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【29】突撃!ゴリオガ様の御宅訪問☆

久々の~更新☆

打つ時間が無い!(´Д`;)

 気絶していたカチュアさんが目を覚ました。


 「ほ、本当は一回目を覚ましたんだけど、地、地竜が居たんだもの。私があれだけ長年探して見つからなかった地竜が、憧れて止まなかった地竜、ゴリオガさまがっっ!」

「カ、カチュアさん少し落ち着いて。」


 興奮して大振りなジェスチャーを繰り返すカチュアさんの手を何とか避けながら、私はカチュアさんを必死に宥める。



「では僕の家に案内しますね。ついて来て下さい。」


 何とか落ち着いたカチュアさんを促し、リュイの言葉に従って彼について行った。



 地竜という大きな竜が通るにも関わらず、周囲の木々が一本も折れずにリュイを避けるかのような錯覚が起こるのは何度見ても不思議な光景だ。リュイに原理を聞いてみたが、彼にとっては生まれ持って自然に使える能力なのだそうで、意外にも原理はよく分からないらしい。それでいいのか?と、ツッコミを入れたい気持ちもあったが、リュイがそれでいいならいいか。


 リュイの先導のままに進む事10分程度、ようやく目的の場所に着いたようだ。リュイの足が止まった。

 『地図』を展開させて見てみると、そこは『始まりの樹海』のほぼ中央にあった。



 リュイの家・・・外見を端的に言い表すと『苔むした大きな洞窟』だった。



[玄関は薄暗いので、足元に気を付けて下さいね。]


 そう声を掛けて、先導してくれるリュイに続いてその洞窟へ入る。


 その洞窟の内部一面に様々な苔が覆っていた。

 壁や天井の苔はうっすら光を放って足元を照らし、地面の苔は踏んでも足跡が付かないくらいに弾力があってフカフカだった。苔の上と言えば、滑りやすいイメージだが、このフカフカな苔はまるで密度のある毛足の長い絨毯のようで、寧ろ気を抜くと足を捕られそうになるくらいだ。

 リュイについて入口から少し歩くと、洞窟の天井が吹き抜けになっている広間のような場所に出た。入口からここまでは、いくらうっすらと光を放つ苔があったといっても薄暗かったが、この場所は上が吹き抜けのようになっており、どこからか多くの光が差し込んでいる為、洞窟の中と思えない程とても明るい。

 そこでリュイが歩みを止めた。そしてゆっくりとこちらに振り返る。


[ようこそ、ここが僕の家です。ふふ、客人をお招きするのは初めてなので、少し緊張しますね。]


 リュイがグルルルル・・・と、(多分)笑った。


「えと、お邪魔します。」

「うむ。地竜殿の御殿へお招き頂き、恐悦至極に思うのである。」

[お招きありがとうございます。]

[わわわ・・・、地竜の住み家に来られるなんて夢みたいだ・・・。はっ、お、お招きありがとうございます!]


 リュイの言葉が分かる私とミーちゃん、そして魔獣『黒牙』達の代表であるポチとハチは、直ぐにリュイの挨拶に言葉を返すが、キュアンとカチュアさんはそうではない。カチュアさんはさっきからロボットのように固い動きだし、キュアンは隙なく周囲に視線を張り巡らせているようだ。


 これは・・・あの術をリュイにも掛けさせてもらった方がいいかな?


 もちろん『あの術』とは、ミーちゃんに掛けてある『魔族隠し』と『魔物使い』の能力をドッキングさせた『翻訳念通話(今名付けた)』である。


[ここならゆっくり話すことができます。そういえば、本日はどのようなご用件でこの樹海に来られたのですか?]

「今日はこのおねいさん、カチュアさんの依頼で来たんだ。」

[依頼、ですか?]

