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【23】異常なアホアホ

主人公が止まらない。

アホだけ成長している・・・。いや、退化している?


更新遅くなって申し訳ありません。待ってくれていた人がいればいいんですけど(汗)

でわでわ読了お願いします。

 チュン、チュン


 鳥の鳴き声がする。


 朝かぁ~。うーん、昨日飲み会だっけ?

 記憶が無いし、変な夢を見てたような・・・


 私はボンヤリと瞼を開いた。

 朝の陽ざしは殆どカーテンに遮られているようで、部屋の中は薄暗い。だが、それでも自分が住んでいる筈の1Kの部屋とは家具の配置が違うのは分かった。


___ここドっ、うぐぇっ!?


 私は飛び起きようとして、できなかった。飛び起きようとしたら、胸や腰元に巻きついている『何か』の所為でその部分が圧迫され、呼吸が詰まったからだ。


「急に起き上がろうとするな。驚くだろうが。」


 耳元で声を掛けられ、全身が一本の糸でつられたように硬直してしまった。


「シャル?」


 そういえば、そんな名前だったな自分、と、不自由な姿勢で首だけ後ろに向けると、そこには美形元騎士様が。とっても心臓に悪い。眼福だがなっ!


「うっ、えーと・・・おはよー、キュアン。」


 私は間抜けなあいさつをした。


「ああ、おはよう。」


 しかし、相手は口元を緩めて返事をしてくれる。

 うむうむ、今日もステキですね。涎が出そうになっちまいます。

 ・・・ハッ!!まてまて自分。昨日の事をよーく思い出してみようね。いやいや、まずは現状をどうすべきかではないのかねっ!?



 脳内で現状報告を伴った会議サミット開催中。


___現在、キュアンの腕に腰と胸元を包囲されております。密着中です。

 おおうっ!そりゃコマッタ!認識した途端心拍数が跳ねあがったぞ!

___所在はベッドの上と見うけられます。

 なんとぉっ!何故にこの場所なんですかぁ!?

___キュアンとは後ろを向けば顔が間近、前を向けば耳元に吐息が掛かる距離です。

 死ぬっ!心臓が持たんぞおぉぉ~~~!!


 間5秒程度。会議サミットと銘打ってみたものの、何一つ決まらない処か議論さえ交わしていないダメ会議だった。


「シャル殿、目を覚まされたのであるか?」


 脳内でグルグルしていると、聴き慣れた低音美声が聞こえてきた。


「ミーちゃん?」

「うむ。」


 声はするけど、姿が見当たらない。

 動けないベッドの上から、部屋の中をキョロキョロと見まわしてみる。どうやらここはムーア国クロロフィルンの町にある宿屋『太った猫』亭の一室みたいだ。たった一日だけだけど、宿泊した事のある部屋と同じだったから直ぐに分かった。ベッドと木造の机、椅子が二脚といった清潔感はあるけど簡素な部屋だ。その何処にもミーちゃんの姿は見られなかった。


「窓の外なのである。キュアン殿が入れてくれなかったのでな。」

「えぇっ!?」

「だまれ。」

「本当の事であろう。」


 どうやらミーちゃんはキュアンに締め出されていたらしい。この寒空の下で野宿とか酷いよぅ。


「キュアン。」

「何だ?」

「ちょっとばかし、離してくれると助かるんですけれども・・・。」

「別に困らないだろ。」


 いやいや、既に心臓がドキドキし過ぎて困っていますがっ!?


