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【24】キラキラしてるよ

夜中にひっそり更新!

「そ、それとキュアン。」

「何だ?」

「僕、何でキュアンの服着てるのかな?確か気絶する前はミーちゃんの服着てたような気がするんだけど。」


 今の私はキュアンが着ていた黒檀色の上着を身に着けている。身長、体型が違う所為かブカブカで彼シャツ状態だ。裾は太ももの中間辺りまで長さがあるので、股間は辛うじて晒してはいない。


 そういえば転生してから気絶しまくりだ。

 元々の世界じゃ一度もそんな事になった事無いってのに。貧血でとか、か弱い分類には属さなかったもので。というか、気絶の初回は砂糖女王様の所為だし、二回目はワッチョの薬の所為だし、三回目は・・・・・・キュアン、の所為だし。


「何となく嫌だったからな。剥ぎ取った。」

「はぎっ・・・!?」


 思わぬ返答に絶句してしまった。

 追剥かっ!・・・着せてくれてるけど。


「上着には変わりないんだから問題無いだろ?それよりカチュア・ランバートが下で待ってる。明らかに勘違いされたと思うが・・・。まぁ、これも問題無いだろ。取りあえず着替えるぞ。女王の依頼の件もあるし、手早く地竜探しの依頼を片付けないとな。」

「う、うん。あっ、でもミーちゃん待たないと!」

「これだけ待っても来ないんだ。迷ってんじゃないか?宿に入ってきてないか、まず下の受付カウンターの従業員に聞いた方が早い。」

「そっか、分かった。」


 私はキュアンの膝の上からぴょいっと降りて、自分が使用していたベッドの影に干している村人Aな服と下着を取って身に着けた。アイロンをかけてないからちょっとシワが寄ってるけど、ちゃんと伸ばして干したおかげか気になる程じゃない。


 しかし、これに『隠蔽』の付加効力ねぇ・・・。


 パッと見では何も分からない。

 私は『慧眼』を展開してみた。



********************

始まりの服


 転生者が纏う服。その見た目通りの防御力

しか無い。


付加:隠蔽

********************



 ・・・なんだそれ。

 普通、その見た目に反した防御力を付けといてくれるもんじゃないのか。


「シャル、俺の上着。」


 キュアンがこちらに手を伸ばしてきた。そういえば、私に上着を貸しっぱなしだったキュアンはずっと上半身裸のままだった。今はインナーに質の良さ気な黒いシャツを身に着けている。・・・なんで脱いでたんだろ?まぁいっか。上着を返さないとね。


「あ、そっか。どうもありが・・・ダメッ!!」

「シャ、シャル?」


 ダメったらダメだ!

 だってこれはさっきまで私がノーパンで着用してしまっていたのだ。


「洗って、洗って返すからっ!それまでは別の服着てて下さいっ!」

「別に気にしない。」

「僕が気にするっ!」

「宿の寝間着は下着なしで履いてたじゃないか。」

「アレは返却した時洗濯するでしょ!?これは違うから!」


 これをそのまま着ちゃうのは勘弁して下さい。かなり居た堪れない。


「あっ。」

「へっ?」

「隙ありっ!」

「あうっ。」


 私は古典的は方法に引っかかり、キュアンに上着を奪われてしまった。

 いや、元々は彼のですけども。


「だ、ダメだってば!ホントに!」

「はいはい。ほら、行くぞ。」

「うううぅぅぅ~~~。」


 私から上着を奪い返したキュアンは、テキパキと上着とあの若葉色のマントを身に纏い、早く宿の階下にあるラウンジに行くよう促してきた。私は納得いかないと唸りながらも歩を進める。