「うん。小さい頃からずっとリュイに会いたかったんだって。僕もリュイに会いに行くつもりだったし、一緒に来たんだよ。」


「ちょ、ちょっとシャルくん!?」


 リュイに経緯を説明していたら、カチュアさんが慌てた様に声を掛けてきた。


「カチュアおねいさん?」

「今、ま、まさかゴリオガ様と話してるの?」


 対策をする前にあっと言う間にバレてしまった。

 まぁ、そりゃそうだね☆

 ととっ、自分にツッコミ入れてる場合じゃない。


 無い頭脳をフル回転させ、とにかく誤魔化す方法を模索する。

 しかしながら、こっちの世界に来てからというもの、自分の爪が甘いせいで誤魔化してばっかです。


「えっと、実は特殊な道具のお陰で多少分かるんだよ。」


 いつもながら、実に苦しい誤魔化し方である。


「特殊な道具?ゴリオガ様とお話できる、そんな夢のような道具があるの?」


 カチュアさんは目を輝かせた。同時に少し後ろで事の成り行きを観察していたキュアンの眉が僅かに顰められる。・・・「なに言い出すんだコイツ。」的な視線だ。

 そんな冷たい視線をなんとか避けながら、私はゴソゴソと自分の懐を探り、小さな紙袋を取り出した。取り出した物が何なのかを見たキュアンの顔が怪訝そうな表情を作る。そりゃそうーだ。これは昼間に彼に駆って貰った砂糖菓子なのだから。


「これを食べるとあら不思議!リュイの、地竜ゴリオガ様の声が聞けちゃいます!」


 どこかの怪しいテレフォンショッピングの販売員のような口調で私は瞳をキラキラさせているカチュアさんへ向かって話した。


「くれるの!?」

「うん、どーぞ。あ、でも、効き目が出て来るまで少しかかるからね?」


 お菓子入りの紙袋をカチュアさんに渡し、私はリュイに小走りに駆け寄って、小声で話掛ける。


「リュイ、今からちょっと術を掛けていい?喋れるようになるやつ!」

[?僕に術ですか?喋れるようになると言う事は、人族の言葉を?]

「そうそう。いい?」


 リュイから驚いたような感じが伝わってくる。表情は殆ど分からないのに、感情が伝わってくるって事は、これはきっと『魔物使い』の能力なんだろう。


「でも、僕がこの術を掛けたって事はカチュアさんには内緒でお願いします。」

[・・・成程、わかりました。]


 物分りの良いリュイは直ぐに了承してくれた。しかしながら、その瞳にはカチュアさんと同様に期待の色が強いのは気のせいだろーか?


 私は直ぐさま『翻訳念通話』の術を構築し、展開させた。

 もちろん、リュイは『神族』に分類される竜族とのことなので、ちゃんと魔力と法力の分配には気をつける。


「??魔力の気配?・・・この薬って、呑んだら発動するタイプの珍しいものなのかしら?そうよね、ゴリオガ様とお話できるようになるくらい凄いものだもの!」


 テンションがハイになっているカチュアさんには正常な判断能力が欠如しているようで助かった。元々念通話自体が人族にとって知られていない物らしいから、判断材料となる情報が無いっていうのも理由かもしんないけど。


「終わりましたか?」

「うん。」


 リュイの声は念通話で聞いた通りの、透き通るようなボーイソプラノだった。


「わわっ!ご、ゴリオガ様の声!?」


 カチュアさんの驚いた声が洞窟内で反響する。


「私の言葉が分かるようですね。では改めまして・・・初めまして、地竜ゴリオガ、名をリュイと申します。」


 リュイがカチュアさんに向けて自己紹介をした。カチュアさんも慌ててそれに答えている。

 その様子を少し離れて微笑ましく見守っていると、背後からいきなり声を掛けられて飛び上がってしまった。


「・・・そこまで驚かなくてもいいだろーが。気配は消してなかっただろ?」

「いやいや、僕に気配を読むとかいう芸当は無理だからね!?」

「はっ?そうなのか・・・。」


 飛び上がってしまった原因を作ったのはキュアンだ。

 私は貰ったチート能力以外はただの武道の心得が一切無い一般日本人ゆえ、空気は読めても気配は読めませぬ!