「トイレとか、やっぱミーちゃん入れてあげたいし・・・。」


 キュアンが目に見えて微妙に不機嫌だったので、私はお伺いを立てるように尻すぼみになりながらも訴えてみた。


「駄目だ。」

「うぅ~・・・、流石にこの年でお漏らしはしたくないんですが・・・。」

「・・・トイレの方じゃない。ミーチュンの方だ。」

「ケンカしたの?」

「違う。ヤツに魔力を供給する件だ。下手をするとお前の寿命がかなり縮むかもしれんのだぞ?」


 キュアン。キュアンは本当に優しい。

 自分が悪者にならなくたっていいのに。


「そうはならないよ。」

「何故言い切れる?」

「ミーちゃんはそんな事しないし、それに、キュアンと一緒だし。もう勝手に行動しないって約束したし。」

「・・・・・・。」

「だからミーちゃん入れてあげてもいいでしょ?」


 キュアン自身が見張ってるんだから大丈夫!という意味で言ってみる。

 彼に丸投げな酷い発言だとは自分でも思うが、今彼らに決別されると非常に困る。特に自分が原因とか嫌だ。自己中心的で申し訳ないが。いや、ホントごめん。


 暫くジーっとお願い視線(自分的に)を送っていたら、フッと軽く溜息をついたキュアンが口を開いた。


「ミーチュン。」

「・・・なんであるか?」

「宿の玄関から入って来い。そしたら入れてやる。」

「仕方無い。そうするのである。」


 パタパタと羽音が聞こえて徐々に遠のいていった。


「キュアン、ありがと。」

「・・・絶対約束は守れ。」

「ら、ラジャー。」


 回されたキュアンの腕にぎっちりと力が入る。それには彼の本気の念も込められているような気がして、私はどもりながらも即答した。




 ***




___コンコンッ



 キュアンが動かないので、私も動けず。暫くボンヤリしていたらノックの音が聞こえた。ミーちゃんだっ!!


「シャル君、キュアン君、カチュアよ。朝早くに悪いんだけど、今、いいかしら。」

「えっ!?カチュアさん?」


 扉の向こうから聞こえてきたのは低音美声ではなく、グール討伐で一緒に後方支援部隊に居た風魔術師のカチュアおねいさんの声だった。

 私には願ってもない現状を方向転換させる為のイベントだったので、直ぐに承諾の返事をした。


「どーぞどーぞ!」

「っ!?ちょっと待てっ・・・」


 流石のキュアンも慌てた様子で私を解放したので、遠慮なくベッドを抜け出す。


「こらっ、シャルっ・・・」


___カチャッ


「ごめんなさいね。どうしても地竜に・・・・・・・・・・・・。」


 扉を開けて入ってきたカチュアさんは、こちらを見て無言で固まってしまった。彼女のサラリと長い髪と同じ色のオリーブ色の瞳は見開かれている。


「カチュアおねいさん?」

「・・・あっ、えっと、ごめんなさいね。お邪魔よね。話すのは下のラウンジでいいから、その、着替えたら話だけでも聞いて頂戴。それじゃ下で待ってるから。」

「へっ?」


 そう言って、マヌケな声を出す私を放置したままカチュアおねいさんは扉をまた閉めてしまった。直後にパタパタトントンと廊下を小走りで駆けて階段を降りて行く音が聞こえた。そうして、あっと言う間にカチュアおねいさん来訪イベントは終了し、鎮まり返った部屋にキュアンと取り残された。


