【7】真面目にお勉強 ※軽い下ネタ注意
軽いですが、下ネタ入りますので御注意下さい。
読んでいると、ヌルーッと下ネタに行きそうな気配をプンプンさせ始めるので、少し読み飛ばして頂ければ回避できると思います。
しかしこの程度でもR指定入れた方がいいんでしょうか?まだイマイチその辺が分からないです。もし必要ならば御指摘お願いします。
酒場でお腹を満たした後、宿屋『太った猫』亭に帰り着いた私達を迎えてくれたのは、看板娘のミルルちゃんだった。視線が合うなり、カウンターから出て私に声を掛けてきてくれる。
「あっ、シャルロードさんお帰りなさいっ!」
「ただいま、ミルルちゃん。」
「は、はい。帰りが遅いから心配してました。」
「えっ?もうそんな遅い時間?」
「・・・えっと、そういう訳じゃないですけど・・・」
なんだか頬を染めてモジモジしているミルルちゃん。
・・・私のこのフルカスタマイズした美形少年の外見に惚れているらしい。
一応この姿よりは年上なので『ちゃん』呼びは失礼だったかなと思ったけど、全然気にしていない様子だ。
「おや、ミルル。その子が昼間言ってた子かい?」
「あ、おかーさん。う、ん・・・シャルロードさんだよ。」
ミルルちゃんの後ろから顔を出したのは、どうやらこの宿屋の女将さんらしい。美人でもないが愛嬌があると言える容貌だ。きっとミルルちゃんも成長したらこんな風になるのだろうなーとか思えるくらいには似ているので直ぐにわかった。
「初めまして。今日からお世話になっているシャルロード・キアと申します。」
「おんや、丁寧な子だねぇ。そっちのカッコイイお兄さんは?」
「あ、はい。キュアン・レーモグラスです。よろしくお願いします。」
ミルルちゃんに置いてきぼりにされていたキュアンは、行き成り矛先を振られて慌てて挨拶していた。
「はいよろしく。アタシはこの宿屋の女将、マルル・マークレットだよ。しっかしあんた達兄弟じゃなかったんだねぇ。うっかり勘違いしちまったよ。失礼じゃなきゃ、どんな関係か聞いてもいいかい?」
「えーと、旅の途中で偶然出会って、そのまま一緒に行動してるんですよ。」
「へーぇ、そうなのかい。そういやアンタ達もう夕飯は食べたのかい?よければうちで食べないかい?安くしとくよ。今日のメニューは」
「あ、すみません。もう食べてきましたので、またの機会にお願いします。」
女将さんの怒涛の問答が気になって、ちょとステータス画面を展開してみる。
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マルル・マークレット(45)人族♀宿屋の女将
宿屋『太った猫』亭の女将。夫を亡くしてから中心に
なって宿を切り盛りしている肝っ玉母さん。野菜料理が
得意。宿の肉料理の評判が良くない事を気にしている。
娘のミルルが宿に泊まるシャルロードという少年に好意
を抱いている事を知り、娘の旦那に相応しいか情報収集
に余念がない。
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なんですとー!
この怒涛の問答はその為かぁー!
私に百合趣味は無い!寄越すなら息子にしてくれ!
そんな私の内心など知らずに、マルルさんは話を進めていく。
「そーかい。残念だねぇ。じゃあ」
「あっ!先にお伝えしときますと、明日は早朝から明後日まで仕事に出かけるんですよ!少し不在にします!でわでわ明日の準備がありますのでそろそろ部屋に戻りますね!」
「あ、ああ、そうなのかい。仕方ないね。じゃあ続きはまた今度にするよ。ゆっくりお休み。」
「はい。おやすみなさい。」
何だか話が長く続きそうだったので、無理やり途中でぶった切った。キュアンとそそくさと二階の借りている部屋に戻る。その時ミルルちゃんの「もー!おかーさんのバカぁ!シャルロードさんとあんまり喋れなかったじゃないっ!」という声が聞こえて、キュアンの痛い視線に居た堪れなくなった私でした。
***
「僕お風呂長いから、お兄ちゃん先に入っていいよ。」
「ん?そーか悪いな。」
「んーん、後でゆっくり入るから気にしないで。」
この世界にはなんと湯船やシャワーがあって、しかもお湯も出るという現代とあんまり変わりないお風呂が楽しめます。個々の部屋にひとつ風呂が付いてるっていうのは嬉しい。・・・大衆浴場じゃなくてホントよかった。
剣や魔法が中心の世界だから、てっきり西洋中世くらいの世界観かと思ってたけど、科学ではなく魔法を利用して作られた魔具技術がある程度発達しているとの事。大国に行けば飛行船もあるのだとか。一回は乗ってみたいなぁ。
ちなみにキュアンが風呂に入っている間に『世界マップ』でこの世界の事を勉強している私です。以下に学んだ事を並べてみる。
今更だけどこの世界は『常世』というらしい。
んで武器と魔術と法術で戦う世界。
魔術は割かし使える人は多くて『魔法剣士』もいるらしい。
でもやっぱり法術は適正云々が稀で稀少なんだとか。
魔力か法力かが身体に宿るらしく、両方宿す人は・・・いない。
じゃあ私はどーなってるんでしょーね?載ってないし。
まぁ死ぬ訳じゃないしいーか。
そして法術の攻撃系統について。
人や動物、神獣、そしてただの魔物には効果なし。ただし魔獣、魔族には特効があるとの事。
・・・ただの魔物って意味わからん。違いはなんなのさ。
うーん、そこは追々詰めていくか。
つまり攻撃系法術ってヤツは使える場所が限定されるけど、人への被害を考慮せずにガンガンいこうぜ!が実践できる術みたい。
へー、ほー、ふーん。
んで、後は『呪い病』について。
これはこのムーア国のお姫様の為の勉強だ。
なんせ明日からの仕事が明後日まであるのだ。ギリで夜までには帰れるだろうってキュアンが言ってたけど、その時に『世界マップ』を見れる時間があるか怪しいので一先ず先にってヤツ。
『呪い病』は誰かが呪いをかけたことによって発症する病の事で、法術で解呪可能、と。しかし呪いをかけた相手に『呪い返し』が行くのか。
『人を呪わば穴二つ』って言うけど、まさしくそんな感じかな。
んー、どーしよーかコレ。
ひどけりゃ『呪い返し』で相手が死ぬらしい。
間接的にしろ人殺しになっちゃうとか、前の世界で刷り込まれた倫理感からすれば躊躇っちゃうよねぇ。
「おい、シャル。上がったぞ。次入れ。」
「ふぇっ!?早いよお兄ちゃん。ちゃんと洗った、・・・の。」
「洗ったに決まってるだろーが。」
___なんという事でしょう。
「ちゃんと服着てから出てきてよ!バカぁっ!!」
いやいや、BL的には美味しいよ。
美味しいが、人には心の準備があるのです。
不意打ちは卑怯なりけり!私のシャイな心が持たんでわないかぁ!
