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【2】ギルド登録

三部目っ!自分にしては良好な投稿ペースです。

書いてる途中で初めの町『クロロフィルン』が、眠りの町『クロロフィル』になってるのに気付いて、慌てて直しました。

眠りの町・・・とか何かカッコイイな。過去の病が疼きます。

もしまだ間違ってたら、御指摘して頂けると嬉しいです。



(8/16追加文)

間違いは他にあった!!Σ(´Д`;)ノ

・・・詳しくは初めの感想をご覧ください。


ええ、飛トリはこないな奴です。その時々直していきますので、海原のように広い心で許して下さい。たぶん、きっと、かくじつに、また間違うと思いますんで(汗)。

 『始まりの樹海』を背に遠くに見える大きな岸壁を背負った大きなワニに手を振る。

 樹海の出口まで送ってくれた地竜のリュイにまた会いに行く、と約束して私はキュアンと町に向けて歩き出した。


 擬人化の術が完成したら必ず会いに行くからね。待ってて、リュイ!




 樹海を抜けた先は緩やかな平原があって、あちこちにポツポツと木々が点在しているのが見える。

 空気うめー。自然きれー。隣の美形見惚れるー。

 ・・・惜しむ所は移動手段が徒歩なトコか。も一回言うけど現代人なの。体技にチート一切割り振ってないの。つまり結構しんどいの。


 そんな自分を紛らわせる為に、私は隣を歩くキュアンに話し掛けた。


「ねー、キュアンは旅人?」

「・・・そんなトコだ。」


 ん?これってもしや結構警戒されてる?

 キュアンって実は人見知りタイプなのかしらん。ええ~、どうすりゃいいかな。んー、ちょっと幼い感じでバカっぽければ気が緩むかなぁ?実際そんな私にゃぴったりの役付ですしな。そして場を繋ぐには質問攻めよ!相手が煩わしそうにしてたら自分の話とか天気の話に切り替えるなり!

 ええ、必死ですとも。だから私シャイだって言ったでしょ?ゲームでもない直コミュニケーションスキルはかなり低い私。チート能力に『話術』なんてもんは無かったし。・・・あったら確実に選んでたなぁ。


「どーして旅してるの?」

「・・・あー、武者修行が終わって、一応これから冒険者になる予定でな。クロロフィルンの町には初級冒険者用の設備が整ったのギルドがあるからな。お前は?」

「僕も冒険者になろうと思ってクロロフィルンを目指してたんだけど、迷子になっちゃって。」

「ははっ、マヌケだなぁ。」


うっし、うまい具合に質問返してきてくれた。人見知りは私の勘違いなようでよかった!親しくなる為の会話は繰り返してかないとねー。

そして、やっぱりキュアンは元騎士の件については隠す方向みたいだ。今は深く触れないでおこう。取りあえず先に友好値を上げなければ!


「地竜のリュイに追っかけ回されてたキュアンに言われたくないよ。」

「それはお前も・・・って、そーいや年上に向かって行き成り呼び捨てか?」

「僕なりの友好を表す手段だったんだけど、嫌なら止めるよ。じゃあレーモグラスさんならいい?」

「・・・今更違和感あるな。まぁキュアンでいーわ。お前の事は・・・シャルでいいか?名前長いし。」

「いーよ。」


 ふっふっふっ。拙い言い回しが功を奏した!思った通りキュアンは呼び方をあんまり気にしない方みたい。これで名前呼びはGETだぜっ☆

 行く行くは愛称とかで呼びたいなぁ。キューちゃんとかどーよ。親しくなれば嫌な呼び方でも多少は許してくれる筈。私の方は既に愛称呼びみたいなもんだけど、確かに名前長いし仕方ないでしょうねぇ。ふふふふふのふ。


 BL覇道を目指す私にとって初めにキュアンと出会えたのは行幸だったと言える。博識だし、眼福だし、結局町まで歩く事になったけど退屈しないで済んだ。


 やっとこさクロロフィルンの町に着いた私の眼に映ったのは、その外壁の高さと列を作って並ぶ人や馬車の群れだった。

 外壁はきっと魔物の襲撃に備えたものだろうってことは容易に想像が付く。しかしこの行列は・・・町に入る為の審査でもあんの?そんな事全く想像もしてなかったよ。

 転生したばかりの私は現状住所不定の無職野郎だ。もしこの町に入れないんなら他の町も無理な可能性が高い。

 ど、どうしよう。町を覆う外壁が私の今後の行く先を阻む壁に見えてきた!