 廊下に出ようとした時だ。


「・・・聞かないんだな。」

「ほへ?」

「昨日の俺についてだ。」

「あー、うん。」

「何故だ?」

「僕からは聞かない。キュアンから話してくれるんなら聞く。あっ、どーしても聞きたくなっちゃったら、聞いちゃうかもだけど。」

「なんだソレ。」


 憮然とした表情のキュアンに、私は曖昧な笑みを作った。


 まぁ、予想出来る事としては、さっき『契約印』とか言ってたし、昨日背中に何かされたみたいだから、おそらくキュアンとはもう『契約』済みなんだと思う。ミーちゃんとの契約の証とやらみたいな文様が背中にもできてるのだろーか?今度鏡の前に立つ事があったら確かめてみよーっと。


 ・・・・・・昨日のキュアンは何だか追いつめられてるみたいだった。

 きっと自分が何かしてしまった所為なんだろう。


 『許さない』


 確かにキュアンは昨日、そう言っていた。

 ホントだったら怒ったキュアンにいつ置いて行かれてもおかしくない。でも今もキュアンは傍に居る。だったら現状維持だ。単なる後伸ばしだけど、まだ近くに居たい。もう少し近くに居たいから、それを選んだ。

 それに、キュアンの事だから自分から話してくれる可能性が高いと思う。

 待てるトコまで待つ。深く突っ込んで嫌な気持ちにはなって欲しくないから。

 嫌になっちゃって「ここでお別れだ」とか言われてしまったら、今後の楽しみ(BL的な)が無くなってしまうっ!せっかくこれからだって時に!それはイヤだっ!!




 キュアンは暫く黙った後、呟いた。


「・・・・・・・・・・・・アホシャル。」

「えぇっ!?何故にっ!?えっと、もしかして聞いた方が良かったり、する?」

「いや、お前はそれでいいよ。」

「それって、つまり、『アホ』でってコトでしょうか?」

「ああ、元々か。」

「ハハハ、ソウデスネ。」


 キュアンの酷い暴言も、今は取りあえず聞き流す方向にした。


 ちょっと嬉しそうに見えたから。




 ***




「ミーちゃん!?何でここに居るの!?」


 『太った猫』亭の一階にあるラウンジに到着すると、そこで優雅にお茶を飲んでいるミーちゃんに遭遇した。今はあの激プリチィなコウモリ姿ではなく、出会った時と同じ紫紺の髪と金の眼を持つ甘いマスクの美形紳士姿だ。ミスマッチ処か物凄く周囲に馴染み過ぎだよこの美形魔族。


「キュアン殿が宿の玄関から入ってこいと言ったのでな。その通りにした所、先に貴殿等の部屋への訪問者が居たので少し時間を置いた方が良いと判断したのである。直ぐに退室していたようであるが、話はもう良いのであるか?」


 なんとゆー気遣い。流石紳士・・・。


「そっか、気を遣わせてごめん。もう大丈夫だよ。あっ、でもこれからこのラウンジで依頼の話があるんだった。ミーちゃん、まだ魔力大丈夫?」

「うーむ・・・。シャル殿に掛けて貰った術のお陰か、この姿でも魔力の消耗は軽減されているようである。しかしながら、やはり、できれば早めに吸魔させていただきたい。その依頼はどれ程の期間が必要なのであるか?」

「えっ?うーんと、片道半日くらいだから・・・。」

「詳しい事は今から話合いで決める。だが、期間は1日あれば十分だろ。」


 ミーちゃんの問いに、キュアンが代わりに答えてくれた。しかし、片道半日だから往復で1日はかかる計算だ。なのに一日で大丈夫なんだろーか?


「あ、あら?二人共もう大丈夫なの?」


 三人で話していたら、カチュアさんがやってきた。私達を見る視線がが右往左往していて、何だか挙動不審だ。


「あらら?貴方は確か・・・。」


 そしてミーちゃんに気が付いたカチュアさんに対人族用変わり身なミーちゃん、つまり『変わり身ーちゃん』が直ぐに出現して挨拶をし始めた。


「お久しぶりです。グール討伐の時はお世話になりました。風魔術の使い手、カチュア・ランバート殿。」

「そうそう、魔族に操られていた人ね。もしかしてあれからシャル君達と行動してるの?」

「はい。貴方の依頼も御一緒させていただきます。よろしいでしょうか?」

「実力ある人は多い方がいいもの。願ったりよ。そういえば、貴方キュアン君と張り合えるくらい実力あるのに操られてたのよね?魔族にそんな高度な操作魔術があるのは驚きだわ。貴方って余程闇魔術への感受性が強いのかしら?職業は何なの?」


