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【28】黒き魔獣『黒牙』

久々の更新☆

色々手直ししたいですけど、また後程ちょこちょこしますー(´ω`)

 『ワープ』で辿り着いた先には、地竜ゴリオガと・・・黒い獣の集団が居た。


 獣たちの数は10~15匹くらいだろうか。その中の一匹、どうやらメスの『黒牙』がリュイに何か訴えているのが聞いて取れた。


[少しでいい。頼むよ。]

[そう言われましても、無理なものは無理なんです。]

[アンタ達だけ利用して、アタシ等はダメだってのかい?]

[ですから、魔獣には毒にしかならないのです。ここは『法力』の溜まり場だと何度言えば理解して頂けるのですか?]

[そんな事言ったって、普通の動物だって癒えてるじゃないか!信じられないよ!]


 何だかクレーム対応の事務受付がリュイ、クレーマーなおばさまが黒い獣に見えるのは錯覚だろーか?リュイに話し掛けたいけど、無理そうだ。クレーマーは苦手だ。

 そんな訳で、キュアンとミーちゃんと、少し離れた場所からその様子を眺めるしかなかった。


[ハチリア、もういい。地竜がそう言っているんだ。実際、そうなんだろう。]

[でも、それじゃあ、アンタは誰が救ってくれるっていうんだい!その傷じゃあ長くはもたないって分かってんだろ!?]

[・・・ああ。]

[なぁ、地竜。アンタは癒しの術とか使えないのかい?このヒトを助けておくれよ!]


 メスの後ろに控えている、どうやらオスの『黒牙』からは鉄錆のような独特な血の匂いがした。

 怪我をしているらしい。


[どうにかしてあげたいとは思うのですが、地竜にそのような術は・・・]


 尚も吠えたてる『黒牙』のメスに辟易したリュイが溜息をついて視線を逸らした先は、私達が立っている場所だった。


 おお、見つかっちゃったよ。

 別に隠れてたわけじゃないけど、止めに入らずに成り行きを見ていただけに少し後ろめたい。


[シャルロードさん!?]

「えっと、久しぶり、リュイ。・・・取り込み中?」

[お久しぶりです。ええ、取り込み中というものなのでしょうね。すみません、この樹海に来られているのは感知していたのですが、何分、察して頂けた通り急な来客があった為にお迎えに上がる事が叶いませんでした。]

「んーん、それはいいんだけど・・・。」


 私はチラリと『黒牙』のオスに視線を遣って、リュイを見る。

 今の話を聞いた感じだと、あの『黒牙』集団は、怪我をしたオスの治療の為にここに訪れているようだ。だったら『法術師』のシャルロードがお役立ちできる筈。


「僕、お役に立てる?」


 私が何を言いたいのかを直ぐに察したリュイの眼が見開かれる。

 ・・・見た目ワニだから結構怖いです、リュイさん。


[魔獣の傷ですよ?癒せるのですか?]

「うん、多分。」


 法術は魔族と魔獣には危険な代物らしいので、ミーちゃんの疲労を治した時みたいに魔族用に変換した法術を使えば治せる筈。

 因みに魔族用の法術はメインの力を法力じゃなくて、魔力に置換するのが肝です。展開方法が法術を応用してるので、少し面倒なのが難なくらいだ。これについては、私の魔術と法術のイメージの違いに関連しているのかもしれないけど。


[地竜っ!今話してるのはアタシ達だよ!!しかもこんな場所に人族が何だってっ・・・___人族っ!?]


 吠えたてていたメスの『黒牙』の声が更に跳ね上がった。

 耳に鋭く響いて、ちょっと顔を顰めてしまった。


 リュイはそんなメスの『黒牙』を威嚇するかのように唸った後、静かに言った。


[こちらはシャルロードさんです。人族ですが我々の言葉を解し、種族偏見の無い良識の持ち主ですよ。]


 や、止めてぇ!単なるチートな能力だから!だから褒めちゃらめぇっ!!

 種族偏見は・・・この世界を詳しく知らないから、持っちゃいないのは確かだけど。


[その方の傷を癒してくれるそうです。]

[人族にそんな事出来る筈無いだろっ!?]


 吠えたてるメスの『黒牙』さんとリュイの遣り取りはまだしばらく続きそうだと思ったら、意外な人物が声を発した。



「下がれ。」



[___っ!?]


 厳かに放たれた低音美声に、メスの『黒牙』が怯んだ。


 流石、ミーちゃん。

 ってか、ミーちゃん?

 どしたの??


 戸惑う私や無表情なキュアンを残して、ミーちゃんは『黒牙』達の方へと進み出た。


 そういえば、ここに来る前に『魔獣』について何か言ってたけど、それが関係しているのかな?『魔族』と『魔獣』、そして『魔物』の関係って何だろ?


[な、何なのさ。・・・アンタ、人族?]

[いや、気配が違う。このお方は・・・。]


 『黒牙』達に動揺が走っている模様。念通話で聞き取れる会話を除けば「きゅうぅん」と怯える鳴き声も聞こえた。

 ・・・かわいい。


[その方は魔族だったのですか!?先程までそのような大きな気配は感じ取れなかったのですが・・・。]


 リュイの驚く声が聞こえる。

 ミーちゃんが、私が掛けている『魔族隠し』の術を自力で破って解除したのだ。


 私には『魔族特有の気配』っていうのは『殺気』と同様、ちっとも分からない。けど、やっぱり『竜』や『魔獣』には分かるみたいだ。


 折角ファンタジー世界に転生したんだから、そういうのを感じ取れるようになりたかったなー。チェッ!