「・・・何で?」

「アホシャル。自分の恰好を見ろ。」


 キュアンの言葉に、私は視線を自分へ向けた。


「んなぁっ!?」


 現在の私の恰好は、上半身に何故かキュアンの黒檀色の上着を纏っているだけだった。キュアンを見ると、彼は上半身素っ裸だ。

 こ、これは噂に聞く朝チュンとか言うヤツですかっ!?だ、だがしかし・・・。

 自分のおケツを触ってみるが違和感は無い。だが、同時にある事実が発覚する。


 ノーパンのままだ・・・。


「なぁ、シャル。お前、何で下着履いてないんだ?」

「え”っ!?」


 今しがた自分で自分のおケツを触っている所をバッチリ見られていたようだ。何だか不穏な空気を纏ったキュアンが私に尋ねてきた内容に焦った。

 えーとえーとえーと、言い訳が思い付かない。仕方ないので正直に話す。




「はぁ・・・、つまり、同様に服も洗濯してたから着てなかったのか・・・。」


 ご理解の早い美形元騎士様、恐縮です。


「まさかとは思うが、お前が元から着ていた服の効力を知らないのか?敢えて身に着けてるんだとばかり思っていたんだが。」

「服に何かあるの?」

「アホシャルでバカシャル。」

「・・・はい、ごもっともです。ですので教えてくださいキュアン様。」

「仕方ないな・・・。」


 キュアンに手招きされたので、傍まで行く。ベッドの近くに立った私に対して、今度は膝をポンポンと軽く叩いて、視線で示された。

・・・ここに座れって意味じゃないよね?だって、そこは膝だよ?流石にそれは無いよねぇ~?


「何してんだ、早く座れ。」

「あ、ハイ。」


 私はキュアンの隣に座った。


「・・・何でそっちなんだ。」

「へっ?だ、だって他に座る所・・・、あっ、もしかして床!?」

「はぁ・・・。」

「ひえぇっ!?」


 本日何度目かの溜息が聞こえたかと思ったら、グイっと引っ張られて座らされたのはキュアンの膝の上だった。私はおマヌケな声を出して、もう一度糸に引っ張られたように硬直した。


「こっちの方が、落ち着く。『契約印』が近いし、お前は直ぐにどこかに行くからな。で、シャルの服の効力の話だが、・・・聞いてるのか?」

「ひゃいっ!聞いてる!聞いてますっ!」


 だって、だってさぁ!?私、ノーパン。キュアンは上半身裸なんだぜぃ?落ち着けるものかぃ!そしてキュアンが喋ると息が首にかかるんだけんどもおおぉぉぉ~~~!!


「シャルの服には『隠蔽』の付加効力があるみたいだな。一定以上の実力者には効果が無いようだが、普段生活する分には問題ないくらいだ。寧ろ着ていない方が問題だ。」

「は、はぁ。・・・って事は?」

「・・・シャルの存在が周囲にとって稀薄になる。」

「なるほどー。・・・って何の意味が?」

「・・・・・・・・・。」


 キュアンが黙りこくってしまった。後ろを振り向かなくても分かる。あきれ返った表情をしている事でしょう。でもしょうがない。私の存在を『隠蔽』する意味が分からない。ある意味危険物かもしれないけど・・・。はっ!!転生させてくれた神様はそこまで見越してこの服にこんな付加効力をっ!?なんだよぉ~、ちょっとBL楽しむぐらい、いいじゃんかさぁ~~?


「初めから自己の容姿に頓着無いと思っていたが、これ程とは・・・。いいか?お前の容姿はハッキリ言って『異常』だ。」

「あうっ・・・、イジョー・・・・。」


 『ガーン』と、かの有名な擬音が脳内を響き渡った。


「はっ!?ま、まさかグール討伐の時の『女神』コールも・・・。」

「大体はそうだろーな。まぁ、カチュア・ランバート作のローブに『疑似女神』の付加効力があったせいもあるだろーが。」


 ・・・やはり呪いのローブだったのか。


「自分がそんなに『異常』に醜いとは知らなかった・・・。」


 私に好意を寄せてくれたミルルちゃんやララさんはブ専だったのか・・・。あ、後、女神様って醜かったんだなぁ。信仰されてるなら普通逆だと思うんだけど。


「・・・はあぁぁ~~~~~。」

「キュアン?」


 もの凄い長い溜息だね。えっと、溜息これで何度目だっけ?


「ぎゃ・く・だ。アホアホシャルっ!!」


 あ、アホがひとつ増えてしまった!ランクアップ!?いや、ランクダウンかっ!?

 ・・・って事は、シャルロードは醜い訳じゃない?あっ、そーだ。魔法剣士のダリアさんに『美形兄弟』って言われたっけ。ネガティブ思考のうっかり罠だ。


「はぁ・・・。このアホアホっ振りも『異常』だな。」


 そしてキュアンはまた溜息をおつきになられた。

さて、キュアンは何回溜息をついたでしょう(笑)


次回からちゃんと週末更新に戻りたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。(´ω`)ノ

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