上半身素っ裸のままで私の剣幕に驚くキュアンを押しのけて、風呂場に飛び込みました。マル。
***
・・・ほふぅ、極楽極楽。
湯船にお湯を張って、肩まで浸かってたゆとう私。
いっい湯だっな♪アハハハン♪
とか歌ったら確実に苦情来るな。壁薄そうだし。
え?自分の身体に何か感想はないのかって?
あー、性転物の醍醐味『異性の身体になちゃってドキッ☆』なんてものは私にはあまりなかったなー。始めは確かに少し戸惑ったけどフツーにトイレも行ったし、こうしてフツーに風呂も入ってますが何か?
確かに股間に今まで無かったものが生えて、何だか収まりが悪くて四苦八苦しましたけど、慣れればどーってことありませんでした。
えーい、これでも納得しないならぶっちゃけよう。医療現場の仕事柄見慣れてます、ハイ。サイズ云々も分かります、ハイ。自分にそれが引っ付いてるってのはまた違った感慨があったけど、既に我が身になってますからね。人っていう生き物は慣れるものなのよ。
ハイ、以上。
***
「ふー、サッパリした。」
「・・・おい、シャル。」
「なーに?」
「お前、過去に何があったんだ?」
・・・え?
何だか真剣な表情で聞いてくるキュアン。
何?なんかバレた!?
戸惑う私にキュアンは言った。
「何だか俺と接する時に抵抗感はあるが嫌じゃないっていう風だったから、何か辛いことでもあったのかと思ってな。言いたくないんだったらいいんだ。変なこと聞いてすまなかった。」
あ、ああ・・・そーゆー事か。ビックリした。
つまりキュアンは私が過去に虐待か何かあって、人と接するのを怖がっている子供と思ってしまったらしい。
私の余計な乙女心が騒ぎ立ててすまんかったよ。魔法で消せないかしらん。
まぁ人工的に人の『心』を弄るなんて絶対的に弊害が出るだろうから、できそうだけどしないけどね。
「んーん、心配してくれてありがとう。・・・実はお兄ちゃんに話してない事はある。でも、もう少し時間を頂戴?そしたらちゃんと話すから。」
「そうか。・・・俺も、俺もお前にまだ話していない事がある。」
「うん。」
「・・・・・・聞かないのか?」
「会ったばかりの僕に話せない事くらい分かるから。」
「っ、・・・そーいや、そーだな・・・。出会って一日目の俺達が話す事でもないか。時間を掛けて追々、な。」
「そーだよ。」
「お前ホントに変な奴だなぁ。あまり年下に思えない。」
「そ、そう?」
・・・加齢臭出てたかな。
いや、そんな事言ってる訳じゃないのは分かってるけど。
「じゃあ、明日は早いし寝るか。」
「うん、おやすみお兄ちゃん。」
「ああ、おやすみシャル。」
部屋に点いていた灯を放つ魔具が消されて、辺りは真っ暗になった。
さて、夜型の私はまだお眠の時間じゃないんだよねー。
『無』系統魔術で脳内目覚ましをセットして、法術の攻撃系統と補助術のイメージ練習しとくか。
私は自然に意識が薄れるまで、脳内で術の練習を行った。
でも眠くなるまで左程時間は掛からなかったみたいだ。
隣からキュアンの寝息が聞こえる。
人の寝息の音って、眠気を誘うんだよね・・・
・・・ふあ~ぁ・・・
___就寝。
ひとつ述べておく。
あの時どうして気付かなかったのか。
そう、キュアンの髪は風呂に入っていたにもかかわらず乾いていた。
なんとドライヤーみたいなものまで、この世界にはあったのだ。
次の日の朝、それに気付かず濡れ髪のままで寝た私は、キュアンに起こされて盛大な寝癖と共に起床した。あの時の彼の顔は忘れられない。一発小突いても許されたんではなかろうか。転生と共に私の髪質は固いストレートから柔らかな軽いクセっ毛になっていたのだ。迂闊だった。
窓の外には早朝に相応しい朝靄が浮かんで見えていた。
さて、この頭どうしようかな・・・・・・。