「さて、俺は身分証明を持ってないからな。あっちのギルド用の列に並ぶ。」


 おおっ!そーいえば、ここに『キュアンさんの知恵袋』があったじゃーん!ってか、キュアンですら身分証明書持ってないんなら持ってる人って限られてるんかな?


「キュアン、身分証明ってどうしたら貰えるの?」

「知らんのか?まぁお前の年だと持ってなくても不思議じゃないか。」


 一緒にギルド申請用の列に並んで待っている間に、キュアンが身分証明について教えてくれた。


「身分証明ってのはそのまんま自分であることの証明になるモノだ。無くても生きていけるが、商売や冒険とかであちこち行くには無いと不便ではあるな。」

「町に入るときに必要だから?」

「そーだな。無くても入れない事はないが、結構ややこしい手続きが必要なんだよ。身分証明は商売を始める時に国に申請したり、ギルドに入った場合に発行して貰える。犯罪を犯すつもりが無いならあって損はない代物だな。」

「じゃあ、これからギルドに入るから貰える物なんだね。」

「飲み込みが早いな。さすが法術師という訳か。」

「え?」

「違うのか?地竜に何か法術使ってただろ。無詠唱な上見た事ない術だったが。」


 ・・・そーいやそうでした。この世界の職業ってヤツを知らないから、今は何とも言えないなぁ。一応『無』系統の魔法も使えるけど、法術と魔術は一緒に使えていいものなのかすら分からない。

 チート転生したけど目立ちたい訳じゃない。だってそんな事になっちゃったらBLが堪能できないじゃないっ!この世界でもやっぱり異性同士でくっつくのが普通みたいだし、禁断の情事に関わりたい私が目立っちゃしょうがないって訳よ。


「法術使ったって、見た目で分かるの?」

「うーん、・・・人によるかな。俺は結構法術で治療してもらう事が多かったから感覚的に分かっただけだが、同業者なら直ぐに見抜くんじゃないか?」

「そんなもんなんだ・・・。」


 じゃあ既にキュアンに法術を使う所を見られた私は『法術師』で通した方がよさそうだ。


「僕ちゃん法術を使えるのかい?たまげたねぇ。」


 そんな事をキュアンと話していたら、隣の列に並ぶ老夫婦の内のおばあちゃんが声を掛けてきた。多分一般審査用の列みたい。


「法術って珍しいんですか?」

「おや、知らないのかい?」

「はい。実は冒険者になりたくて田舎から出てきたのはいいんですけど、まだ世間の事情には疎くて。これからギルドに入る予定なんです。」

「そうかい、じゃあおばあちゃんが教えてあげるよ。」

「本当ですか?ありがとうございます。申し遅れました、僕はシャルロード・キアと申します。よろしくお願いします。」


 自己紹介すると、おばあちゃんの隣で葉巻をふかしていたおじいさんも声を掛けてくる。


「こりゃ珍しく丁寧な子だねぇ。」

「そうねぇ、おばあちゃんはターニャ・ラチーナ。こっちのじいさんはヨック・ラチーナよ。こちらこそよろしくね。」

「はい。」


 笑顔で答えていると隣でキュアンが「俺の時とはエライ違いだな」とか言うので肘で小突いて黙らせた。目上の人には取り合えず敬意を払うのが普通でしょ。キュアンは私の実年齢より年下なのでそれには当てはまりません事よ。