 それはさて置き、魔族の中でも特上級な『皇魔』の気配ってヤツに怯えた『黒牙』達が一斉に伏せをし始めた。・・・あの、ワンちゃんに覚えさせる『伏せ』の体勢だ。


 怯えたような眼に「キュウゥ」という鳴き声。

 ・・・ナデナデしたい。

 お察しの通り、BLの他に、もふもふ・ふこふこにも弱いシャルロードですたい。


「地竜殿、それについては後程説明するのである。今は先に___シャル殿。怪我をしている『黒牙』の治療を頼みたいのだが、構わぬか?」

「もちろんだよ!」


 ミーちゃんに声を掛けられ、私は怪我をしているオスの『黒牙』へと近づいた。周りの『黒牙』達が警戒するように唸りを上げるのでビクッとなってしまったが、ミーちゃんに睨まれて直ぐに大人しくなったので、そろりそろりと傍に寄る。

 怪我をしているオスの『黒牙』はあちこちから血を流していた。

 普通、血管が傷ついた時点で血小板が凝集するから自然に止血される筈なんだけど。怪我をしてからそんなに時間が経ってないのだろーか?

 些細な疑問はさて置き、早速魔族用の法術を構築、展開させる。

 うーん、傷口に靄みたいなのが掛かってる。傷自体は浅めなのにこの靄がどうやら呪いの一種のようで、この所為で自己治癒が阻害されていたもよう。それを解除してから再度魔族用法術を行使した。するとオスの『黒牙』の傷はみるみる治っていった。


 やっぱ法術スゲー!!


 その『黒牙』は自分の傷は癒えたが分かると、スクッと立ち上がってこちらを見てきた。尻尾が嬉しそうに緩くフリフリされているのがとてもかわいい。


[・・・助かった。]

「いえ、お怪我が治ってよかったです。」


 ・・・尻尾フリフリなのにクール系か。

 ギャップ萌えしてしまうじゃないか。


[ポチュニグ!よかったよおぉ~!!]


 オスの『黒牙』はどうやら『ポチュニグ』というらしい。ポチュニグにニコリと笑顔で返事をしていたら、メスの『黒牙』が勢いよく突っ込んできた。こちらの尻尾ははち切れんばかりに振られている。

 うむ、かわゆいのぉ。


[ハチリア、落ち着け。そちらの方が驚いているだろう。]

[ううぅ~。だって本当に心配したんだよ?]

[ああ、すまなかった。]


 この二匹って恋人?それとも家族なのかな?


 ゴシップ好きな野次馬根性にて『黒牙』二匹の関係に興味が湧いたので、こっそり『ステータス』を展開させてみた。



*************************

ポチュニグ(98)魔獣黒牙♂獣戦士


魔獣『黒牙』のリーダー。冷静な性格。

コーシルティル皇国で大々的に行われた『魔殲滅』にて

その身に治癒困難な傷を負う。一族の残りと共にムーア

連邦国まで逃げ延び、中立立場をとる地竜を頼る。死途

へ向かう途中、シャルロードに救われる。

*************************



*************************

ハチリア(98)魔獣黒牙♀獣戦士


ポチュニグの幼馴染。『黒牙』戦闘部隊のマドンナ&

ムードメーカー的な立場。猪突猛進傾向。気を許した

相手には尽くすタイプ。

今回の『魔殲滅』から命からがら逃げ延びた。

*************************



 一部余計な情報もある気が。できたら割愛して欲しい。

 しかし、そーかぁ。二人は幼馴染なのね。

 しかも『魔殲滅』か。キュアンが元々居た国、コーシルティル皇国じゃ、何か大変な事になってるみたいだ。


 ・・・ん?

 ___おおっ!よく見たらポチとハチじゃなーいですか!

 日本ワンコの代表的な名前をお持ちだなんて、愛着湧いちゃうなぁ。


 私が一人で心の中で和んでいると、低音美声が聞こえてきた。

 はい、ミーちゃんですね。


「『黒牙』よ、聞きたい事がある。」

[・・・なんでしょうか?]

「そう構えずともよい。そなた等についてだ。」

[我々、の事ですか?]


 かしこまったように、ミーちゃんの問いへ返答するポチ。


「そなたのその傷。どこで負ったのであるか?」


 そうだ。ポチの傷は普通の傷じゃなかった。

 例を出すなら、魔法剣士のダリアさんがグールに負わされた傷の逆バージョンと言える。ダリアさんの時は淀んだ魔力の靄が傷の治りを邪魔してたけど、今度は法力に似た力で構成されたような変な靄で傷口の傷が塞がらないようになっていた。いくら浅い傷といえど、塞がらなければいずれ失血死だ。


[ここより遙か西に位置する我々の集落にて。近くにあった人族の国の者により負わされました。]

「その国の名はコーシルティルと言うのではないか?」

[は、はい。仰る通りです。]


 コーシルティル・・・ってーと、キュアンの元居た国だっけ?


 キュアンの方をチラリと見てみると、___バチッっと目が合った。

 今まで全く気が付かなかったけど、穴が開くほど見られていたようだ。


「・・・キュアン?」

「コーシルティルがなんだって?」


 あっ、そっか。キュアンには念通話ってヤツは分からないんだっけ。


 眉を少し顰めて聞いてくるキュアンに事の経緯を説明する。といっても、私が理解できてる範囲までだけど。



「何か事情がありそうですね。立ち話も何ですから、私の住み家へいらっしゃいませんか?大したおもてなしはできませんが。」



 リュイの声(念通話)で、本来の目的を思い出した。

 そうだった。リュイに会いに来たんだった。そしてカチュアさんの依頼。


 えっと・・・カチュアさんは・・・



 彼女は___ずっと気絶したままだった。

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