表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/35

【30】キュアンのお願い

何とか更新☆

相変わらずスローです(´Д`;)




 ___この世界『常世』の均衡。




「魔族と人族が争うのが『均衡』だと申すのか?」

「・・・・・・そうは言っていない。」

「ならば、先程の『均衡』とやらの意味を教えて頂きたい。」


 飄々としている彼らしくなく、怒気を含んだ物言いでキュアンに言葉を投げかけるミーちゃん。それに対し、キュアンは歯切れ悪く短い返答を繰り返すのみだ。


 何この状況!?


 どうやら『世界の均衡』というワードがこの状況を引き起こしたようだ。現状の一端を招いた自分にも非があるような気がして、私は慌てて声をかけた。


「ミーちゃんどうしたの?」


 私の声を聴いたミーちゃんはハッとした表情を浮かべ、いつもの空気に戻った。


「・・・すまぬ。少し引っ掛かりを覚えたのでな。先程のキュアン殿の物言いであると、世界の均衡を保っているのが魔族と人族が争っていると言う事自体を指しているように思えたのである。そんな事は断じてあってはいけないのだ。」

「そ、それはそうだね。キュアンだってそういうつもりで言ってないんでしょ?」


 早くこの状況を収めたくて、私はこの話題を終わりに出来るように声をかける。


「・・・ああ、そうだ。俺は、・・・確かに、そんな事が常識になってるなんて・・・・・・そんなヤツの思い通りには思いたくない。」


 俯き加減に答えるキュアンの返事は変わらず歯切れ悪く、要領を得ないものだった。いつもだったら的確かつ、端的に返答する彼らしくない。不安定にも思えた。




「どうしたのですか?」




 不穏な空気になってしまっている私達を心配したリュイが声をかけてきた。その優しげなボーイソプラノに安心感を覚える。


「声を荒げてしまってすまぬ。もう解決したのである。」

「そうなのですか?」


 ミーちゃんの暗に『この話題に触れないでくれ』という返答に、リュイは尚も心配そうに私の方へ視線を向けて聞いてきた。

 本当は大丈夫じゃなさそうなんだけど・・・___チラリとキュアンの方へ視線を向けるけど、彼は俯き加減で明後日の方向へ向いている。・・・ここで、これ以上この事を掘下げても仕方ない事だってのは私にだって分かる。だからミーちゃんに倣うことにした。


「んーん、大丈夫だよ。・・・カチュアおねいさん、リュイと沢山お話できた?」


 気付けばリュイの後ろでカチュアおねいさんやポチ・ハチも不安げにこちらをみている。そりゃそーか、主役のリュイがこっちに注目してるんだから、他のメンバーも嫌でも気付くよね。

 私は出来るだけ明るくカチュアおねいさんに声をかけた。


「え?あ、ええ、思った通りの方でちょっと舞い上がっちゃって、・・・うふふふふふふふふふふうふふふふふふうふふ・・・。」


 カチュアおねいさんは恍惚とした表情で微笑んでいる。

 ・・・この質問は失敗だったかなぁ。

 ポチ・ハチのみならず、リュイまでもその微妙な微笑みに若干引いているのが伝わってきた。



「では、そろそろ我が一族に伝わるおもてなしをさせて頂いてもよろしいですか?」


「そんなものがあるのであるのか?流石竜族、興味深いのである。」

「ゴリオガ様、いえ、リュイ様におもてなしをして頂けるの!?感激です!!」


 リュイが突然切り出した内容に、ミーちゃんとカチュアさんが目の色を変え、ポチとハチは驚いてわたわたしている。


[我々などが地竜のおもてなしを受けることがあろうとは・・・。]

[あわわわわ・・・ホントに!?]