「法術を使えるのはコーシルティル皇国のグライド教の方達か、オアティス教国の神官様達くらいだと聞くわ。」

「町で開業してる医師達の多くはそのどちらかの出身が殆どだしのぉ。独学で学ぶのは難しいと聞くぞぃ。」

「シャルちゃんはどちらかに住んでいたの?」

「あっと・・・、というかー、町の、・・・そう、町の医師に弟子入りして教えてもらったんです。」


 おっとー、マジ苦しいぜ。苦しい言い訳だぜ。

 聞く限り法術自体秘匿されてる技術なんじゃないですか?コレ。

 町の医師に頼んでもそう簡単には教えてくれなさそう。


「そうだったのね。法術の才能は魔術と比べたらとても稀だと聞くし、シャルちゃんの才能を見込んで教えてくれたのかもねぇ。」

「ほぉ、そんなに使えるのか?」


 ええ、チート級に。


 等と町医者に無理やり教えてもらった設定の立場で言える筈もなく、私は苦笑いで答えた。


「いえいえ簡単な傷を癒すくらいですよー。」

「それでも使えんよりは断然ええのぉ。儂らが怪我したら頼むぞ?」

「まぁ、じいさん、出会ったばかりの子に何押し付けがましい事言ってるの。」

「いえ、それくらいいいですよ。色々教えて頂きましたし、何かあったらギルドへ知らせて下さい。」

「まぁまぁ、ありがとうねシャルちゃん。」

「おお~、言ってみるもんじゃな。」

「もー、この人ったら。」


 いい夫婦のようだ。心がほんわか温かくなる。

 BLでこんな夫婦関係を築きたいなぁ。えへっ。




 ギルド用の列の方が進みが早く、順番が来たので私はターニャさんとヨックさんに別れを告げて、キュアンと共にクロロフィルンの町に入った。

 私のBL論では論外な厳ついムキムキの衛兵さんに付き添われ、そう歩く事なく辿り着いたのは四階建ての大きな建物だった。他の建物の高さが二階止まりなことを考えると、やはり凄い施設なんだろう。

 ほへー、これが冒険者ギルドってヤツかぁ。うわーうわーすっごいワクワクするぅ。


「でっかー。」

「前に言ったが初級冒険者用の設備が整ってるからな、酒場の他に宿や武器・防具屋なんかも入ってるんだ。なんにせよ初心者用ばかりだから、特殊なのが欲しければ町の方の店をオススメするぞ。」

「はーい。」


 そこでふと思う。・・・お金持ってたっけ?

 ギルドに向けて歩を進めるキュアンにバレないように、自分の服のあちこちを探ってみる。今着ている服は如何にも村人Aな感じの簡素な服だった。そしてやっぱりお金は無い。

 元々の世界で結構貯金してただけに、今の現状がもの凄く不安になってきた。初日からギルドに寄せられた依頼を行わないと既に衣食住が怪しい。

 うそうそうそ、やっばい!___私は一気に青ざめていた。


「・・・どうした?」


 私が着いてくる気配が無いのに気が付いたのか、キュアンが振り返って声を掛けてきた。

 私は素直に答えた。今更見栄を張ってもしょうがないし。


「・・・・・・お金無いです。」

「擦られたのか!?」

「いや、元々。」

「・・・はぁ、なんだ。行き成り青ざめてるから何事かと思ったじゃないか。」

「いやだって、今日から仕事しないと宿に泊まるどころか食事すら出来ないよぅ。」


 お金が無いっていうのはこんなにも人を心細くさせるのか・・・。懐も寒いし、心も寒くなったような錯覚に陥るよ。現に私はちょっと半泣きだった。


「ぷっ、さっきまで老夫婦と丁寧に喋って、俺の事を肘で小突いてた奴とは思えないな。」

「だって、だってさぁ~!?」

「まぁ落ち着け、安定して稼げるようになるまで俺が貸してやるよ。」


 な、なんとっ!?今までこれ程までにキュアンと出会っていてよかったと思うことは無かった。うぬぬ~、私のBL欲を凌駕するとは恐るべし、金銭不足による不安っ!


