「あっと、結構奥だったよ。僕の足じゃ半日近く掛かったから。」

「そっか・・・。ねぇ、この仕事が終わったら私と一度『始まりの樹海』に行ってくれない?地竜と会った場所に案内して欲しいの。ギルドに正式に依頼するから。一人じゃ不安ならそっちの子も一緒でいいからっ!」

「えっ、俺もですか?」

「僕はお兄ちゃんが一緒ならいいよ。」


 別にいずれリュイに会いに行く予定だったし、依頼を受けるかどうかはキュアンに丸投げしよう。

 カチュアさんの熱烈な懇願視線をモロに受けてキュアンは白旗を上げた。


「わかったよ。シャルだけじゃ心配だしな。ただし、この仕事の後はちょっとした用事があるんで、その後でよければ。」

「やった!ありがとー!!」

「ありがと、お兄ちゃん。」

「シャル、いい加減俺に丸投げするの止めろよな。」


 ・・・バレておる。


「うっ・・・、だってそうでもしないと放っておかれそうだし。」

「そんな事はしない。お前から頼んでくる限りは断らんよ。」

「ありがと。今度からそうする。」

「ああ、そーしてくれ。・・・それより俺達もそろそろ出発しないか?本気で置いてかれそうだ。」


 キュアンに促されてそっちを見ると、冒険者ギルドのグール討伐部隊は既に遙か遠くに進んでしまっていた。


「あら、ごめんなさい。楽し過ぎてすっかり話込んじゃった。」

「んーん、僕も地竜の話が聞けてよかったです。」

「・・・いい子ね。貴方達に謝らないといけないわ。本当は私、カルアに『嘘つき法術師』を監視するように言われて来たの。」

「・・・そうなんだ。」

「でも地竜の事はホントよ!依頼の事も本当。だから断るなんて言わないで!」

「そんな事言わないよ。一緒に地竜に会いに行こうね。」


 クックック、これでおねいさんは監視役ではなくなったぜぃ。カルアの目論見は半分くらいは潰れたんでない?お年頃男児に巨乳おねいさんをスパイ大作戦させるなんて、全く持って不届き千万ってヤツよ!


 心の中でガッツポーズしていると、おねいさんはちょっと泣きそうになっている。


 何故!?私何か酷い事言った?ガッツポーズは心の中のみでしたよっ!?

 まっ、まさかおねいさんは心の中を・・・


「やっぱり地竜が姿を見せるくらいだもの。悪い子な訳ないわ。」


 あっ、あー。そっか、何で地竜に会ったのかまだ言ってなかったなぁ。

 キュアンも渋い顔をしている。その事については触れない方が良さそうだ。

 なんせ混乱した地竜に追いかけ回されましたなんて、神聖視されてるリュイの名誉の為にも伏せておこう。


「お詫びに私の風魔術で部隊まで送ってあげるわ。」

「!?そんな事できるの?」

「容易いわよ。じゃあいくわね。」


 わーわー!初めて生で他の人の魔術見る!

 しかも移送系かぁ。どんなのだろ。


「大地を駆ける風よ、その御霊を我に示し力を貸し与えたまえ。汝等の・・・」


 ・・・詠唱要るのか、大変そう。


「仮初めの駆ける力を!『ウィニング・ラン』!」

「わわっ!」


 彼女が持っていた杖を上に掲げた途端、身体が地面を少し離れて宙に浮いた。

 無重力というよりは半重力な感じ。

 同じように宙に浮いたおねいさんが説明する。


「後は自分であの列まで行けるように思い描くだけでいいんだけど、風魔術の才能がないと制御が難しいから私が制御して運ぶわね。」

「うん、お願いします。・・・ってあれ、お兄ちゃん?」


キュアンの方を見ると何だか青い顔をしている。


「お兄ちゃん大丈夫?」

「・・・早く行ってくれ。」

「もしかして疾走魔法で酔っちゃうのかしら。わかったわ。スピード出すから心しておいてね。」

「えぇっ!?」


 こちらとら初めてなんですが!?

 できたら初めは優しくして欲しかった!


「うにょああああぁぁぁぁ!?」

「・・・ぐっ。」


___その日、三人で風になった。



***



「二人とも大丈夫?そろそろ小休憩らしいわよ。」

「・・・ふぁい。」

「・・・何とか。」


 カチュアおねいさんの風魔術で、冒険者部隊に直ぐに追いついた。しかもそこから少し歩いただけで直ぐに小休憩だった。

 気付けばお天道様は真上に位置している。お昼時だ。


「これからここで昼食ね。」

「えっ!?お弁当持って来てない。」

「大丈夫よ。皆で狩りをして分け合って食べるから。きっとカルアから役割分担の指示があると思うわ。ここで待ってて頂戴。」

「うん、わかった。おねいさんありがと。」


 よかったー。

 ・・・しかしキュアンはまだぐったりしている。

 こんな時の法術だよね。恩返しもあるし、治してあげよう。


 私はさっそく酔い治しをイメージして法術をキュアンに行使する。


「おっ!?もしかしてシャルか?疾走酔いを治す法術も使えるんだな。助かった。」

「お兄ちゃん、疾走魔法っていうので酔うの?」

「・・・あぁ。飛竜とかに乗るのは大丈夫なんだが、どうしてもあの独特の浮遊感には慣れないんだ。相性が悪いとしか言いようがない。」


 乗り物酔いみたいなもんだろーか?


「ふぅん?それは大変だね。今度疾走魔法使ってもらう機会があったら、酔い止めの法術かけるから言ってね。」

「そんな事もできるのか?」

「うん(多分)。」

「はぁ、シャルが居てくれてホント良かったよ。」


 キュアンの駆け引きなしの賛辞に、若干照れた私でした。


 これならBL展開も近いかしら。

 にょほほーい♪

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