 そんな和やかと言えるムードに変わった場にも関わらず、・・・・・・キュアンは相変わらず俯いたままだった。


「ではこちらにどうぞ。」


 先導してのっそのっそと移動するリュイについて、みんなが歩を進める。




 みんなが洞窟の奥へ姿を消しても、動かない影がある。



 私は独りだけ動かないキュアンに近付いた。




「キュアン。」

「・・・なんだ?」


 キュアンの声にはいつもの覇気が無い。

 その様子は怒られてしょげてる子供のようだった。

 その姿から、私は思わず、といった行動を起こしてしまった。


「少ししゃがんで。」

「?」


 キュアンは訝しげにしながらも、私の言葉通りにしゃがんでくれる。キュアンがしゃがむと、その高さは私の胸元より少し低い位置に頭がくる。丁度いい高さだ。

 

 私はその頭を、ナデナデした。


「シャル?」


 キュアンの驚いた顔を見て、私は手を引っ込めた。

 あ、しまった!なんか怒られてしょげてる子供に見えたから、そのまんま行動してしまった!!これはマズかったかも。いくらなんでもキュアンに失礼だ。

 私は慌てて言い訳する。


「その、なんだか元気無いから・・・。」

「・・・・・・。」

「うっ、ご、ごめんなさい。」

「・・・・・・い。」

「はいっ?」

「別に、いい。」


 私はホッとした。

 キュアンは怒ってはいないようだ。さっきとは違って落ち着きを取り戻した雰囲気だが、今度は少し泣きそうだ。泣きそうな表情を見るのはこれで二度目だ。キュアンは案外涙もろいのだろーか?


 私はもう一回、キュアンをナデナデした。


 キュアンはされるがままだ。けれど、泣きそうな表情は深まるばかりだった。どうしたらいいか考える事無く反射的に、私は昔よく面倒をみていた甥っ子をあやすようにギュッと抱きしめてその背中をポンポンと軽く叩いた。


「よしよし。」


 恐い事、なんもないからねー、大丈夫、大丈夫。

 夜中、暗闇が怖いと泣く甥っ子をあやしてトイレに連れて行った思い出が蘇る。そんな甥っ子も、もう生意気盛りな10歳だ。


 昔を懐かしみながら、10歳未満でもない21歳の男性をあやす私である。


 そんな私にとって穏やかともいえる時間は、長続きしなかった。




___ガブッ


「ふぎゃ!?」



 思い出にふけりながら背中ポンポンをしていると、21歳男性からの反撃があった。どうやらキュアンの顔があった鎖骨辺りを噛まれたようだ。噛まれたと言っても甘噛み程度だけど、不意打ちだった為に変な悲鳴が口から飛び出た。

 驚いて咄嗟にキュアンから離れようとしたけど、できなかった。

 キュアンが反射的に離れようとした私の身体ごと自分の方へ引き寄せたからだ。


 ま、まさか怒った!?

 流石に21歳の男をあやすって失礼千万だった!?


 さっきとは逆にキュアンに抱きしめられる形となって、羞恥と怒られるかもしれないという恐怖にて自分の心臓がバクバクいっているのがわかった。

 けれど、暫くしてもキュアンからは何の反応もなかった。私の肩口、丁度鎖骨の辺りに顔を埋めたまま動かない。私としては、またいつ噛まれるか分からないので冷や冷やするんだけどなー・・・・。


 もう暫くしてもキュアンは動かない。

 思い切って私から声をかけることにした。


「キュアン?」

「ああ。」


 いや、ああ。じゃない。

 どうしたらいいんですか、この現状。


 仕方ないので、私から再度アクションを起こす事にした。もう一度ナデナデしてみる。和やかムードを崩したくないので、ちょっとしたおちょくりも入れてみた。


「よしよし、キュアンくんは甘えたさんだねー。」


 しかし、それがいけなかった。


「・・・(ギュムッ!!)。」

「ほぎゃー!!」


 今度はキュアンから即行で反応があった。

 それも無言で私の身体に回している腕に力を込めるという暴挙だ。


 身体能力が著しく低いシャルロードには大ダメージです。


 再度、何かが生まれてしまったような変な悲鳴が私の口から飛び出ていった。


 ミーちゃんの一言であんなに落ち込むってのに、私への反応ってヤツがいちいち暴力的なのは気のせいだろーか?まぁ、キュアンの中のシャルロードの立ち位置がそんなものなんだろーけどさ。