「咄嗟に誤魔化すにしてはまぁまぁだったとは思うが、その場合、あの魔獣二匹と話す時は気を付けろよ。」

「???何で?」


 キュアンに言われた意味が分からなくて私は首をかしげた。

 同時にキュアンに呆れた表情をされる。

 ええ、これもいつものことですね☆


「・・・ゴリオガは特上級種族だから理解ある言葉を発することができるってのは、大概への説明として通じるだろーが、魔獣となると話は別だ。」

「ポチとハチが喋ったらマズイの?」

「そうなるな。今まで魔獣とコミュニケーションが取れた例など、まぁ、魔族もそうだが。・・・ミーチュン、魔獣はお前のように人型はとれないんだろ?」


 キュアンが話の途中で不意にミーちゃんに声を掛けた。

 近くで控えるように立っていたミーちゃんが、その質問に直ぐに答える。


「うむ、人型になれるのは我々特上級魔族、例外を除いて元々人型の魔族ぐらいであろう。実際問題、人型が一番魔力を使うには効率の良い姿ではあるが、幻術でなく自己の姿を変化させるのは最上級術に属するのである。使える者は魔族とて少ないのである。」


 ミーちゃんが驚くことなく返事をしたって事は、元々こっちの会話を聞いていたんだろうなー、とか推察する。当たらず触らずの距離で控えていて、何かあれば声をかけ合う・・・これって阿吽の呼吸というやつ?テントを張る時といい、二人は中々に相性がいい気がする。ホント将来が楽しみだ!(BL的に)


 私が邪な事を考えていると、キュアンの説明が再開された。


 おっとイカンイカン☆

 ちゃんと聞いておかねば、またお仕置きされてしまう!


「今の均衡が壊れるうえ、お前の実際の能力が周囲にばれてみろ。利用しようとする輩が湧いて出て来るぞ。」

「そ、そうなの?」


 キュアンの口から語られると、結構特殊な力なんだなー程度に思っていたこの『魔物使い』の能力が、より一層重みを増す。本来元々この世界に在ってはならない力なのかもしれないとさえ思ってしまう。でも、そうならなぜチート能力として神様はくれたんだろう?いや、ただの私の勝手な想像だから予想もつかないし、この足りない頭で考えるだけ無駄なんだろーけど。


「だから今後はカチュア・ランバートの前では魔獣と会話するな。」

「う、で、でも・・・。」


 こんなに近くに居るし、会話しないなんて無理だと思うんだけどなぁ。

 

 ポチはお行儀良く、洞窟の端の方で座って待機している。ハチは洞窟の内装を珍しそうにキョロキョロ見回している。うん、可愛いなぁ~。




「話の途中にすまぬのである。ひとつ良いか?」

「・・・何だ。」


 ミーちゃんから話に加わり、キュアンが何故かやや不機嫌そうに返す。

 聞き分けのない子供に言い聞かせている途中に割って入られたせいだろーか?キュアンママンの機嫌は下降気味だ。


「本来魔獣には『念通話』は使えぬ。独特の『魔族語』を使用しているはずなのだ。」

「『魔族語』?」


 ミーちゃんの話にキュアンが怪訝そうに返す。

 また新単語出現だ。『魔族語』とは何ぞや?


「『念通話』はその名の通り、念にて直接精神へと語りかける全世界共通の失われつつある古代語なのである。全ての生き物に共通する『精神』に直接感応できる為、どの言葉も聞く事が出来る高等技術に属する。所以、使えるものは少ない。現在主流となっている言語は人族の音声に頼った『人族語』、魔族の魔法による『魔族語』、神族の法力によりる『神族語』に区分されるのだ。」

「つまり、シャルの術を魔獣にかけても、人に伝わる言葉を発する事が出来ない、という事か?」

「うむ、我はそう考えている。そして、元より人族の言葉を理解する事もできぬ。」


 ・・・えーと?

 つまり、キュアンやカチュアさんに『翻訳念通話』をかけても、ポチやハチとはお喋りできないってこと?




「して、キュアン殿。」


 

 ミーちゃんの纏う空気が変わった。

 空気読み人な私は咄嗟に理解してしまった。


 ミーちゃんが本当に聞きたい質問が、くる。




「『均衡が崩れる』とはどういう意味なのであるか?」




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