 変わり身ーちゃんの出現にカチュアさんはいつもの大人な色気を纏う美人魔術師おねいさんに戻った。そして何だか小難しい話が始まりそうな予感もした。


「ただの『剣士』です。申し訳ないのですが、魔術は齧る程度しか存じ上げません。」

「あらそうなの?って事はキュアン君と同じなのね。そうなると、剣術の流派も関係がある?魔力を使う流派もあるそうだけど、貴方は?」

「無名の流派ですので、そこまでは・・・。」

「じゃあ地方だけでも。」

「そうですね・・・東の方とだけ言っておきましょうか。」

「あら、秘密主義なの?それとも会話のテクニックなのかしら。」

「そういう訳ではありません。極東は未開の地が多く魔族が関わっている流派も多いのでその流れを汲んでいる無名流派なんですよ。」

「ああ、成程ね。だとしたら・・・」


 変わり身ーちゃんはカチュアさんの問いに穏やかに淡々と返事をしている。

 美男美女が並ぶとこんなにも絵になるのか。しかも話している内容も教養があるから出来る内容ばかりだ。「カチュアおねいさん、依頼の話は?」とツッコミ入れたいが・・・入れねーよ。シャルロードじゃ入れねー雰囲気だべよ。何だかキラキラしてるよ。


「その話はもういい。早く依頼の話を進めるぞ。」

「そ、そうよね!ごめんなさい。」


 キュアンの指摘にカチュアさんはようやく本題を思い出したようだ。

 キュアン様、ナイスファインプレー!彼もキラキラしてるので成せる事ですね!




 ___そして依頼の話し合いが始まった。


「明日の朝一はどうだ?」


 ・・・周囲の視線が痛い。


「え?今からじゃ駄目かしら?一刻も早くゴリオガ様に会いたいのよぅ。」


 ・・・目の前にはキラキラしている人達が群れて居る。その所為だ。


「『始まりの樹海』で野宿するのですか?」


 ・・・なんだこのキラキラ空間。


 宿屋『太った猫』亭の一階ラウンジの一角にあるテーブル席を陣取って『地竜ゴリオガに会いに行く』という依頼についての話し合いは進められている。ここに隣接されている宿の食堂は野菜料理メインなのでお客さんは女性やお年寄りがメインだ。そしてそのお客様であろう方達からの視線がこの一角に集中されています。

 ええ、分かります。キラキラし過ぎですよね。ついつい見ちゃうよね。


「直ぐにゴリオガ様に会えるとは限らないでしょお?少しでも早く行かなきゃ。」

「だったら猶更準備は整えておく事にこしたことは無い。」

「私も明日の朝出発の方が良いと思います。」

「もおぉ~!シャル君この二人酷くない!?・・・って、シャル君?」

「シャル?」

「シャル殿?」


 ひょわわわわっ!?キラキラが一斉にこっち向いたっ!眩しいっ!!


「えっ、あっ、うっ・・・。じゃ、じゃあカチュアおねいさんに一票で・・・。」


 咄嗟に、選挙かっ!と突っ込まれそうな返答をしてしまった。内容自体もよく把握できていない。


「ほーらぁ、依頼相手のシャル君がこう言ってる事だし、今日出発ね!決まりよ!」


 何故か私の一言で決まってしまったらしい。準備をして昼前にギルドに集合という事で一先ず解散となった。上機嫌で去りゆくカチュアおねい様。その後ろ姿を見送る私の後ろからも視線が突き刺さる。


「・・・・・・アホシャル。」

「・・・はい。」

「・・・・・・アホシャル殿。」

「・・・ハイ。」


 遂にミーちゃんにまで『アホ』呼ばわりされるシャルロードであった。

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