「・・・なぁ、シャル。」

「なーに?」


 先程受けたダメージにぐったりしつつ、キュアンからの声に返答する。


「この先も、俺と居てくれないか?」

「___っ!?」

「自立したら離れるという約束だったが、お前が居てくれると・・・その、助かる事もあるし。俺の事は財布代わりでも、読み書き係でも、便利屋の代わりに使っ」

「いいのっ!?」


 キュアンのツンデレなど私の耳には入って来ず、ただ、当人からの嬉しい提案に元気良く返事するのみだ。それに気圧されたかのように、キュアンが私の肩口から顔を上げる。やっと見る事ができたキュアンの顔を見据えながら私は言葉を重ねた。


「キュアンと一緒がいい!嬉しい!!」


 また自分からキュアンに抱きつく。羞恥とかどうでもいい。今はただ、どうすればそうできるか悩んでいた事を、本人から言質を貰えた事が嬉しかった。


「・・・相変わらずアホシャルだな。」


 こんな時にも暴言を吐くキュアンの言葉を華麗にスルーして、私は言った。


「キュアンが僕のこと『必要ない』って言うまで、一緒にいるよ!これからどうぞよろしくお願いします!!」

「そんな事にはならないと思うが。ああ、こちらこそよろしく、シャル。」

「うん!」

「じゃあ、コレを契約に組み込むぞ。」

「・・・はっ?」


 キュアンが私の服の中に手を突っ込んできたが、そのキュアンの手は以前のように冷たくはなかった。子供体温なシャルロードを抱き潰したおかげだろーか?しかし、いくら手が冷たくなかろうとも、その行為自体はいきなりされたらさすがに驚くってば!


「ちょ、キュアン!?」

「『契約項追加。我持って銘を刻む。今後「必要ない」と言葉を交わすまで離れる事が無い事を。』・・・シャル、誓うな?」

「は、ひゃい!誓います!」


 キュアンの呪文らしき言葉に返事をすると、キュアンの手が触れている背中に仄暖かさを感じた。そういえば、そこにはキュアンとの契約印があるんだっけ?わざわざ契約に追加するとは、シャルロードって本当に信用無いんっすね。ちょっと悲しいワ。

 しかしながら、これは雨降って地固まるってヤツだろーか?ミーちゃんの言葉で弱ったキュアン。残念にも近くに居たのが私だけだった為、悪魔(私)と悪い契約結んじゃった☆的な感じが多少無きにも在らずだけど、シャルロードにとってはお得な出来事でした♪ぐふり、ミーちゃんありがとー・・・と思ってもいいかしらん?


 邪シャルロードが心の中で黒い笑みを浮かべていると、今度はキュアンに後頭部を掴まれた。


「___へっ?」


 固定された頭は動かせず。近付いてくるキュアンの美形な顔を、緊張と羞恥に固まったまま、その行為が終わるまで見つめていた。


 事後にキュアンからこの行為に関する説明は一切無かった。


 契約変更の度に必要な行為なんだって事は予想つくけどさ。嫌じゃないけどさ。・・・シャイロードの心臓に悪いから、事前にひと声かけて頂きたいってもんだ。



***



 やっと二人揃って皆が先に行った洞窟の奥へと進むと・・・


___そこは・・・・・・とてつもなく酒臭かった。


「あ、やっといらっしゃったのですね!」

「これは一体どういうことだ?」


 私たちがやっと到着したのに気付いてリュイが声を掛けてくれる。それにキュアンが顔を顰めながら質問した。 なんせ、辺り一面に咽かえるような酒の匂いが充満しているのだ。臭いだけで酔ってしまいそうだった。


「これが地竜に伝わるおもてなしなんです。」

「この酒臭いのがか?」

「いえいえ、一族秘伝のお酒『竜殺し』を振る舞う事ですよ。」


 ・・・地竜秘伝のお酒なのに、その名前は如何なものか。



次は人物紹介☆

次は・・・誰にしよう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