「うは~、恩に着ますぜ兄貴っ!」

「兄貴はヤメロ。」

「じゃあ、おにいちゃんっ!」

「・・・はぁ、もう好きにしてくれ。」

「うん、おにいちゃん!」


 キューちゃん呼びからは遠ざかったけど、感謝の意を込めてこれからはおにいちゃんと呼ぶことにしました。マジ有り難いですキュアン様。さっさと稼いで借金返済してキュアン呼びに戻しちゃるけどねっ!


 すったもんだでようやくギルドに入った私達。主な原因は私だけど、仕方ないじゃないよ。後で分かって慌てるよりも、恥はかき捨て世は情けってもんよ。・・・んっ?ちょっと違うかな?


 冒険者ギルドの外観は白で統一されたさっぱりした造りだったけど、中は何というか、そう、奥に机を置くスペースが広く取られたバーみたいだった。しかもまだ昼間なのにもかかわらず、すでに幾つかの机にはお酒を飲む厳つい集団が居る。

 入って直ぐに酒場施設があるとは・・・イザコザ起きないのかな?冒険者といえば荒くれ者って感じだし。そしてやっぱりお酒飲む人多いんだろーなぁ。程ほどしにないと魔物にやられるよりも先に、肝臓がやられてしまうのではなかろうか。


「新規登録者の方ですか?でしたらこちらにどうぞ。」


 受付の美人なおねいさんがこちらに声を掛けてきた。キュアンの方をチラリと見たけど特に鼻の下を伸ばしたりはしていない。

 何だ私。まるで彼氏の浮気心をチェックする女目線になってたよ、ああ嫌だ。元女のさがでしょうかね、コレ。


 普通の男なんだから美人に引かれるのは当たり前。その上でBLの方へなんとか押し進められたらいいなっていうスタンスでいかないと、ただの嫌な奴になっちゃうから注意しないといけない。

 美人さんに鼻の下伸ばしたくらいでイチイチ目くじら立ててたらキリが無い。現に私だって美形が現れたらウハウハしますとも!・・・なのでね。



「新規登録二名お願いします。」

「はい、賜りました。では、こちらの書類に必要事項の書き込みをお願い致します。何か不明な点がありましたら、遠慮なく申し出て下さい。」

「了解です。」


 眼鏡を掛けた美人な受付嬢は実に淡々と事務処理をこなしていた。キュアン程の美形が来たら、私だったらウハウハするけどなぁ。ひょとしてこの世界での美形の基準って、元の世界とは違うのかなぁ。

 おねいさんをじーっと見ていたら目が合ってしまった。


 おっと、訝しげに見過ぎたか!?


 誤魔化しを込めてにっこりと笑顔で会釈してみる。いかにも「どうもー」ってな感じで。するとおねいさんはビクッと身体を震わせて俯いてしまった。・・・酷くない?

 もしかして私の作った外見ってこの世界じゃ醜悪な分類に入るのかな?それは由々しき事態だ。円滑なBL覇道が歩めなくなってしまう。


「おいコラ、何やってんだ。さっさと書け。」

「あーうん。」


 何だかムッとしたようなキュアンに促されて、渡された書類に目を通した。


・・・読めない。


 象形文字のような単語らしきものが羅列している書類は、私にはさっぱり読めなかった。助けを求めるべく隣のキュアンに視線を向けたけど、彼は彼で真剣に書類に象形文字を書き込んでいる。邪魔できない雰囲気だ。


 さっきから再三迷惑掛けてるし、これ以上はなぁ。

 となると、残る頼れる存在は受付のおねいさんしかいない。「何か不明な点がありましたら、遠慮なく申し出て下さい。」って言ってたし、今がそれだ。さっきの遣り取りで若干傷ついたけどそんな事言ってらんない。いくら私が醜かろうと、事務仕事はこなしてくれそうな人だし。

 私は覚悟を決めておねいさんに声を掛けた。


「美人なおねいさん、すみません。ちょっとお願いしたい事が・・・」

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